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IR投資規模はスカイツリー46本分「3兆円」 国を動かす巨額資金

2018/08/07

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法が7月20日に成立した。2020年代半ばにも国内で最大3カ所のIRが開業し、民間によるギャンブル運営を認める規制緩和がスタートする。IRをうまく使えば、経済的部分では効果は絶大。だが、それには民間事業者から巨額の出資を引き出す必要がある。国や自治体の金を使わず、国家プロジェクト級のインフラ整備を民間の力だけでやり遂げさせようとしているためだ。IRはこれまでと次元の異なる事業であり、それゆえの難しがある。

最低でも6600億円

米ニュージャージー州のカジノでゲームを楽しむ客。世界中で新たなIR施設がオープンしている(AP)

 世界のIRをみると、建設には驚くほどの多額の資金が投じられている。

 例えば、2010年に開業したシンガポールのIR「マリーナベイサンズ」には、約60億ドル(6680億円)がかけられた。

 カジノに加え、国際会議場や大規模展示場、ショッピングモールなどを備え、日本のIR誘致関係者がお手本と位置付ける施設だ。

 今年6月には、米朝首脳会談のためシンガポール入りした北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が訪問し、世界の注目を集めた場でもある。

 日本のIRに対して、IR事業者はシンガポールをしのぐ投資に意欲的だ。

 「最低でもシンガポールの60億ドル。(日本では)100億ドルに達するかもしれない」

 米経済系ニュース専門局CNBC(電子版)は昨年2月、米IR運営大手ラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長が、1兆円の投資を視野に入れていると伝えた。アンデルソン氏は「究極的なビジネス機会。これに比べれば、シンガポールはウォームアップだ」とも述べ、日本市場に大きな期待を寄せた。

日本第1弾はフラッグシップに

 IR実施法では、国内で最大3カ所のカジノを含む施設が認められる。仮に「1兆円」規模の資金が、3カ所のIRに投じられれば、合計で3兆円。この額がいかにすごいか。

 総事業費650億円の東京スカイツリー(東京都墨田区)なら46本、1300億円を投じた日本一高いビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)が23棟も建てられる計算だ。日本の一般会計の公共事業費予算の半分に相当。トランプ米大統領が移民流入対策として打ち出したメキシコ国境沿いの壁(全長3100キロメートル)の建設コストとして取り沙汰された額(120億~150億ドル)の約2倍にあたる。

 20年代半ばに開業する見込みの第1弾のIRは、日本を代表する象徴的な施設になる。最先端のアミューズメントやセキュリティー技術が盛り込まれ、これまでのIRより建設費が膨張する可能性は十分にある。現在、有力なIR候補地とみられる大阪・夢(ゆめ)洲(しま)は、南海トラフ巨大地震の津波被害が及ぶ恐れのあるエリアにもあたり、防災対策も不可欠だ。

「民設・民営」が原則、国はカネ出さず

 IRに関して国は法を作り、カジノの規制緩和をして、監督は行うが、カネは出さない。政府の一貫した方針は「民設・民営」の原則だ。IR法の目的は、地域経済の振興の寄与と財政の改善を主眼に置く。

 IR事業者は、カジノの粗収入(賭金総額から顧客への払戻金を差し引いた額)の30%を納付金として国に払う義務があり、このうち、IRが立地する都道府県などに15%が入る。

 ゴールドマン・サックス証券は、東京、大阪、北海道の各都市圏でIRができた場合、カジノによる粗収入は年間1兆7500億円になると推計する。

 これに基づき単純に計算すると、毎年5250億円の納付金が生まれる。ギャンブル依存への懸念などから反対意見の強いカジノだが、IRの経済的な面の効果は大きいとみられている。

駆け引きはこれから

 IR法成立により、今後、誘致を目指す自治体同士だけでなく、事業者との駆け引きも水面下で動き出す。

 ただ、IR事業者にとって、気がかりなのは、行政から求められる実質的な負担の重さだ。運営リスクが高いと判断すれば、投資意欲が減退する。

 IR開業後は、カジノの納付金のほかに、行政から監督を受けるコストも転嫁され、法人税などの課税負担も一般事業会社と同様にかかる。全体の具体的な負担は、計画を策定していく過程で明らかになっていく。

 大阪府・市では、地下鉄の延伸などにかかるインフラ費用の一部を事業者に負担させたい意向だが、交渉は難航する可能性がある。一方、11月には政府が大阪への誘致を申請した万国博覧会の開催地が決まるが、大阪で開催が決定しなければ、万博とIRによる相乗効果もなくなり、大阪のアピールポイントが弱まってしまう。

 またライバル同士の動向も見逃せない。IR誘致は、現在、大阪、和歌山、北海道、長崎の4道府県が誘致に積極的とされるものの、巻き返してくる自治体が出てこないとはかぎらない。横浜市が関心を示し、東京都、千葉市も誘致による影響を調査している。

 ゴールドマン・サックス証券の試算は、東京圏でのカジノを運営の粗収入は、年間7876億円と、大阪よりも337億円多くなると見積もっている。

 ライバルが増えた場合、優れたIRを造りたいとの強い意欲を自治体が示すだけでは、事業者の協力は得られない。ほかの自治体よりも大きい経済的なメリットなどを示せなければ、巨額な出資を引き出すのは難しい。

 IRビジネスがやりやすく、もうけられる環境を値踏みする事業者と、多くの投資をより良い条件で引き出したい自治体。優位に立てる強いカードは誰が手にするのか。神経戦が始まる。

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