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観光地のトイレ4割「和式」 国が「洋式」化に力を入れる〝隠れた理由〟とは…

2018/08/02
国の補助金を活用し、洋式化された岐阜県飛騨市の飛騨古川駅前観光案内所のトイレ(飛騨市提供)

 訪日外国人旅行者が増加する中、観光立国を目指す政府は、観光地を中心に外国人に不評な和式トイレを洋式化する取り組みを強化している。日本独特の形状である和式トイレは外国人にとっては使い方が分からず、不潔な印象を与える要因にもなっているからだ。観光地では4割がまだ和式という実情もあり、2020東京五輪・パラリンピックを控え対策は急務となっている。ただ、政府が洋式化にこだわる理由は外国人旅行者対策だけではない。意外な思惑もあるようで…

 訪日外国人にとって、和式トイレは“未知の存在”だ。衛生陶器・住宅設備機器メーカー大手のTOTOが平成26年に在日外国人を対象に実施したアンケートでも、来日当初に日本のトイレで困ったことの第1位が「和式トイレの使い方が分からない」という回答だった。

 具体的には「(使う)向きが分からない」(イラン人女性)、「便器に座ってしまうかも」(米国人男性)といった内容で、「日本はいろんなものがキレイなのに、和式トイレを見ると不潔な印象を受ける」(米国人女性)という意見もあった。

 TOTOによると、日本人も「洋式派」が増えているといい、便器の出荷数も昭和52年に洋式が和式を上回り、平成27年の和式の出荷量は全体の1%未満にまで減少しているという。使い勝手だけでなく衛生面でも、洋式の方が清掃時に床に菌が広がりにくいという利点があるという。

洋式化される前の岐阜県飛騨市の飛騨古川駅前観光案内所の和式トイレ(飛騨市提供)

 一方で、観光庁が28年度に観光地の公衆トイレを調査したところ、2万4524基ある大便器のうち42%にあたる1万181基がまだ和式のままだった。

 政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020(平成32)年に、訪日外国人旅行者を4000万人に引き上げる目標を掲げている。和式トイレは旅行者のストレスにもつながっており、対応が急務と判断した政府は、平成28年度からホテルや旅館などの宿泊施設のトイレを洋式化する際に、かかった費用の3分の1を国費で助成する補助事業を開始。29年度からは観光地の公衆トイレ、30年度からは駅や電車、バスターミナルなど交通施設へと範囲を拡大してきた。

 トイレの洋式化だけを抜き出した予算額は「公表していない」(観光庁)が、洋式化を含め、多言語表記や無料Wi-Fiの整備など、外国人旅行者受け入れ環境整備事業としては、30年度も96億円が計上されている。

 ただ、ある政府関係者は「この事業の真の狙いは経済対策だ」と話す。

 国が経済対策のために大きな公共事業をしても、大手ゼネコンなどが利益を吸い上げてしまうため、地方の中小企業などにはその恩恵が届きにくい。

 しかし、トイレの洋式化であれば、地元の工務店やリフォーム業者が請け負うことになる。国費を地域を支える中小企業にむけて直接“流す”ことに繋がり、経済対策が及ぶ範囲が自然に広がるというわけだ。

 東京都内でリフォーム業を営む男性(41)も「トイレの改修は他の工事に比べても利益率が高く、国が助成してくれるのはありがたい」と歓迎。助成金があることで営業もかけやすくなるといい、「トイレの工事をきっかけに、それ以外の新たな仕事の受注にもつなげたい」と語った。

 とはいえ、便座に触れたくない人を中心に和式トイレに一定の需要があるのも事実。トイレの洋式化は、訪日外国人旅行者の満足度向上と経済対策という「一石二鳥」の効果をあげられるか-。(経済本部 蕎麦谷里志)

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