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「牛」「豚」よりも「鶏肉」が国内外でブーム! ヘルシー、安さ、ノン宗教色の三拍子そろい増産中

2018/07/19

 大手商社や化学メーカーが世界的な鶏肉需要拡大に熱視線を送る。三井物産は6月にモロッコの鶏肉加工の一貫生産事業に出資参画し、アフリカ市場開拓に乗り出した。三菱商事は来年初めにタイで鶏肉加工工場を稼働し、加工品を日本向けに加えアジアなどにも輸出する。鶏肉増産に欠かせない飼料添加物も、メーカー各社が増産中だ。鶏肉は豚や牛に比べ、生産日数が少なく、安さが強み。日本の鶏肉消費は健康志向で豚肉を抜き、堂々の1位。宗教色がないことも世界需要を後押しする。

三井物産が出資したモロッコの鶏肉加工一貫生産の会社が生産するハム、ソーセージ。モロッコはアフリカ4位の鶏肉消費国で需要が拡大している(三井物産提供)

 最近の日本の鶏肉ブームの火付け役は、「一手間かけた味付けチキンの『サラダチキン』で、手軽さと健康志向とあいまって、人気急上昇」と関係者は分析する。低カロリーなのに高タンパクに目を付けたコンビエンスストアが商品開発競争を繰り広げ、スポーツ選手や糖尿病患者まで幅広いファン層をつかんだ。フライドチキンや定番の焼き鳥など業務用も牽引(けんいん)し、いまや年間1人当たりの国内の鶏肉消費は約13キロ(2016年)。12年に不動の1位だった豚肉を抜き、日本人が最も食べている食肉として定着してきた。

 アフリカでは経済成長を背景に、鶏肉需要が拡大する。モロッコの伝統料理のタジン鍋でもチキン(鶏肉)は人気メニューだ。コートジボワールでは、今年6月、最大都市アビジャンでケンタッキーフライドチキン(KFC)の1号店がお目見えし、若者を中心に人気店だ。

 このアフリカ市場に布石を打とうと、三井物産は6月にモロッコの飼料輸入から養鶏、加工までの一貫事業を手がけるザラールホールディングへの出資を決めた。同社は飼料原料からハムなどの加工品まで一貫生産できるモロッコで唯一の企業。モロッコの鶏肉需要は年間約66.5万トンとアフリカでは南アフリカ、エジプトなどに次ぐ4位。自国の胃袋に加え、アフリカの「玄関口」としてモロッコに着目した。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、北アフリカの鶏肉生産量は、50年には14年比2倍強の約490万トンに増える見通し。

 三井物産は国内でも、グループ会社に鶏肉加工のプライフーズ(青森県八戸市)を持ち、飼料輸入から加工までを手がける。国内で培った安全・安心や一貫生産、加工技術のノウハウを伝授し、同社の成長を後押しする。経済成長の著しいセネガルでも事業を開始。セネガルはイスラム人口が多いだけに、宗教とかかわりのない鶏肉は急成長している。アフリカでは輸入の冷凍鶏肉などに関税をかけ、国内養鶏農家を保護する国も少なくない。モロッコやセネガル、コートジボワールも同様で、「同じフランス語圏の西アフリカを中心に事業モデルを横展開したい」(欧州三井物産)という。

 アジアでも、三菱商事はタイで鶏肉の加工生産工場を来年1月にも立ち上げる。三菱商事と伊藤ハム米久ホールディングス、タイ食品大手のベタグロ・グループの3社の合弁会社を通じて約60億円を投資し、新工場を建設中。付加価値の高い空揚げやスチームチキン(蒸し鶏)を生産することで日本と同じような一貫生産体制が整う。

 新工場の完成を機に、日本向けに加え、需要が拡大する他の周辺アジア市場なども開拓する。FAOの試算では、東南アジアの鶏肉消費も50年に14年比78.6%増の1590万トンに増える見通しだ。

 50年にはアフリカやアジアを中心に、世界人口は今の75億5000万人が100億人に増え、タンパク質は30年頃には需給が逼迫(ひっぱく)するとみられている。

 各社が鶏肉に注目するわけは、生産までの日数が少なく、飼料効率も良く、安く提供できるからだ。食肉1キロ生産するのに必要なエサの量は一般的に牛で8キロ、豚4キロに対し、鶏は2キロといわれる。飼料用作物の栽培に必要な水も節約できるというわけだ。

 鶏肉増産も商機で、商社や農業資材メーカー、化学メーカーも巻き込み、しのぎを削る。中でも必須アミノ酸のメチオニンは、鶏の成長に欠かせない飼料添加物だけに年率約6%増で成長する。

 三井物産は米子会社のノーバスを通じて増産を計画中で、住友化学も国内でメチオニンを増強中だ。中国企業傘下の仏アディセオも今年1月に中国・南京(江蘇省)の第2工場計画を発表した。

 かつては、経済成長に応じて、消費者の嗜好(しこう)は、鶏から豚へ、豚から牛へと変化すると考えられていたが、健康志向を追い風に鶏肉の商機をめぐる競争が激化しそうだ。(経済本部 上原すみ子)

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