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きょう民泊新法施行 全国で解禁も届け出低調「制限多くビジネス成立しない」「申請手続きが煩雑」…

2018/06/15
スーツケースを引いて歩く外国人旅行者=14日午後、大阪市中央区(志儀駒貴撮影)

 一般住宅に有料で旅行者らを泊める「民泊」を全国で解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が15日に施行された。急増する外国人旅行客(インバウンド)や、2020年東京五輪・パラリンピックの観客の宿泊先確保などが期待されるが、観光庁によると全国で届け出件数は2707件(6月8日時点)、うち受理したのは1134件と低調。厳しい営業日数の制限に加え、住民トラブルを懸念する自治体が条例による独自規制を強めていることが原因とされる。

 新法ではホテルや旅館を原則営業できない住居専用地域でも、家主が自治体に届け出れば、年180日を上限に民泊の営業が可能となる。届け出先は都道府県のほか、保健所を設置する政令指定都市や特別区などの自治体。

 観光庁によると、新法に基づく民泊の届け出は今年3月15日に開始されたが、全国的に出足は鈍いという。

 「営業日数、設置場所が限られ、ビジネスが成立しない」「申請手続きが煩雑」などの声があり、届け出ない事業者も多い。

 産経新聞が14日までに近畿の主な自治体に取材したところ、届け出件数が最多だったのは大阪市の122件で受理は34件、次いで大阪府の45件(受理38件)、京都市の31件(同6件)。一方、神戸市では届け出が7件、受理はゼロだった。いずれも受理件数が少ないのは提出書類に不備が多いためとみられる。

 民泊に詳しい京都外国語大学の広岡裕一教授(観光学)は「生活環境の維持を優先すべきだが、地域振興の中で民泊をどう活用するのかという視点を持つことも大切。今後、地域実情、現状にあわせ規制内容を変えることも検討すべきだ」としている。

相次ぐ自治体規制 ヤミ民泊めぐっては変化も

 民泊新法は、民泊のルールを定め、「健全な民泊」の普及を狙う。2020年東京五輪・パラリンピックなどで日本を訪れる外国人旅行者への対応が期待されるが、現状では、騒音など生活環境に対する住民の不安や懸念を解消できるまでには至っていない。また、違法な「ヤミ民泊」を防ぐため自治体への届け出を義務づけたものの、厳しい規制に反発し、届け出る事業者は少ない。ヤミ民泊の解消のめどは立っておらず、課題は山積している。

 「うちらの静かで平穏な生活を壊さないで」

 大阪市福島区で今春、国家戦略特区制度を利用して民泊を開設しようとした男性が住民らを対象に開いた説明会で、住民約60人は一斉に民泊反対を訴えた。すでに同制度を利用し、市内で民泊を営業する男性は「民泊はあやしい存在としかみられていない。安全な民泊もあるのに」と嘆く。

 住民らの懸念は数字にも表れる。マンション管理業協会(東京)によると、2月時点で分譲マンションの管理組合全体のうち、8割以上が民泊禁止の規約をまとめた。

 一方、外国人旅行者が増える大阪市では「生活環境の悪化を防ぐための規制は最低限にした」と担当者。ただ届け出件数はあまり伸びず、「新法の営業日数(180日)では商売にならないとして、住居専用地域ではできないが、日数に制限のない旅館業法や特区民泊など既存の方法で申請する人が増えている」と分析する。

 ヤミ民泊への懸念は依然、大きい。新法施行をきっかけに、米民泊仲介大手のエアビーアンドビーはサイトから違法民泊物件の削除を表明。しかし、個人間での宿泊予約など「水面下」での動きは外部からは分からない。また中国など他の海外仲介サイトには日本のヤミ民泊の情報が多く掲載されている。例えば、大阪市内には約1万以上のヤミ民泊があるといい、その監視、取り締まりは困難を極める。

 ある自治体関係者は「自治体の条例が厳しくなることで、逆に闇にさらにもぐる民泊が多くなるのでは」と懸念する。

 こうした事態に対し、大阪市では、大阪府警OBと職員による「違法民泊撲滅チーム」を設置。最終的に70人態勢になる予定で、来年開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)までの撲滅を目標に、監視や指導を強化する。吉村洋文・大阪市長は「指導に従わない場合は警察への告発なども行い、徹底的に排除する」と話す。観光庁の担当者は「普及させたいのはあくまで健全な民泊。住民と、利用する旅行者双方が安心できる民泊のためには自治体による実態把握が必要不可欠だ」としている。

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 住宅宿泊事業法  「民泊」のルールを定めた法律。適正な運営管理のため必要な場合は自治体の職員が民泊施設に立ち入る権限を付与した。家主には民泊と分かる標識の掲示や宿泊者名簿の作成などを義務づけ。違反した家主には業務停止命令などを出し、従わない場合は6月以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。合法民泊は現状では、旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可か、国家戦略特区制度を活用した認可を得る必要があった。

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