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京都がホテルの出店ラッシュ期に突入…「1万室不足」から一転、過剰供給懸念の声も

2018/06/12

 国内外から年間5500万人もの観光客が訪れる京都市で宿泊施設の出店ラッシュが止まらない。格安航空会社(LCC)の便数拡大などを要因にインバウンド(訪日外国人客)が増え続けるとの予測から、東京五輪が行われる2020年前後を中心にホテルの出店が相次ぎ計画されている。「客室は1万室足りない」と、市長がかつて宿泊施設不足を訴えた京都。大阪などに流出した宿泊需要の回帰を期待する一方、顧客争奪戦の時代を迎えるとの指摘もある。(西川博明)

塗り変わる洛中地図

京都駅周辺では、ホテルの新設が相次ぐ=京都市南区

 京都の玄関口・JR京都駅(京都市下京区)。周辺では、東京五輪がある2020年に合わせ、大手資本によるホテルの開発ラッシュが進む。

 京都駅南側(八条口)では、パチンコ店跡地にJR西日本グループが運営する新ブランドのホテル2棟(計900室)が19年春に開業予定。その東側の八条通沿いでは、大和ハウスグループがホテル3棟の建設を進める。うち1棟は旅行大手エイチ・アイ・エスが運営し、ロボットが接客することで話題を集めている「変なホテル」となる。

 同じ駅南側ではJAグループ京都のビル建て替えもあり、ロイヤルホテルが新ホテル(267室)を20年8月をめどにオープンさせる。

 一方、駅北東部では、京阪ホールディングスが建て替え工事を進める旗艦ホテル「ザ・サウザント・キョウト」(222室)が19年1月に開業する。その隣では、三井不動産が「三井ガーデンホテル京都駅前」(仮称、136室)を19年夏をめどに開業する計画を発表した。このほか、アパホテルも近くでホテルを新設する。同駅周辺は各社の陣取り合戦により京都の「ホテル銀座」へ変貌する。

 既存ホテルも大型改装で対抗する。「リーガロイヤルホテル京都」はすでに改装を終え、京都駅ビル内にあるJR西グループの「ホテルグランヴィア」も、開業20年を節目に初の大型改装を進める。

 京都駅周辺だけでなく、オフィスが多い烏丸通、商業施設が集積する河原町通、そして観光客でにぎわう二条城周辺と、平安京があった京都市中心部の洛中エリア各地で宿泊施設の新設が進む。既存ビルや京町家を宿泊施設へ改装する事例も目立っている。

供給過剰ではない!?

 宿泊施設の新設が相次ぐ要因として、一番大きいのがインバウンドの増加だ。京都市内は歴史的に宿泊施設が少なく、「京都を日帰りで観光し、大阪で宿泊する」(京都財界関係者)といわれた苦い過去がある。このため門川大作市長は「客室数が1万室足りない」と宿泊施設の誘致を呼びかけてきた。その結果、京都商工会議所の調べではすでに1万2千室を超える新設計画が表面化しているという。

 さらに、古都特有の事情もある。市中心部は建築物の高さ規制や京町家を保全するための条例があり、不動産を有効活用するには「利回りや投資回収を考えれば、宿泊施設に行き着くのが当然」(京都市内の不動産経営者)になる。新築マンションといった住宅では富裕層しか購入できない価格設定になる可能性があるのだ。

 ただ、世界経済の減速や紛争・テロなどのリスクが顕在化した場合、京都でのホテル建設ラッシュは頓挫する恐れもある。一部では「供給過剰ではないか」という議論も生まれている。

 こうした意見に対し、京都商工会議所の立石義雄会頭(オムロン名誉会長)は「供給過剰にはならない」と一蹴する。京商と京都府、京都市は2040年ごろに「国際交流都市」を目指しており、立石氏は21世紀を「大航海時代が実現していく」と予言。大阪や滋賀などに流出している京都市内の宿泊需要が回帰するとみるからだ。

独自性で…差別化も

 ただ、宿泊事業者にとっては、新設ラッシュで顧客争奪戦が激化するのは間違いない。6月15日からの民泊新法施行で民泊が全国的に解禁されることで、独自のサービスや魅力を打ち出し、他社と差別化を図る動きも目立ってきた。

 サンケイビル子会社のグランビスタホテル&リゾート(東京)は、老舗料亭跡を再開発し、3月に開業した「ホテルインターゲート京都四条新町」(京都市中京区)で、京都市の協力を得る形で、和ろうそくの絵付けや京からかみといった京都の伝統産業をホテル内で体験できる場を提供。飲料を自由に飲みながら宿泊客が交流できるラウンジも併設した。グランビスタの須田貞則社長は「地域密着の価値を提供し、民泊と差別化を図れる」と語る。

 サンザグループ(東京)は4月、カプセルホテル「安心お宿プレミア」京都四条烏丸店(同市下京区)を開業し、関西に初出店した。宿泊客向けに朝食のカレーやパン、みそ汁、ソフトドリンク、露天風呂、足湯など「無料サービスは200個以上。どこにも負けない」と集客を図る。

 従来より広めのカプセルホテルを運営するファーストキャビン(東京)は19年春をめどに京都市内の旅館を改装し、新しいタイプの宿泊施設をオープンする準備を進める。

 ユニークなビジネスモデルで事業拡大を続ける来海忠男社長は「経営が苦しい旅館業者のお役に立てる」とそろばんをはじく。

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