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広島の訪日客向け夜のエンタメ 主役は毛利元就 仕掛け人は異色の経歴

2018/05/21

 広島市内のカフェで今春から、武将や忍者役の役者が殺陣(たて)や歌を披露する夜間ステージが開かれ、人気を集めている。訪日外国人向けに夜のエンターテインメントを提供しようと、広島市などの委託で観光PRを行っている「安芸ひろしま武将隊」が単独で実施。「サムライやニンジャが見られる」と外国人に好評だ。企画したのは同隊のプロデューサーで、ロッカーや大手予備校講師など異色の経歴を持つ地元男性。「武将隊を伝統文化にしたい」と、自らも広島城ゆかりの毛利元就(もとなり)に扮(ふん)して奮闘している。(山本尚美)

外国人も熱狂

「サムライニンジャシアター」で毛利元就を演じる平岡優一さん。訪日外国人を楽しませている=広島市中区

 広島市中区のカフェにあるイベントスペースで4月下旬の夜、安芸ひろしま武将隊の「サムライニンジャシアター」と題したステージが繰り広げられた。約60席ある階段状の客席は約半数が埋まり、うち10人ほどを外国人が占めた。

 「よう来てくださった。今日は楽しんでくだされ」。サムライ言葉で出迎えるメンバー。開演後、ステージに突如、忍び衆が現れ、客席中央を飛ぶように走り抜けると、外国人の男の子が「キャッ」と楽しそうな声をあげた。続いて元就をはじめ、吉川元春や毛利輝元ら著名な戦国武将に扮した役者が次々登場。舞台狭しと動き回って迫力の殺陣を繰り広げた。

 この後は「サムライロック」と題したメンバーによる歌のステージ。甘い歌声の元春と輝元の“デュオ”を従え、メインボーカルの元就が力強い声でオリジナル曲を歌い上げた。「パワフルでおもしろかった」「衣装がいい」。1時間弱のステージは外国人に好評で、ドイツの23歳の男性は「音楽が格好よかった。来てよかった」と興奮ぎみに話した。

異色の経歴 夢破れて

 このメンバーを束ねるのが、元就役で同隊のプロデューサーを務める平岡優一さん(49)。PRのため甲冑姿で街を歩けば外国人から「アー・ユー・ニンジャ?、サムライ?」などと質問攻めにあう人気者だ。

 平岡さんは広島市出身。地元の私立中高一貫校を卒業後、関西学院大(兵庫県西宮市)法学部政治学科に進学。大学ではバンド活動に明け暮れ、卒業後は東京進出を夢見ていた。

 しかし、26歳で夢をあきらめ帰郷。「ロッカーがサラリーマンになるのは違う」と大手予備校の講師に就き、気が付けば40代になっていたという。

 新たな夢を追いたいと41歳で講師を辞め、パソコン1台でウェブサイト制作会社を起業。まちおこしの商品開発やイベントに携わり、広島県などを舞台にした平成24年のNHK大河ドラマ「平清盛」に関係する観光キャンペーンのプロデュースも担当した。

 これを機に翌25年、募集したメンバーらと安芸ひろしま武将隊を結成。広島市などの委託を受け、観光PR隊として広島城二の丸を拠点にパフォーマンスを続けてきた。地元での知名度も年々上昇し、イベントは多い時で数百人が集まるほどに。

元就「知らない…」

 訪日外国人の増加に伴い、類似の武将隊は各地で誕生している。名古屋おもてなし武将隊や仙台市の伊達武将隊などが有名で、パフォーマンス力を競う「全国武将隊天下一決定戦」も開催されている。

 安芸ひろしま武将隊も結成半年で決定戦に参戦したが、全国のレベルは想像以上に高く予選落ち。得点の順位も下から2番目と散々だった。「そもそも元就なんてよく知らないし…」。平岡さんは自らの未熟さを痛感。その後、元就のことや歴史を勉強し直し、今では地元大学の講義で郷土史を語れるまでになったという。

パリでバカ受け

 すっかり「元就」になった平岡さんは海外への進出も果たした。パリで昨年7月に開催された日本文化の総合博覧会「ジャパンエキスポ」に満を持して乗りこみ、殺陣のパフォーマンスなどを披露したところ、空前の“クールジャパン”ブームもあり「思った以上にバカ受けした」。現地メディアからも次々と取材を受けたという。

 「1980年代に海外でニンジャブームがあり、当時子供だった人が大人になって人気を支えている」と平岡さん。

 こうした実績をもとに、広島県などでつくる協議会が夜のエンターテインメント創出を目的として、29年12月~30年1月に民間事業者に広く企画を呼びかける公募型プロポーザルを実施した際、平岡さんは「まさに自分のためにあるコンペ」と意気込み、サムライニンジャシアターを提案した。

 しかし、結果はまさかの落選。それでも「広島の夜のエンタメは自分しかいない」と諦めず、知人が始めたカフェのイベントスペースを借り、土曜に訪日外国人が楽しめるステージを独自に開催することにした。

 それまで独学でやってきた殺陣に一層磨きをかけるためプロの指導も受けた。こうして広島城などでのイベントのほか、カフェでの夜のステージ(毎週土曜、入場料2千円)にも力を入れている。

武将隊を文化に

 「武将隊は伝統文化になってもいいと思う」。そう語る平岡さんがイメージするのは「よさこい」だ。高知県が発祥とされるよさこいは近年、全国各地に広がり、ご当地よさこいが定着。「武将隊もブームで終わらず、引き継ぐ人が絶えなければ、文化として定着する可能性は十分ある」と夢を広げる。

 広島県によると、県内を訪れた外国人観光客は平成28年は201万5千人(前年比21・3%増)で、5年連続で過去最高を更新。一方、広島城などがある広島市内での滞在は約半数が1日と短かった。世界遺産の原爆ドームや、隣の廿日市(はつかいち)市にある世界遺産・厳島神社(宮島)などを訪れる外国人の多くは日中に観光を終えると、夜までに関西や九州に流れる傾向が強い。「滞在型の観光」が県の課題で、平岡さんらの活動のように地元からのアプローチも期待されている。

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