Logo sec

[連載]誘客都市 ~IRが変える大阪~ 第1部(2)国の未来かけカジノ解禁 シンガポールにそびえ立つ巨大リゾート

2018/04/30

 観葉植物に囲まれ、カフェのようなエントランスを抜けると、そこがシンガポールのリゾート施設であることを忘れてしまうほどの非日常の世界が広がる。

日本人ディーラー60人

シンガポールの観光の目玉となっている「マリーナベイ・サンズ」=2018年3月5日(鳥越瑞絵撮影)

 地下1階から地上3階の巨大な吹き抜けを取り巻くように各階に広がるカジノエリア。日本の大型ショッピングセンターと変わらない延べ1万5000平方メートルの空間は、アジアのカジノの平均面積と比べ6倍に及ぶ。無数のスロットマシン、カジノテーブルが並ぶ光景は圧巻だ。

 シンガポールで2010年に開業した統合型リゾート(IR)施設「マリーナベイ・サンズ」。急成長するIRのひとつだが、カジノの本場、米ラスベガスと決定的に異なるのは、日本人客の多さだ。宿泊客の約2割は日本人で、なかでも目立つのが女性客である。

 「日本人客の中にはカジノで遊んでみたいけれど何をすればいいか分からない人も多い」。4年前からディーラーを務める芝崎太一(たかひと)さん(53)はこう明かす。

 そこでカジノには日本人ディーラー60人を配置。日本人客が一目で、日本人と判別できるよう襟元には日の丸バッジを着け、24時間体制で接客する。芝崎さんは「カジノ初心者に声をかけ、興味や好みに応じたゲームを案内しています」と話す。ラスベガスではあまり見られない徹底したホスピタリティーで来場客を楽しませる。そして、ゲームで負けた客にもこう言わせることが、芝崎さんらが目指す「上質なエンターテインメント」の姿という。

 

 「楽しかった、ありがとう」

国の観光収入が倍増

 シンガポールは1965年の建国以来、アジアの金融・貿易拠点として発展を遂げてきたが、ひとつ大きな欠点もあった。観光資源が乏しいことだ。近隣のマカオやマレーシアがカジノを活用した観光振興を進め、誘客面の劣勢が鮮明となる中、2005年に厳格な不正防止、依存症対策を条件に、カジノ解禁に踏み切った。

 米IR運営大手のラスベガス・サンズが運営するマリーナベイ・サンズは、政府が2カ所に許可したIR施設の一つ。タワーホテル3棟を連結した外観や屋上プールが有名だが、集客の工夫はそれだけではない。

 ホテル併設の展示場は約12万平方メートルと日本最大の東京ビッグサイト(約8万平方メートル)よりも大きく、国際会議や見本市で利用されている。

 シンガポールを訪れる外国人客は2つのIR施設の開業後に急増。09年の970万人から17年は1740万人に達した。年間4000万人が訪れるラスベガスには数十の大規模ホテルが林立するが、シンガポールはわずか2つのIR施設の開業をきっかけに、来訪者を急増させ、国の観光収入も09年の2倍超に伸びた。

「大阪らしさを」

 「IRは成長戦略の目玉になる」。14年にマリーナベイ・サンズを視察した安倍晋三首相はこう話し、2年後に国会でIR推進法が成立した。

 国土が狭い日本が目指すIRは、一定エリアを再開発するシンガポール方式をモデルとしている。

 ただ、マリーナベイ・サンズのジョージ・タナシェビッチ社長は「日本とシンガポールは気候風土や文化が異なる」と指摘。大阪のIR建設構想に参画の意欲をにじませ、「大阪にしかできない、愛されるIRを作りたい」と語った。

【データ編】アジアのIR急成長、大型化進む

 カジノを含む統合型リゾート(IR)は米ラスベガスで進化したが、近年はアジアで急成長している。

 東京都が平成26年に公表した調査報告書によると、カジノが設置されている国は世界で140カ国、施設数は計4325。欧州が1832で最多だが、中小のホテルにカジノが付設されているケースが多く、カジノの平均面積は200平方メートル余りにすぎない。

 一方、北米のカジノ施設数は1422。ラスベガスを中心に大型IR施設が多く、カジノの平均面積は約2900平方メートルと桁違いに広い。アジア・中東は施設数こそ219と少ないが、ラスベガス型の大型IR開発が進み、カジノは平均2500平方メートルに及ぶ。

 カジノ・ギャンブル(スポーツくじなどを含む)の売上高は、北米、欧州、南米はいずれも横ばいだが、アジアは急伸していることが見てとれる。日本で複数のIR建設が実現すれば、市場はさらに数兆円規模で拡大する可能性がある。

シンガポールのIR導入 アジアの観光市場におけるシェアが1998年の8%から2002年に6%へと低下。そこで故リー・クアンユー初代首相の長男で04年に就任したリー・シェンロン首相(66)が05年、カジノ解禁を表明した。リー首相は国会で、IRを「レジャーやエンターテインメント、ビジネスの場」と説明、カジノは「プロジェクトの経済的継続性を支える」と位置づけた。

あわせて読む

大阪市

もっと見る
「大阪市」の記事をもっと見る 「人気」の記事をもっと見る

規制緩和

もっと見る
「規制緩和」の記事をもっと見る

訪日プロモ

もっと見る
「訪日プロモ」の記事をもっと見る

大阪府

もっと見る
「大阪府」の記事をもっと見る

旅行業

もっと見る
「旅行業」の記事をもっと見る 「連載」の記事をもっと見る

カジノ法案

もっと見る
「カジノ法案」の記事をもっと見る 「IR法」の記事をもっと見る

シンガポール

もっと見る
「シンガポール」の記事をもっと見る 「大阪」の記事をもっと見る

誘客都市 ~IRが変える大阪~

もっと見る
「誘客都市 ~IRが変える大阪~」の記事をもっと見る