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[連載]誘客都市 ~IRが変える大阪~ 序章 街や国を飛躍させた新しいリゾート 観光、文化、ビジネス…経済効果絶大 世界のIRルポ

2018/04/28

 きらびやかな建物と街並み、一流のショーやサービス、世界中から訪れる来訪者-。政府が国内導入を目指している統合型リゾート(IR)は、先行する各国で都市の姿を変貌させ、大きな経済効果を発揮している。ギャンブル依存症対策など課題もあるが、カジノはIRの機能の一部に過ぎない。一方で観光、文化、ビジネスなど幅広い分野に恩恵をもたらしている。世界のIR先進地を訪ね、現地の賑わいを体感し、新しいリゾートの姿を追った。

高層ホテルが林立し、きらびやかな光で埋め尽くされた世界市のIR都市、ラスベガスの夜景=2018年2月下旬、米ネバダ州(志儀駒貴撮影)

砂漠の真ん中に年間4000万人 米ラスベガス

 ラスベガスのホテルに入ると、エントランスの先にまず目に飛び込んでくるのがカジノエリアだ。カジノテーブルがズラリと並び、スロットマシンの電飾がチカチカと点滅して客をゲームへと誘う。そこから放射線状に劇場、レストラン、スパ(温浴施設)、客室への通路が延びる。この街ではほとんどのホテルがそんな構造だ。

 ホテルのデザインはIRを専門とする設計事務所が手がける。カジノを経て各施設に到達する動線は、反対にどこからでもカジノに向かえる。スロットマシンは客の目に留まるよう、同じ方向を向かせるのでなくランダムに配置する。

 カジノ・マスマティクス(数学に基づくカジノ運営)―。IR業界に長く身を置く関係者は、カジノビジネスの要諦をこう表現する。地元のネバダ大学ラスベガス校ではカジノの研究や教育が盛んで、IRの経営陣には会計士や弁護士の資格を持つ者も少なくない。新規事業に欠かせない市場調査やマーケティングにも、数学的な緻密さを発揮する。

 米南西部ネバダ州で最大の都市ラスベガスは、九州ほどの広さがあるモハベ砂漠の一角に建つ。この街で暮らす人たちは、乾燥のため1年中ペットボトルの水を手放せない。

 19世紀までは、ゴールドラッシュで金鉱脈を目指す開拓者たちの通過点に過ぎなかったが、20世紀になって都市が形作られた。

 ただ、自然に人が集い、ビルが建っていったわけではない。緑がなく観光資源もゼロだった過酷な土地に観光客が押し寄せるようになったのは、その時代時代で街を変えようと情熱を注いだ先人たちのおかげだ。

 サンズ・アベニュー、ウィン・ロード…。米国の道路にはすべて名前が付けられているが、ラスベガスでは、この街を発展させてきた実業家の名前や、IR事業者の企業名が付いているケースが多い。

 ウエーターが忙しそうに走り回るレストランは、ほぼ満席。劇場やナイトクラブには、これから始まるショーに胸をわくわくさせて開場を待つ人たちが列をなしている。カジノエリアでは、勝ってハイタッチする客がいる一方、負けて悔しさをあらわにする姿もみられた。

 1970年に600万人台だった観光客数は、80年に1100万人台に、90年には2000万人を突破。2014年からは4年連続で4000万人を超えた。不毛の地だったこの街は今、IRがもたらす繁栄を謳歌している。(中山玲子)

国の観光収入が倍増 シンガポール

3つのタワーホテルを屋上部分で連結した威容で、シンガポールの新たなランドマークとなった巨大IR施設「マリーナベイ・サンズ」(鳥越瑞絵撮影)

 シンガポール政府は観光振興の起爆剤として、2005年に2つのIR施設建設を打ち出し、そこでのカジノを容認した。ともに10年に開業し、シンガポールへの外国人訪問客や観光収入を倍増させるなど経済効果を発揮してきた。

 「マリーナベイ・サンズ」は、3棟のタワーホテルを最上階で連結した未来的な外観が都市の新しいランドマークとなり、日本をはじめ各国から来訪者が押し寄せている。

 そこからわずか5キロメートルほど離れた行楽地セントーサ島に、もう1つのIR施設「リゾート・ワールド・セントーサ」が広がる。アジアで大阪に次いで開業したテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」と一体運営され、大人も子供も楽しめるIRだ。

 ただ、マリーナベイ・サンズが屋上プールなどの新機軸や、大規模イベントの開催などで存在感を高めているのに対し、リゾート・ワールド・セントーサは知名度が伸び悩み、一時赤字に陥るなど苦戦する場面も。面積が奄美大島ほどしかない都市国家で、近接する2つのIR施設の競合も課題となっている。

 日本政府は現在、国内の複数の地域へIR導入を検討している。先行するシンガポールの例は、成功と課題の両面で参考になりそうだ。(栗井裕美子)

依存症対策でカジノに異例の「窓」設置 韓国・仁川

韓国・仁川のIR施設「パラダイスシティ」のロビー。日本の芸術家、草間彌生さんの作品「大いなる巨大な南瓜」が来訪者を出迎える (地主明世撮影)

 カジノは大人の夜遊びというイメージが強い。世界中のカジノ施設はたいてい24時間営業で、窓がなく外光が入らないため朝の到来が分かりにくい。時間を気にせず賭けさせるための、カジノ事業者の戦略だ。

 しかし韓国ソウル市郊外、仁川国際空港の近くに昨年4月開業したIR施設「パラダイスシティ」は、カジノに窓が設けられた。朝が来れば陽光が差し込み、夜はしっとりとした雰囲気に包まれる。客が時を忘れてゲームに没頭しすぎないようにとの気遣いだ。

 施設の運営は、韓国のカジノ運営会社と日本のセガサミーホールディングス(HD)の合弁会社が手がける。カジノは外国人専用で、1万5000平方メートルの広さは韓国に17カ所ある中でも最大規模。窓の設置について、運営会社の青山茂樹さんは「お客さまの心身に配慮する新しいカジノ」と自信を見せる。

 実は韓国では、自国民が利用できる唯一のカジノでギャンブル依存症が続出した苦い経験がある。カジノの「窓」は、反省を踏まえた健全化策ともいえる。

 セガサミーHDは将来、日本でのIR事業参入を目指している。韓国のカジノ運営で得た貴重なノウハウは、日本のIR施設にも生かされる可能性がある。(地主明世)

観光・経済浮揚へ IR誘致目指す大阪

 政府が成長戦略の一環としてIR推進を掲げる中、その誘致運動を最も強力に展開しているのが大阪府・市だ。2025年国際博覧会(万博)の誘致に並行して、万博予定地とする大阪湾の人工島・夢洲にIRも建設しようと目論む。実現すれば、関西はどう変わるのだろうか?

大阪湾の人工島・夢洲。大阪府・市は国際博覧会(万博)とIR建設を誘致している(産経新聞社ヘリから、柿平博文撮影)

 顕著な効果が期待されるのは、観光コンテンツの充実だ。大阪は現在、グルメやショッピングが観光の目玉になっている半面、それ以外の魅力の乏しさが課題でもある。大阪府・市が平成28年に策定した「大阪都市魅力創造戦略2020」は、地域の魅力と総合力を高めるため、国際エンターテインメント都市を目指すと打ち出した。

 海外の大型IR施設は本格的な劇場を備え、世界的な人気歌手や一流の劇団の公演が盛んだ。大阪のIRでビッグアーティストの長期公演が実現すれば、集客力は確実にアップする。大型施設を生かした屋内スポーツ興業も視野に入る。富裕層にとっては、カジノが魅力的な娯楽になる。

 関西広域圏への影響という面では、夢洲という立地がカギを握る。府・市はIR建設に並行して、鉄道を夢洲に延伸するなど交通アクセスを改善する方針で、IRから京都、奈良などの観光名所へ周遊する一体的な観光誘致が可能になる。夢洲と関西国際空港、神戸空港を船で結ぶ構想もあり、観光客に人気の移動ルートとなりそうだ。夢洲の発展を機に、湾岸地域で開発需要が一気に高まる波及効果も期待される。

 関西経済同友会の試算では、IR開業までの3~4年間に施設建設やインフラ投資に伴う経済効果は累計1兆4700億円。開業後も毎年7600億円の効果を見込む。大阪府の域内総生産約38兆5000億円(27年度推計、名目)に対し、2%近い押し上げ効果をもたらす計算で、関西の景気浮揚の起爆剤となる可能性は高い。(上野嘉之)

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