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[連載]観光立国のフロントランナーたち フードダイバーシティ・守護彰浩社長(最終回)

2018/03/12

ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長 (一般社団法人日本インバウンド連合会理事長)が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。フードダイバーシティの守護彰浩社長との対談の最終回は、守護社長がこれからの観光立国の実現に向けて取り組みたいことや夢、ビジョンについてお聞きします。

日本の「食材」を通してインバウンド業界に好循環をつくる

中村 これからの観光立国の実現に向けてのビジョンや夢についてお聞かせ下さい。

守護社長 持続可能なインバウンド環境の実現です。張りぼてな日本を見せてしまうと観光客は見抜いてしまうので、土台がしっかりとしたインバウンドを作っていきたいと思っております。グローバル・ホスピタリィ(世界各国の多様な人々に対するもてなし)の中に、どれだけ「日本、さすが!」という項目を入れられるかだと思っております。

例えばトリップアドバイザーの外国人に人気の日本のレストランランキングでは2016年も2017年も1位は食の禁忌に対応したレストランで、やはり異国での食の禁忌対応は大きな感動を与えることができるようです。日本全国が食の禁忌に対応した体制をとれれば、日本を隅々まで行きたい、長く滞在したいというニーズが高まると思います。

中村 訪日外国人の満足感を高めながら、同時に経済効果も高めていくということが結果的に日本のブランド力を形成していくということですね。

守護社長 それにおいては日本の食材をちゃんと伝えたいと思っています。海外のシェフから、日本の食材どう使えばいいかわからないと言われたことがあります。例えば、日本を代表するような和牛であったり、新鮮な海産物であったりでも、どういう調理方法や、どういう状態が一番おいしいかなどはその食材に慣れていないと、なかなか分かりません。現に海外で焦げる一歩手前くらい焼かれた和牛を見ることもあります。やはり日本の食材を活かす術を一番知っているのは日本のシェフだと思いますので、これからは貿易会社さんを通じてだけではなく、「シェフtoシェフ」で日本の食材のすごさを世界に伝えるべきだと思います。

今後日本の食材を仕入れたいという海外のシェフに日本に修業に来てもらい、調理方法を学んでいただくような取り組みがあってもいいのではないでしょうか。世界遺産にもなった和食を、しっかりと学びたいというシェフは世界に多くいると思いますし、それも立派なインバウンドだと思います。料理も含めた文化の輸出は長期的に重要なインバウンド施策になるのではないでしょうか。

中村 日本で食のダイバーシティ(多様性)が実現できたら日本の食品の輸出にもつながってきますね。

守護社長 私はそこがゴールだと思っています。

中村 それが循環していくのでしょうね。自分の国で食べた日本食を実際に日本で食べてみるという。

守護社長 本物志向ですね。

成果はすぐにでない。地域全体の取り組みを

中村 最後に、日本のインバウンド業界全体に対するメッセージをお願いします。

守護社長 絶対に地域で1社、2社でやって花が咲くものではなく、チーム・地域全体でやっていかないといけない取り組みだと思っています。なので、例えば、栃木県の佐野市では、最初、日光軒というラーメン屋さんが佐野ラーメンだけでムスリム対応の取り組みを行っていましたが、その日光軒さんが周りに声をかけ、今は鉄板焼き、料亭、宿泊施設なども対応を始めたことにより、点ではなく面で佐野に行く理由を作り出しています。

もし、日光軒さんが米仕事(経済的対価を求めた仕事)のみをやっていたとしたらこの成果はなかったと思います。もう1つ、フードダイバーシティの取り組みは、今日対応して明日から成果が出るものではなく、お客様の信頼がつかめるまで半年はかかると思います。短期的な視点で見てはいけないな、と思っています。

中村 行政の認識と民間のプレイヤーの認識が同じ方向に向いていて、地域の在住者と共生していこうという考えがないとだめですね。

守護社長 それが一番成功しているのが大分県の別府市ではないでしょうか。別府では行政と、市民および地域事業者と、国際大学である立命館アジア太平洋大学(APU)と連携して、フードダイバーシティの取り組みを実現させ、インバウンド施策に活かしています。APUには世界中から約3000人の留学生がいるので、テストマーケティングもとてもやりやすい環境であることは利点ですが、日本全国の大学にも少なからず留学生はいるので、その連携は今後もっと全国で深めていくべきだと思います。

中村 行政の方々と市民の目線が近いですね。世の中に「すでに起こっている未来」はいっぱいあるのに、それを勉強しないのはもったいないですよね。(終わり)

守護彰浩(しゅご・あきひろ) 1983年石川県生まれ。千葉大学卒業後、2007年楽天株式会社入社。2014年1月に「ハラールメディアジャパン」を創業し、日本国内のハラール情報を6言語で世界に発信するポータルサイトの運営をスタートさせた。また、ハラールにおける国内最大級のトレードショー・「ハラールエキスポジャパン」を4年連続で主催。国内外の事業者やムスリム2万人以上が来場するイベントとなっている。2017年10月に社名を「フードダイバーシティ」に変更。ハラールに加えてベジタリアン、ビーガン、コーシャなどありとあらゆる食の禁忌に対応する講演、及びコンサルティングを行う。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長に就任。国際22世紀みらい会議(Mellon 22 Century)議長。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)、『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(日経BP社、2017年)がある。

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