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「ユニバーサルマナー」を企業が積極導入 さまざまな人と暮らす心遣い、東京五輪・パラや大阪万博に向け機運急上昇

2018/02/23

 高齢者や障害者、外国人、ベビーカー利用者など、さまざまな人々と共に暮らすための心遣いや行動の規範「ユニバーサルマナー」が、企業から注目を集めている。2020年東京五輪・パラリンピックや、25年の大阪開催を誘致している万国博覧会(万博)を見据えダイバーシティ(多様性)対応が求められているからだ。加えて、「自分と違う視点」がビジネスに役立つとの認識も広まりつつある。認定制度「ユニバーサルマナー検定」の導入企業はすでに400社。検定を創設した大阪のベンチャー企業、ミライロ(大阪市淀川区)は「多様性を社会の力や価値に変えたい」と意気込んでいる。(上野嘉之)

テレビ会議でも参加

伊藤忠テクノソリューションズが開いた「ユニバーサルマナー検定」の講座

 システム開発大手の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は1月26日、大阪・梅田の西日本支社でユニバーサルマナー検定3級の講座を開催。管理職を含め約60人がオフィスに集まったほか、テレビ会議システムを通じて名古屋、広島、福岡からの参加もあり、受講者は100人にのぼった。

 講師を務めたミライロ社員の岸田ひろ実さん(49)は、長男がダウン症を持って生まれ、自身も40歳で大病から下半身まひとなり、車いすで生活する。そんな経験を生かし、今では年間180回も講演してユニバーサルマナーの普及に努めている。

 この日の講座では、高齢者や障害者への向き合い方、声のかけ方などが体系的に説明された後、困っている場面の写真を見て、何がどう不自由かを考えるグループワークも行われた。参加者は「まず『何かお手伝いできることはありますか』と声をかけるなど、具体的にとるべき行動が分かった」と話し、成果を実感していた。

「本業に役立つ」

関西財界セミナーで「特別賞」を受賞し、スピーチするミライロの垣内俊哉社長 =2月9日、京都市左京区の国立京都国際会館

 ユニバーサルマナー検定は、3級は講座を受講すれは認定される。2級はより専門的な講座と実技研修を受け、試験に合格する必要がある。

 企業の間では、飲食店や小売店、ホテル、結婚式場など接客を伴うサービス業で関心が高いが、伊藤忠テクノソリューションズはIT企業として初めて検定を導入。昨年7月にも東京で講座を開き、グループ社員約500人が受講した。

 伊藤忠テクノソリューションズで検定導入を主導した広岡純治・執行役員経営企画室長は「ITで世の中を変えるという当社の使命と、障害や国籍などの壁を超えて暮らしやすい社会を作るユニバーサルマナーの理念は、一致する部分が多い」と指摘。広岡氏自身も受講した結果、「街を歩くときや、ふとした瞬間にユニバーサルマナーを意識する」といい、「社員に気づきを与えてくれて、本業のシステム開発にも役立つ」とメリットを話す。

 伊藤忠テクノソリューションズは検定導入後、受付に盲導犬、介助犬、聴導犬を温かく迎える意思を示す「ほじょ犬マーク」を掲げるなど、社内でダイバーシティへの理解が深まったという。

ハートを変える

伊藤忠テクノソリューションズが開いた「ユニバーサルマナー検定」で講師を務めた岸田ひろ実さん

 ユニバーサルマナーを提唱したミライロは、垣内俊哉社長(28)が立命館大に在学中の平成22年に学生ら3人で創業。骨の病気から長く車いす生活を送る垣内氏は、「バリア(障害)を価値(バリュー)に変えていこう」という理念を掲げ、自らの体験に基づきユニバーサルデザイン(障害者や高齢者らも利用しやすいデザイン)の開発やコンサルティング、バリアフリー地図の作成などを手がけてきた。

 ただ、企業の中には「バリアフリーは大切だが、ハード(施設や機器)にあまりお金をかけられない」という声もあった。そこでミライロでは「ハードだけでなくハート(心)も変えていこう」と、25年に同社を母体とする一般社団法人「日本ユニバーサルマナー協会」を設立し、検定制度を創設した。

 以来、検定は企業の間で急速に浸透。イオングループは2020年までに7万人の取得を目指している。大同生命は全役職員7200人が取得。ほかに丸井グループ、大和ハウスグループなど大企業が積極的に取り入れ、これまでの認定取得者は約6万人にのぼる。

関西財界で「特別賞」

 特に、世界中からさまざまな人が集まる東京五輪・パラリンピックに向けて機運が急上昇しているという。講師の岸田ひろ実さんの長女で、ミライロ創業メンバーの1人でもある岸田奈美広報部長(26)は、「ユニバーサルマナーは人権教育やCSR(企業の社会的責任)の枠を超え、事業を含む企業活動そのものに根ざすようになってきた」と話す。

 ミライロは、関西経済同友会などが2月8、9日に開いた関西財界セミナーで、障害者の視点から新たなビジネスモデルを確立したことなどが評価され「関西財界セミナー賞・特別賞」を受賞した。

 岸田広報部長は、政府や大阪府・市、経済界が誘致を目指している万博にも貢献したいと話し、「大阪でユニバーサルマナーをもっと普及させれば、関西の競争力を高められる」と地域の発展も見据えている。

 ユニバーサルマナー検定は、企業の要請に応じて出張方式で開催されるほか、個人で受講できる講座が大阪、京都、広島、東京、福岡などで順次開催されている。また3級はオンラインでの受講も可能だ。受講料は3級5000円、2級1万5000円。ユニバーサルマナー検定の公式ウェブサイトで受け付けている。

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