Logo sec

[連載]観光立国のフロントランナーたち ジェイノベーションズの大森峻太社長(最終回)

2018/02/05

ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長(一般社団法人日本インバウンド連合会理事長[JIF])が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。訪日外国人観光客向けの無料ガイドサービスや訪日客対応のコンサルティング事業などを展開するベンチャー企業、ジェイノベーションズの大森峻太社長を迎えた対談の最終回となる第4回では、日本のインバウンドの課題や今後の取り組みなどについてお話をうかがいました。

日本人は8割が道を聞かれても外国人を案内しない

中村 これまで大森社長が2年半にわたって事業展開をされてきた中で、見えてきた日本のインバウンドの課題はありますか。

大森社長 日本人が外国人に対して気持ちの面で「特別感」というものを持ってしまっているところです。「別世界の人」という意識がまだまだあります。加えて、英語へのコンプレックスが強い国なので、外国人が道に迷っていても全く助けてくれないという悩みを外国人からよく聞きます。

10人くらいの日本人に声をかけてやっと1人か2人が案内してくれるくらいの確率だそうで、またその案内してくれる約1割?2割の人たちは英語が全く話せない人も多いようです。渋谷でも、そういう光景をよく観察しているのですが、結構英語が話せそうなエリート風のビジネスマンは逃げていく人が多いんです。かえって、ヤンチャそうな若い女の子のほうが、英語にコンプレックスがないせいか、「あっち、あっち」みたいにちゃんと答えていたりしています。外国人にとってはそれだけでもすごく助かっているんです。

意外としっかりと受験勉強をしてきた人の方が英語を話せないことに対するコンプレックスが強くて、「sorry(ソーリー)」と外国人をあしらってしまう。先日、アメリカのボストンから来た人を案内しましたが、日本に1カ月くらい滞在して「1番の思い出は何か?」と聞いたんですが、こんな答えが返ってきました。

初日の夜に道に迷って、道を聞いても誰も答えてもらえなくて、「日本はなんて冷たい国なんだ」と思っていたが、ヤンチャそうな若者たちがいたので道を聞くと、全く英語が話せないのにホテルまで連れて行ってくれた。それがとてもうれしくて、「チェックインするから待っていてほしい」と簡単な英語とボディランゲージなどでどうにか伝えて、その後、居酒屋に連れて行ってもらって、朝までみんなで一緒に飲むことにした。

その若者たちは5人いたのですが、誰一人英語を話せず、掛け声やグーグルの翻訳機能を駆使しながら面白おかしくやり取りをしてくれたそうです。そのことをすごく喜んでいました。

中村 現状の日本の英語教育が観光立国への道を阻んでいるようにも思えますね。

大森社長 実際にデータの中でも、外国人の困り事のランキングでは多言語の対応ができていないということがトップです。コミュニケーションの部分で日本は世界から遅れをとっています。日本人も外国人を助けたくないという理由で避けているのであれば仕方ないと思いますが、本当は助けたいのに恥をかきたくないという理由で逃げてしまう。

そこは気持ち一つで変わるのではないかと思っています。しかし、それが実際にはかなり難しいということも実感しています。こうした課題のためにも私たちが、日本人の意識を変えられるようしっかり取り組んでいきたいと考えています。

広義のインバウンドを支援する

中村 今後、ほかにどのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか。

大森社長 外国人の方から日本での就職や日本への留学に関する問い合わせもいただくので、訪日旅行客だけではなく、日本に在住する外国人が生活しやすくなるような情報の提供や、外国人と日本人の双方の人の交流をサポートできるような体制を作っていきたいと考えています。「ジャパンローカルバディ」に登録して下さっている方々には、訪日旅行客との交流をメーンに今はやってもらっていますが、旅行客だけではなく、広い領域で日本を訪れる外国人が快適に過ごせるような取り組みを行っていきたいです。

中村 日本でビジネスを展開したい外国人や日本に留学して学びたい外国人もいますし、旅行客だけではなく、留学や起業や就業している在住外国人全般の「広義のインバウンド」にターゲット領域を広げていくことを目指してらっしゃるということですね。

大森社長 はい、そういった形での横展開をしていきたいです。すでに最近は日本に在住する外国人向けに日本人との言語交換の場を設けるなど、少しずつ活動を広げていっています。このプラットフォームが大きくなればインバウンド全般を支援できるようになります。

中村 まさに大森社長は、旅行客のみの狭義のインバウンドから留学生やビジネスマンなども対象にした広義のインバウンドへと広げていくビジネスの具現者ですね。

子供の貧困など社会の課題解決にも取り組む

大森社長 さらに言うと、近年日本でも問題となっている貧困家庭に生まれた子供たちの貧困の連鎖の問題も大変心配しています。私たちにできることは、卓越したグローバル人材を育成するとか、そんな壮大なことではなく、海外に興味を持つきっかけ作りだと考えています。私の場合はたまたま修学旅行がそのきっかけになりましたが、そういう機会がもっと気軽に作れればいいと思っています。別に海外まで行かなくても今は日本にたくさん外国人が来てくれているので、そこで海外に興味を持ってチャンスを掴んでいく子供が増えたらいいですね。

中村 社会で阻害されるなど弱い立場にある人たちにとって、成長の機会を与えてくれたり、楽しく過ごせる居場所になったり、いろいろな意味で大森社長の活動を通してインバウンドの効能を広げていくことができそうですね。

大森社長 インバウンドを切り口にして、社会の課題解決に取り組んでいきたいです。高齢化の問題や子供の貧困問題のソリューション(解決策)の一つとして、小さい子から年配の方まで、うまくこのコミュニティーに巻き込んでいき、年齢に関係なく生涯を通して続けられるような活動にしていきたい。それが私の夢です。

中村 そういった草の根の活動が、観光立国を押し広げていく力になります。

大森社長 絶対になると信じています。(終わり)

大森峻太(おおもり・しゅんた) 1989年神奈川県生まれ。大学在学中、カナダ留学、韓国留学、オーストラリア留学を経験。大学卒業後はカナダに拠点を移し、1年半かけて海外を周る。帰国後、外国人旅行者向けボランティアガイド団体を立ち上げ、約5000人のボランティアガイドを全国で集める。2016年12月インバウンド事業をメーンに手掛ける株式会社「ジェイノベーションズ」を設立。外国人と日本人をつなぐ国際交流プラットフォーム「Japan Local Buddy(ジャパン・ローカル・バディ)」をリリースし、全国でガイド育成に取り組んでいる。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長に就任。国際22世紀みらい会議(Mellon 22 Century)議長。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)、『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(日経BP社、2017年)がある。

あわせて読む

多言語対応

もっと見る
「多言語対応」の記事をもっと見る 「人気」の記事をもっと見る

訪日プロモ

もっと見る
「訪日プロモ」の記事をもっと見る

中村好明

もっと見る
「中村好明」の記事をもっと見る 「連載」の記事をもっと見る

観光立国のフロントランナーたち

もっと見る
「観光立国のフロントランナーたち」の記事をもっと見る

ジェイノベーションズ

もっと見る
「ジェイノベーションズ」の記事をもっと見る

大森峻太

もっと見る
「大森峻太」の記事をもっと見る