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全国で広がる移住体験ツアー 自治体から請け負い、旅行会社は地方観光の盛り上がりに期待

2018/01/24

 地方の人口減に歯止めをかけようと、全国の自治体が移住を体験できるツアーをこぞって実施している。自治体から請け負った旅行会社が企画力を発揮し、生活環境の見学や移住者との交流を行いながら、観光も楽しめるという充実した旅程だ。旅行会社にはこうしたツアーを地方観光の盛り上げにつなげる狙いもある。(田村慶子)

旅行業登録が必要

兵庫県阪神北県民局主催のツアーで移住者と話す参加者ら。交流会では通勤時間や住宅の購入価格など現実的な質問が多く飛んだ=兵庫県三田市(田村慶子撮影)

 急激な人口減少時代、待ったなしの対策が求められる地方では「移住体験ツアー」で定住者の呼び込みを図る自治体が相次いでいる。

 「もっと寂れていると思い込んでいましたが、来てみないと分からないものですね。町の印象がぐっと良くなりました」

 昨年10月、兵庫県の宝塚市や三田市など5つの市町をめぐるツアーに、大阪・枚方市から妻子と3人で参加した30代の男性会社員は満足そうに話した。

 住宅街を見たり、実際に移住した家族に暮らしぶりを聞いたりしながら、休日を過ごすのにぴったりな娯楽施設も体験。ノウハウの豊富な旅行会社が企画した上、1泊2日で代金が5千円と格安だったこともあって、大阪府内を中心に約20人が集まった。

 主催した兵庫県阪神北県民局の担当者は「地域の魅力を広く発信したい」とツアーの狙いを説明。「今後、県営住宅などを生かした移住体験にも取り組みたい」という。

 このツアーは県民局の委託を受け、日本旅行グループが企画、実施した。不特定多数の参加者を募り、報酬を得て交通手段や宿を手配する場合、旅行業の登録が必要となるため多くの自治体が旅行会社に委託している。

格安で実施

 一方、政府は地方創生の一環として、平成32年までに東京圏から地方への転出を4万人増やす目標を掲げ、自治体による移住促進の取り組みに特別交付税による財政措置も実施。この交付税を活用し、旅行代金を安く抑えてツアー客を募れることから、最近は旅行業に登録して異業種から参入する企業も出始めている。

 全国の自治体でこうしたニーズが広がる中、日本旅行グループは一昨年初めて岡山県赤磐(あかいわ)市の移住体験ツアーを受託した。昨秋から今春にかけて福井県、京都府、高知県、島根県の14地域に急拡大。日本旅行の広報担当者は「送客が増えれば地域が活性化し、ひいては地方観光の盛り上げにもつながる」と期待する。

外国人呼び込みも

 JTB西日本も昨年11月、神戸市が主催する外国人向けの移住体験ツアーを受託、約10人が参加した。神戸市が独自に予算を捻出したため、食事や現地までの交通費を除いて宿泊などのツアー代は無料だ。

 このツアーでは2泊3日で下町情緒あふれる新開地の商店街や、六甲山、有馬温泉などを散策。東京都内から夫婦で訪れたコロンビア人の須藤ディアナさん(39)は「豊かな自然が魅力的。地震地質学を学んでいるので、神戸の復興にも関心がある」と移住に前向きだった。

 神戸市の推計人口は昨年1月時点で前年より2320人少ない153万5161人だった。24年以降、5年連続で減少する半面、外国人は28年で4万3769人と2年連続の増加。神戸市の担当者は「神戸は昔から外国人が多く、住みやすい環境も整っている」と、人口減少の対策に外国人の呼び込みが有効との見方を示す。

 JTB西日本の広報担当者は「移住体験ツアーの企画を通じて観光資源を発掘できるなど、国内外の旅行者に向けて地方観光をアピールする上で自治体との連携は重要」と話している。

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