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クルーズ旅行に参加してみた…その魅力を広めるには 論説委員・井伊重之

2017/06/10

永年勤続休暇を利用し、話題のクルーズ旅行に参加した。海を眺めながらゆったりと過ごすクルーズには、豪華な船旅とのイメージもあるが、最近では宿泊・食事代込みで数万円の割安プランも登場し、新たな市場を開拓しつつある。

快適な「動くホテル」

外国人観光客の受け入れ増を目指す国土交通省も外国クルーズ船の誘致に力を入れる。東京―大阪―京都という訪日客のゴールデンルートから離れた各自治体では、クルーズ船を呼び込もうと港湾整備に躍起だ。

海外の船会社もアジアから日本に向けて航行するクルーズ船には需要が見込めるため、新たな航路開拓に積極的だ。確かにクルーズ旅行の潜在力は大きいといえるが、実際に参加してみると、普及に向けて解決すべき課題が多いことも分かった。

港から港へと航行するクルーズ旅行の魅力は、何といっても自分で重い荷物を持って移動する煩わしさがないことだ。クルーズ船は「動くホテル」なので朝、目が覚めたら次の寄港地に着いている。これなら足腰の弱った高齢者らも参加しやすいだろう。

船室のバルコニーから海を眺めて過ごすのもいいが、船内では映画上映や歌謡ショー、プールなどの多くのサービスが用意されている。食事も複数のレストランがあり、無料で利用できるビュッフェから、ドレスコードがある高級レストランまでさまざまだ。

しかし、クルーズが豪華な船旅というのは昔の話だ。すでに欧米では家族連れが楽しむ旅として定着している。人口に占めるクルーズ経験者は、欧米で3%程度なのに対し、日本では0.2%にとどまるという。「短期クルーズでも1週間程度を要するため、長期休暇を取得しにくい日本ではまだ、なじみが薄い」(大手旅行代理店)からだとされる。

現在のクルーズ人気はアジアから火がついた。日本の港にクルーズ船が寄港した回数は昨年初めて2000回を超え、その旅客数は前年に比べ8割近く増えて約200万人に達した。ただ、これでも訪日客全体からみれば8%にすぎない。島国であることを考えれば、訪日手段としてクルーズがもっと注目されてもいいはずだ。

船会社がターミナル整備も

船会社がアジア発着の日本向けクルーズを企画しても、国内の寄港地を確保できなければツアーは成り立たない。国交省は寄港可能な港湾を海外に紹介する一元的な窓口を設けているが、最近のクルーズ船は大型化が進んでおり、港湾側の受け入れ体制の整備が課題だ。

このため、同省では官民連携によるクルーズ拠点を整備する方針を打ち出した。これは税関や出入国管理などの手続きを行うターミナル施設の建設に協力した船会社に対し、岸壁の優先使用を認めるものだ。この対象として横浜や清水(静岡県)、佐世保(長崎県)など全国6港が認定された。

いまは訪日客向けのクルーズ誘致が先行しているが、旅行業界は今後、日本人の利用にも力を入れる方針だ。阪急交通社は来年春に欧米の大型クルーズ船をチャーターし、横浜港発着で日本とアジアを周遊するツアーを始める。料金は9日間で10万円前後から設定する。

出入国手続きの時間に課題

しかし、外国船は日本国内の港だけを周遊することはできない。国内海運業の保護などを目的とした「カボタージュ」と呼ばれる国際的な規制があるためだ。阪急交通社の場合も韓国・釜山や台湾・基隆に立ち寄るコースとしている。私が参加したクルーズも基隆発着で沖縄本島と宮古島、石垣島を周遊するツアーだった。

海外を経由すると当然、税関や出入国管理などの手続きが必要となる。大型クルーズ船には数千人が乗り込むため、それだけ手続きにかかる時間が長くなり、高齢者らの負担も大きい。せっかくゆったりとした船旅を楽しもうとしているのに、その前に並び疲れたのでは旅行気分も台無しだ。

これを避けるには、公共の出入国ロビーを経由しない待合室などの設置も考えるべきだ。高齢者らはそこで座って待てるようにすれば快適だろう。官民で知恵を絞ってほしい。

4月に日本を訪れた外国人観光客は257万人と過去最高を更新した。アジアの日本人気はいまだに衰えていない。クルーズを起爆剤にして日本のホスピタリティーをさらに向上させていきたい。(いい しげゆき)

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