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「観光を消費喚起の起爆剤に」経団連審議員会副議長・観光委員長 冨田哲郎氏

2017/04/02

わが国の観光は今、正念場を迎えている。3年連続で訪日外国人旅行が人数・消費額とも過去最高を更新し、国内観光の減少トレンドもようやく下げ止まり反転の兆しを見せるなど、その著しい成長が脚光を集めているのは周知の通りである。

201703311330_1.jpg一方、将来に目を向ければ、人口減少・高齢化、イノベーションの急速な進展、各国観光地との誘致競争の激化といった環境変化がいや応なくわれわれをのみこもうとしている。これを好機と捉え、対応を図れるか否か、さらに言えば、国内外の観光需要を取り込んで国・地域の成長につなげ、「観光立国・観光先進国」の実現に向け取り組む覚悟があるか否かが、問われている。本稿では、その実現への道筋、すなわち観光の「質」を高いレベルで極めていくための具体策について、経済界の考え方を述べたい。

「稼ぐ力」発揮

まず何よりも重要なことは、観光関連産業の成長力を強化し、「稼ぐ力」を発揮することである。そのためには、消費を喚起・創造するとともに、先端技術を活用し、サービスの生産性向上・高付加価値化を図り、需要と供給の好循環を実現しなければならない。

消費喚起については、1人当たりの消費額やリピート率を引き上げるための施策が求められる。価値観・ライフスタイルの変化で、個人旅行が増加するなど観光ニーズが急速に多様化する中、官民挙げてマーケティング機能を強化することが欠かせない。国が主導して、分散している関連情報を集約し、地域や企業が活用できるよう整備していくことが重要だ。

人口減少が進展する中、国内消費の喚起の鍵を握るのは、休み方・働き方改革になる。現在、官民連携の下、学校休業日の分散化に合わせた休暇の取得、今年2月にスタートした「プレミアムフライデー」などに取り組んでおり、こうした動きを一層加速し、国民的な機運を盛り上げていく必要がある。

一方、需要を刺激する上では、供給サイドの質を引き上げることが欠かせない。なかでも、「新たな市場の創造」は拡大の余地が大きく、この分野に注力していくべきではないか。具体的には、海外富裕層・ビジネス層もターゲットとして、「カルチャーツーリズム」「アグリツーリズム」「テクニカルビジット」など、高付加価値ツーリズムを積極的に形成するとともに、国内外の高齢者、障害者、乳幼児連れ家族などの潜在ニーズを的確に捉えたサービスを提供していく必要がある。

なお、これらサービスの提供に当たっては、深刻な労働力不足に対応する観点からも、人工知能(AI)・ロボット、製品やサービスに通信でつながるIoT(モノのインターネット)など超スマート社会「Society5.0」における先端技術を積極的に活用する視点が不可欠である。政府に対しては、こうした先端技術に関する研究開発や規制改革を進め、その普及を強力に推進することをお願いしたい。

地域の自立的成長を

需要と供給の好循環を観光が実現し、地域活性化あるいはイノベーションの起爆剤となり得るためには、主役たる「地域」が、自ら持てる観光資源をフルに活用して稼ぎ、自立的に成長していくことが前提となる。

既に地域の幅広い関係者が参画して観光戦略を決定し、効果的に施策を実行する司令塔機能が必要との認識に基づき、専門法人「DMO(Destination Marketing/Management Organization)」の形成が進められている。

こうした取り組みは一歩前進ではあるものの、その機能はいまだ十分に発揮されているとは言い難い。各DMOがその質的向上を自立して図るのみならず、政府にあっても、良質なDMOへの集中的支援や、地域への財源移譲、DMOの財源確保などに取り組み、持続的な観光地経営を後押しすべきだ。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催や世界的な観光需要の堅調な伸びが今後も継続するとの予測に鑑みれば、観光産業ほどポテンシャルの大きい産業は他にないのではないか。

経団連としても、プレミアムフライデーの推進、「経団連観光インターンシップ」による人材育成、休暇取得の分散化をはじめとした取り組みを強化し、「観光立国・観光先進国」の実現に向けて率先垂範、積極的に取り組んでいきたい。

冨田哲郎(とみた・てつろう)東大法卒。1974年日本国有鉄道入社。JR東日本取締役、常務、副社長を歴任。2012年から社長。15年から経団連審議員会副議長、観光委員長を務める。東京都出身。
 

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