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国内・アジア圏で高まる邦画熱 大ヒット「君の名は。」が4月に北米公開

2017/03/07

洋画はかつて日本国内で公開される映画作品の中で高いシェアを占めていたが、近年では邦画が熱い。日本映画製作者連盟によると過去9年間、国内興行収入で邦画が洋画を上回る状況が続いている。(ブルームバーグ Shoko Oda、Stephen Stapczynski)

一昨年と昨年に公開された「妖怪ウォッチ」シリーズの公開初週観客動員数は、同時期に公開の「スター・ウォーズ/ローグ・ワン」や「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を上回った。世界ではハリウッド映画の人気が続くが、国内の観客の視線は日本独自の映画に向けられている。

「海外は意識せず」…世界で最も収入得た日本のアニメ映画に

201703071340_1.jpg昨年、オリコン年間興行ランキングで1位になった映画「君の名は。」(東宝提供)

米国の映画調査サイト、ボックス・オフィス・モジョの世界興行収入ランキングによると、昨年の5位までは全てディズニー作品。一方で国内のオリコン年間興行ランキングで1位になったのは東宝グループの大ヒット作「君の名は。」だ。

岡三証券の岸本晃知シニアアナリストは、配給会社とテレビ局が共同出資し製作する製作委員会方式が安定した興行収入を生み出し、邦画の成長につながっていると指摘。近年のハリウッド映画については「日本市場に多額の広告宣伝費をかけて邦画と競争するよりも、成長する中国市場で公開される方がメリットが大きい」と述べ、映画の市場規模が日本の3倍ある中国でのヒットをより重視しているのではないかとみている。

2016年には中国の大連万達集団がハリウッドの映画会社レジェンダリー・エンターテインメントを買収。2月に米国で公開された米中合作の「グレートウォール」は中国の万里の長城を舞台にしている。ハリウッド系の映画会社は今後も中国市場を意識した作品を製作し続ける見通しだと、岸本氏は語る。

201703071340_2-300x0.jpg東宝の宣伝プロデューサー、弭間友子氏(ブルームバーグ)

一方、日本で国内向けに製作した作品が海外でも好評を博すケースもある。

16年8月公開の「君の名は。」はアニメ界注目の新海誠監督による作品。東宝の16年3~11月営業利益は前年同期比で29%増加したが、同作や「シン・ゴジラ」の大ヒットによるところが大きい。

「君の名は。」の半年間の国内興行収入は約235億円に達し、宮崎駿監督作の「ハウルの動く城」を抜き国内歴代邦画興行収入第2位に躍り出た。

想定外の観客動員数の伸びに「本当にうれしいし、大変驚いている」と語るのは、宣伝プロデューサーの弭間(はずま)友子氏だ。タイトルが決まっていない製作当初から関わり、打ち合わせなどに参加していた弭間氏は、監督に近いポジションから製作現場を見ていた。

新海監督の作品の一番の魅力ともいえる実写に近い風景画を使い、なじみ深い東京の街並みや観客が見たことのあるような風景を宣伝に全面的に使う案を打ち出した。

何度も映画館に足を運ぶリピーターが続出した同作の、日本を含む世界興行収入は約3億2700万ドル(約372億8600万円)。01年にアカデミー賞を勝ち取った「千と千尋の神隠し」の約2億7000万ドルを抜き、世界で最も収入を得た日本のアニメ映画となった。

弭間氏は海外での好成績について「もともと海外展開を目指したわけではなかった」と語る。映画の中では、日本語独特の言葉遣いや方言など、日本人にとってはなじみやすくても、海外の観客にとって分かりにくい場面や翻訳もあるためだ。

だが、中国とタイではそれぞれ日本映画歴代興行収入1位になり、韓国では第18回プチョン国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門で優秀賞と観客賞を勝ち取るなど、アジア圏からの評価は高い。

“最大市場”にチャレンジ…成功を収められるか

映画に出てくるロケ地を巡る「聖地巡礼」などの社会現象は国内のファンと同様に海外からの観光客の間でも話題になった。アニメや漫画などを使用し日本文化を世界に広める「クールジャパン」戦略を進める日本政府も「君の名は。」を使ったインバウンド観光戦略案を発表した。

一般社団法人アニメツーリズム協会は、映画で使われた岐阜の飛騨と東京を巡る聖地巡礼ツアーの参加者を募集。選ばれた30人の移動、宿泊、食事費用を提供する。アニメの舞台になった地方都市などを紹介し、地域活性化やインバウンド観光の波及を試みる方針だ。

一方、アジア圏内では好成績を収めたものの、映画の最大市場である米国での成功は難しいのでは、と南カリフォルニア大学映画学部のエレン・セイター教授は指摘する。

海賊版や違法ストリーミングの配信の影響で「君の名は。」を含む日本アニメやアニメ映画が海外で利益を得るのは困難になってきているとセイター教授は語る。ただ、米国でもアニメ映画に贈られるアニー賞の作品賞と監督賞の候補となるなど話題になり、関心は高い。

弭間氏は「ビジネスとして『日本でこれは売れるだろうか』や『海外でこれはどう受け止められるだろうか』という概念ではなく、新海監督に『今自分が何を作りたいのか』という気持ちで作ってもらった」と語る。

「知らない者同士が、お互いに知らない場所で生きていて、もしかしたら二人は出会うかもしれない存在。現実は会えない、でも、何らかのカタチで触れ合う」(東宝資料から)物語が今作の動機と語る新海監督を見守ってきたのも弭間氏だ。「クリエーターが今何を作りたいという気持ちを大事にしたい。監督が作りたい物を形にしていく作業だった」と振り返り、それが人々の心を打つことになったのではないかと分析した。

「君の名は。」は4月7日から北米で吹き替え・字幕版共に公開される。

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