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担い手不足で民俗文化が消滅の危機 地域経済の低迷が影響、文化継承の道は

2017/02/27

平安時代の「前九年の役」の古戦場として知られる岩手県内陸部の金ケ崎町では、何世紀も受け継がれてきた「鹿踊り」を今年は見送る。61歳の主役の踊り手が背中を痛め、代わりを務める人がいないためだ。(ブルームバーグ Connor Cislo、Toru Fujioka)

201702271338_2-300x0.jpg2016年に行われた「北方鹿踊り」(岩手県金ケ崎町提供)

こうした話は金ケ崎町に限ったことではない。共同通信が1月に伝えた調査結果によれば、高齢化や人口減少を理由に20県で計60件の伝統行事が休廃止された。少子化と過疎化の進行に伴い、日本独特の文化的伝統の多くが失われつつある。

NPO日本の祭りネットワーク副理事長の苦田秀雄氏は、故郷を離れている人も祭りを理由に一時的に帰郷するといった形で日本のコミュニティーは維持されてきたと説明。祭りがなくなることはコミュニティーが消えることを意味すると述べた。

独立行政法人国立文化財機構・東京文化財研究所の無形民俗文化財研究室長を務める久保田裕道氏は、地方の伝統行事がどれだけよく継承されているかは、そのコミュニティーの健全性を反映していると指摘。地方経済が低迷すると、民俗文化は消え始めると話した。

民俗文化はコミュニティーの維持だけではなく、地元住民の困難克服にも貢献することが、2011年の東日本大震災の経験から示されていると専門家は指摘する。久保田氏によれば、震災で全てを失った人たちの多くが祭りへの参加を望んだという。

日本を訪れる観光客は最近急増しているが、東京や大阪、京都以外の場所に足を運ぶ人は多くない。鹿踊りなどの民俗舞踊が金ケ崎のような町により多くの観光客を引き付ける可能性はあるが、実際には難しい。こうしたイベントは時々開催されるだけで、ユネスコの世界遺産のように常に見学可能なわけではないためだ。

しかしこうしたコミュニティーの人々にとって、観光は最大の関心事ではないことが多い。金ケ崎町中央生涯教育センター副主幹の浅利英克氏は、より重要なのはこうした風習が人々を地域コミュニティーに結び付け、さまざまな世代の人々をつなぐことだと指摘する。

伝統の継承はさらに厳しさを増す見込みだ。金ケ崎町の人口は1万6000人弱。2025年までに約1300人減り、高齢者が人口の3分の1を占めるようになると予測されている。

「北方鹿踊り」の代表を務める後藤俊夫氏(76)は、来年の開催を諦めていないが、若者に鹿踊りに関心を持ってもらうのに苦戦している。若い人が引き継いでくれることを期待していたが、もはやそれは期待できそうにないため、自分たちが続けていくしかないと話した。

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