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国内観光資源の再開発 乃村工藝社、丹青社…空間デザイン会社が自治体と二人三脚

2017/02/13

拡大傾向にある日本国内への観光旅行。2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向け、海外からの観光客も増加をたどっている。観光客を呼び込もうと、全国各地で地域の魅力をアピールするため、さまざまな施策を打ち出している。その中で商業施設の内装や博物館、博覧会、イベントなどの展示を企画・施行している大手ディスプレー会社が全国各地で観光に近い分野の仕事も手掛けるようになっている。

地域の魅力どうつくる

201702131258_4.jpgインバウンドビジネス総合展で行われたセミナー「世界一訪れたくなる日本へ、空間から出来ること」=東京都江東区の東京ビッグサイト

ディスプレー大手の乃村工藝社(本社・東京都港区)と丹青社(本社・東京都港区)は2月2日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で行われたインバウンドビジネス総合展で「世界一訪れたくなる日本へ、空間から出来ること」と題したセミナーを開催した。セミナーでは、地域の課題解決のための魅力づくりやインバウンド(訪日外国人観光客)を呼び込むためのコンテンツづくりについて両社の取り組みが紹介された。

201702131258_5-300x0.jpg乃村工藝社のプロジェクションマッピング。最先端のディスプレイ技術で地域資源活性化を狙う

乃村工藝社は今年4月から1年間にわたって開催される「お茶の京都博」をプロデュースしている。京都府の南部で特産のお茶をアピールし、来訪者の増大や産業の振興を目指すイベントだ。同社はこのイベントをPRするため、乃村工藝社や京都府から関係者が出席して、博覧会を開く意義や、地方が観光客を誘致する上で必要なことを話した。

「お茶の京都」総合プロデューサーを務める乃村工藝社の鈴木惠千代エグゼクティブクリエイティブディレクターは、宇治茶を飲んで今までになかった味わいを感じ、「これほどまでのお茶を知らなかったのかと恥ずかしい思いをした」と語る。ペットボトルなどで身近にある日本茶だが、昔ながらに急須でいれて飲む楽しみと、その味はだんだんと置き去りにされている。「お茶の京都博覧会」では大規模なお茶会を開き、アンテナショップ的な拠点の整備も行って、宇治茶を飲むことで得た自身の感動を大勢に体感してもらうという。

セミナーには、「お茶の京都」事業を担当する京都府の本田一泰企画理事も出席。地域が自分たちで観光資源を見つけ出し、アピールして訪問客を招こうとする“内発と自走”の姿勢を訴えた。「地方自治体は人口が減って元気なくなっているのに、行政が何かやってくれる、大手企業が何かやってくれるといった外部資源だよりになる」。それでは、地域の良さが本当に生かされた観光資源の活性化は難しい。「自分たちの町をどうするかは自分たちで決める」。そうした意識を持ってもらいながら、京都府では「お茶の京都」という共通のフラッグを立て、宇治茶のプレミアム化などを通して産業の振興、観光の誘致などを進めていこうとしている。

乃村工藝社が観光資源の活用などを通じた地域の活性化で、地元自治体と提携したのが宮崎県日南市。森林が多く人口の減少や高齢化世帯の増加に悩んでいるが、2013年に当選した崎田恭平市長のもと、シャッター街と化していた商店街のリニューアルを成功させ、城下町として栄え古い家屋が残る飫肥(おび)地区でも、古民家を改装して観光客が立ち寄りたくなるような街に変えようと動き始めている。

乃村工藝社では、そうした飫肥の城下町で、文化的な建築をどう利用すれば若い人たちも含めた観光客に楽しんでもらえるかを提案していく。飫肥城の石段で行われる踊りのバックをライティングによって彩ったり、伝統文化を体験できるプログラムを提案したりと、これまでの事業で培ったプロデュース力をそこに注いでいく。
1月28日に日南市で行われた調印式でも、バックパネルを使い終わったら捨てられるだけの紙ではなく、手ぬぐいで飾って式のあとに配布した。こうした発想を各所で発揮して、飫肥城下町を古都でありながらも最先端の観光地として見てもらえるように変えていく。

一時的なブームで終わらせないために

201702131258_6-300x0.jpg丹青社では伊勢神宮など各地の伝統や資産を展示してアピールするミュージアム事業を展開

一方、丹青社も、観光客の誘致に繋がるプロジェクトへの関わりを増やしている。そのひとつに、地域の歴史遺産に対する関心を再確認させるようなミュージアムの構築がある。20年に1度、伊勢神宮で行われる式年遷宮に合わせ、外宮のそばに「式年遷宮記念せんぐう館」を企画。社殿や儀式のジオラマやなどを通して、式年遷宮を体感できるような雰囲気を作り上げた。

丹青社の招きで講演した、北海道大学観光学高等研究センター長の西山徳明教授は、世界遺産ならぬ“市民遺産”を定着させていく必要を訴えた。世界遺産に認められると、国などの支援もあって盛り上がる一方で、地域が関わりづらくなる状況も生じる。一時のブームが過ぎた後、地元の盛り上がりを欠く中で衰退を呼んでしまうことも起こりえる。

そうならないよう、地域が最初から関わって、自分たちで観光資源を作り出すような活動が求められると西山教授は訴える。「本当の遺産は、地域社会の人がその社会を感じ、経済的な恩恵を受け、濃密に形成されて時に未来に継承されていく」。その一例として、九州にある太宰府市の取り組みを挙げた。どこにでもありそうなお地蔵様を中心にして、関連する建物や伝承を拾い出し、歴史的な価値を蘇らせ、自分たちの地域の遺産として誇れるもだということを周知していった。

西山教授は「世界遺産は市民遺産にしていくべき」といった持論も示して、ボトムアップ的な観光資産の創造と継承を呼びかけた。世界遺産の登録に漏れた、あるいは誇れるものが何もないと思い沈滞している地域があれば、振り返って自分たちが誇れるものは何かあるか、それをどういったストーリーに乗せていけば興味をもってもらえるかを考えてみるのも良さそうだ。

丹青社では、出原秀仁シニアプランニングディレクターが登壇し、観光ビジネスのキーワードとして「魅力は磨き、創るもの」という言葉を挙げた。コンテンツにどのような魅力を付けていくかで、地方の町が人気の観光スポットにもなれば、歴史のある町が通り過ぎられて終わる場合もある。出原氏は「売れる串団子理論」というものを提示。「極上のコンテンツ」「極上の文化財」「極上の産品・商品」をターゲットに合わせたコンセプトで横ぐしにして、ストーリーを提案して興味を引く必要があることを訴えた。

2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて増える訪日外国人観光客や、従来にはない国内旅行を求める国内観光客に向け、観光資源をアピールする地域は今後ますます増えてくる。波に乗ろうとする新規事業者も現れそうだが、ターゲットとなるユーザーに対し、そこに行って体験する必要を感じさせるようなストーリーを提案し、訪れた人が満足できるようなプランへと昇華させられるかが、成功の鍵になりそうだ。
 

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