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ハラール市場 広がる裾野 化粧品・日用品 イスラムの購買力期待

2017/02/07

イスラム圏7カ国の市民の米国への入国を一時禁止したトランプ米大統領の大統領令に対し、世界中の大手企業から非難の声が上がっている。飲食店チェーンからファッションブランド、化学メーカーまであらゆる企業は、いまや全世界の人口の4分の1を占めるイスラム教徒の購買力を歓迎しているからだ。イスラム教の戒律にのっとって製造されていることを示す「ハラール」認証は、食品に対するものがよく知られているが、企業はマニキュアなどの化粧品やシャンプーなどの日用品にも同認証を受け、イスラム市場でのシェア獲得を狙う。(ブルームバーグ Laura Colby)

世界に信徒16億人

201702071059_1-300x0.jpg繁華街でショッピングを楽しむムスリム女性。世界人口の4分の1を占めるイスラム教徒は、企業にとって無視できない市場となっている=シンガポール・オーチャード(ブルームバーグ)

欧州のハラール認証機関の一つ「ハラール・クオリティー・コントロール」のドイツ本部責任者、アブドラ・ヒト氏は、化学メーカー大手の独BASFが西部の都市デュッセルドルフに構える工場を視察し、せっけんやシャンプー、コンディショナーの成分について責任者と話し合った。ヒト氏は、クウェート大学でイスラム教研究の博士号を取得した学者だ。

ハラール製品はアルコールや動物由来成分を原料に用いることはできず、イスラム教において不浄と見なされている物質と生産ラインを隔離する必要がある。

「私たちはメーカーが原料を仕入れる第1段階から製造の最終段階に至るまで、あらゆることを管理している。メーカーは私たちに報告せずに原料やその供給業者を変更することはできない」とヒト氏は話す。

BASFは4年前、化粧品原料に対して同社初のハラール認証を取得。現在では洗顔料や入浴剤、家庭用洗剤などに配合されるハラール認証の化学物質を145種類生産している。同社によれば最大市場はインドネシアなどのイスラム圏だが、西側諸国からの需要も増加している。

米ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、イスラム教徒の人口は約16億人と全世界のほぼ4分の1を占め、今世紀末にはキリスト教徒数を抜く見込み。英調査会社テックナビオは今年のハラール化粧品市場を270億ドル(約3兆550億円)と予測するが、2019年までに390億ドルに達するとみている。「今後、飛躍的に成長する市場だ」と、コンサルティング会社ムスリム・マーケティングのシャフィク・シャフィ社長は語る。

女性狙うユニクロ

ハラール製品は、イスラムの流儀で処理された食肉だけにとどまらず多岐にわたる。ハラルに対応したフォアグラやワイン(もちろんノンアルコールで、イスラム教が禁忌とする物質は使用していない)もある。英小売り大手ジョン・ルイスはイスラム教徒の女性が頭にかぶるスカーフ「ヒジャブ」付きの学校の制服を販売し、衣料品チェーンのユニクロもヒジャブを含むイスラム教の女性向けコレクションを販売した。

フランスのハンバーガーチェーン「クイック」は昨年、米バーガーキングをフランス国内でフランチャイズ展開するベルトランに買収されたが、イスラム系の多い地域で営業する50店舗では引き続きハラール対応メニューを提供している。

ただ、一部の企業は非イスラム教徒からの反発を恐れ、ハラール認証を取得したことを積極的に情報発信しないと、イスラム圏向けマーケティング会社の英オグルビ・ノアのシェリナ・ジャンモハメド副社長は指摘する。イスラム教徒を対象にビジネスを行っていることを、企業が宣伝しにくい社会的・政治的な風潮があるという。

動物愛護団体は、イスラム法にのっとった家畜の食肉処理方法は非人道的としてハラル対応食肉を販売する店舗や飲食店のボイコットを呼び掛けている。

全身覆う女性用水着で物議

英小売りのマークス・アンド・スペンサー(M&S)は、イスラム教徒の女性用水着「ブルキニ」を販売して一部から非難を浴びた。全身を覆うこの水着は昨夏にカンヌやニースなどフランスの一部自治体で着用が禁止されて物議を醸したが、M&Sは完売したと発表。米化粧品会社、マヤ・コスメティクスは透過性のあるマニキュアを製造している。

これは礼拝前に手などを水で清める儀式を行う際、水をはじくものを落とさなければならないとされるイスラム教徒にとって重要なことだ。同社ウェブサイトは、これがハラル製品であることだけでなく爪への負担が少ない点も強調している。

イスラム教徒向けのウェブサイトやフェイスブック上での口コミは英国や中東での売り上げ増大に貢献しているものの、「一般的な米国人は、ハラル認証を一種の汚点と見なしている」とマヤ共同創業者のジェーブド・ユーニス氏は語る。

世界最多のイスラム教人口を擁するインドネシアは、2019年までに国内の全ての飲食物やその他の消費財についてハラル認証取得を義務付ける方針だ。仏化粧品メーカーのロレアルは、現地工場で生産する同社ブランド「ガルニエ」の大半の製品は既にハラル認証を得ているとしている。

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