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イスラム教徒向け料理 認証の基準は? 団体乱立 基準の統一目指す

2017/01/21

豚肉料理やアルコールはダメ。戒律によって厳しい制限があるイスラム教徒(ムスリム)が安心して食事ができるよう、国内の飲食業界が2020年の東京五輪・パラリンピックを控えて調理師向けの講習などに力を入れている。食べていいものと悪いものの区別は意外と難しい。適切な食品は「ハラール」と呼ばれるが、イスラム圏の政府非公認の機関が勝手にハラール認証をするケースも増えている。さて、対応策は-。(木ノ下めぐみ)

酢の代用はレモン

201701201340_1-300x0.jpgイスラム教徒が口にできない食材の代用品を使って料理講習をする室田大祐さん=大阪市西区
「酒やみりんは、加熱してアルコール分を飛ばしても使えません。代わりに水あめでコクを出しました」

昨年10月中旬に大阪市内で開かれた講習会で、全国日本調理技能士会連合会の室田大祐常務理事が詳しく説明した。食材を煮る際もアルコールは使えないため、野菜のだし汁などで代用し、酢の代わりにレモンを搾るなどの工夫が必要。「料理酒や、豚肉を扱った調理器具も使えない」と、きめ細かい配慮の大切さを強調した。

講習会は、日本料理国際化協会(大阪市中央区)が主催し、一昨年から5回開かれ、全国の調理師延べ200人が参加した。イスラムの教義も学び、筆記試験をクリアすれば、マレーシア政府公認のハラール認証機関であるNPO法人「日本ハラール協会」(大阪市平野区)から「ハラール調理師」として認定される。

札幌市から参加した全日本司厨士協会札幌支部の小路弘孝さんは「調理師も知らないまま誤った処置をすることがあるので、ここで得た正しい知識を広めたい」と意欲を見せた。

国際化協会の末本庄一事務局長は「近年、メーカーがハラール対応の調味料を売り出し、ハラール肉の流通も盛ん。イスラム教徒への食のおもてなしを整備する追い風となっている」と話す。

審査基準まちまち

201701201340_2-300x0.jpg観光客誘致へ、ハラール認証を取得するメーカーや飲食店は増えているが、それに伴い、認証をめぐるトラブルも多い。イスラム圏の政府から正式に認められていない機関が、乱立状態となっているためだ。室田常務理事は「ある機関から認証を受けた関西のホテルのレストランでは、料理酒を使わないと作れないメニューが提供されていた」と指摘。飲食店の不手際とともに、認証機関に問題があるとの見方だ。

審査基準が認証機関によって異なることも、混乱に拍車をかける。ある機関から認証を得たメーカーがイスラム圏へ商品を輸出しようとしたところ、国際基準を満たしていないとして断られたという。認証を出すには、イスラムの教義をはじめ、料理や化学、企業運営など多岐にわたる知識が必要だが、知らずに認証を出すケースも多いという。

日本ハラール協会のレモン史視理事長は「認証団体を自称する組織や個人がそれぞれの基準で認証を乱発しては、日本全体の信頼を損ねる」と危機感を募らせる。

認定組織立ち上げへ

信頼確保へ、行政が乗り出すのも難しいようだ。認証基準を日本政府主導で統一するのは、政教分離の問題があるためだ。こうしたなか、イスラム圏の政府が認めた認証団体が中心となることで、新たな基準を設ける動きが進んでいる。

春には、任意団体「日本ムスリム評議会(仮称)」が設立される予定だ。国内の飲食店を対象に、「ムスリムフレンドリーレストラン認定」を策定。ハラールの食材を使用し、酒類提供の有無やイスラム教徒を雇用しているかなどをチェックして認定することを検討している。

団体関係者は「国内で一定の基準をつくることで、乱立する認証組織の審査レベルも底上げできるのではないか」と期待を寄せている。
 

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