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[連載]観光立国のフロントランナーたち 日南市 﨑田恭平市長(2)

2017/01/18
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日本のインバウンドビジネスの開拓に奔走するジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長が訪日ビジネスの最前線を進む人々を迎え、「観光立国」実現に向けた道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。海外からのクルーズ船を誘致し、訪日外国人観光客の取り込みに成功した宮崎県日南市の﨑田恭平市長の第2回は、安倍晋三首相の所信表明演説に盛り込まれた日南市のインバウンド効果について解説していただきました。クルーズ船来航が高校生たちに与えた思わぬ効果とは―。

クルーズ船来航、自分たちの街を見つめ直すきっかけに

中村 油津港にクルーズ船が来航し、これまで宮崎や鹿児島の空港だけだった海外との窓口が、日南市の真ん中にできた形になります。市民の反応はどうだったんでしょうか。

﨑田 特に子供たちへの効果も非常に大きかったですね。安倍晋三首相の所信表明演説で、日南市の油津港に4年前と比べて3倍の寄港があったことと市内にある県立日南振徳高校の生徒が外国人観光客に大使、英語で観光案内を行ったといった内容のお話をしていただきました。

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英語による観光案内は、カナダ発着のクルーズ船が寄港するので、英語の勉強の一環として行っていただきました。ただ、当初、高校の先生は、観光案内をすることで、自分たちの街を見つめ直すいい機会になるのではないかと考えられていたようです。

実際にはそれ以外にも、生徒たちとって、大きな収穫を得る貴重な経験になったようです。生徒たちがこの活動についての感想を述べる発表会を開催するということで、私も発表を聞きに行きましたが、非常に心を打たれました。

発表の中で、外国人観光客から「この街はきれいだね。世界中いろいろなところを見たけれども、こんなきれいな街は見たことがない」と褒(ほ)められたそうなんです。それを聞いて、生徒たちは「自分の街はすごいんだ」と誇りを持ったそうです。

中村 それは興味深いですね。外国人観光客の目を通して、自分たちには分からなかった街の良さが見えてきたわけですね。

﨑田 そうなんです。ある生徒は、案内している時に外国人観光客から施設の歴史について尋ねられられたそうです。ところが、その生徒は、ちゃんと説明することができなかったらしく、「あんなに自分たちの街を褒めてくれたのに説明できなかったことが悔しかった。

もっと英語を話せるようになりたい、自分の街のことを勉強したい」と考えるようになったそうなんです。また、「日南市を自分たちで誇りある街に作っていきたい」と言ってくれる生徒もいました。インバウンドが経済的な効果だけでなく、地域の誇りにもつながったのは、思わぬ効果でした。

中村 外国人と直接交流したことがない高校生たちが、自分たちが学ぶ英語を通して、自分たちの町に誇りを持つというのはすごい貴重な体験です。それが政府関係者の耳に入って、安倍首相が所信表明演説で、日南市の話をあえて話されたのですね。

﨑田  先日、石井啓一国土交通大臣が視察に来られたのですが、大臣から「ぜひ、その高校生たちと意見交換をしたい」というお話をいただき、生徒たちと意見交換をしていただきました。会の終わりが近づいて、私が「最後言い残したことありませんか」と呼びかけたら、一人の生徒が「ほくたちの街は、ぼくたちが担っていきます」って宣言をしたんです。

201701181524_2.jpgクルーズ船で来航した外国人観光客を観光案内する県立日南振徳高校の生徒。自分たちの街を見直す大きなきっかけになった

港町と城下町…世界に誇る日南市の2つの魅力

中村 頼もしい限りですね。確かに日南市には、油津を代表する漁業や貿易で栄えた港町と、飫肥(おび)藩の城下町という江戸時代から連綿と続く歴史・文化という2つの魅力を兼ね備えていますね。

﨑田  油津港は、もともと外からいろいろなものが入ってくるので、開放的で新しいものを受け入れる街です。飫肥は、保守的というと言い過ぎかもれしませんが、伝統を守る町です。気質も違っているとも言われます。

中村 飫肥城は、城内の建物こそ今はないのですが、あれだけの規模の城下町がほぼそのまま残っているのは、他に類例がないと思います。飫肥の魅力を市長はどのようにとらえ、また、どのように生かそうと考えているのですか。

﨑田  私の地元も飫肥なんです。自転車で通学しながら、当たり前のように見てきた街です。城内に当時の建物は残っていませんが、あれだけの城下町を残してくれた先人の皆さんに感謝したいですね。飫肥の振興策については、市長に就任してからずっと取り組みたいと思っていました。でも、すぐには着手できませんでした。就任3年目になってからようやく取り組むことができました。

中村 古民家の再生ですね。

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﨑田  飫肥には、古い建物がたくさんあります。これらの多くは個人が所有しています。もともと武家や商家の末裔なのですが、所有者が県外などに出ている場合も多く、「古民家を維持ができない」と言われるんです。古民家の維持にはものすごいお金がかかるんですね。

「市に寄付をしたい」という申し出もあるのですが、一戸を改修するのに数千万円、中には2~3億円かかるいう建物もあります。その費用を行政が負担するのは厳しい。資金を投入して、無料でみせるのか、入館料を取るのか…。でも、それではとても採算が合いません。そこで、民間の資本で維持・活用する取り組みを1年半ほど前から始めました。

中村 それは市長が就任されてから始められたことなのですね?

﨑田  そうです。以前に所有者から建物の寄付をいただいていて、地元の住民団体に古民家の清掃をしてもらっています。しかし、いつもきれいにしていても観光客がたまに外から眺めるくらいのものです。また、何も活用されていない建物もあります。そこで、古民家、とりわけ空き家再生による飫肥のまちづくりを推進していただく方を全国から公募しました。結果、古民家の再生のノウハウを持ち、資金も自己調達させる民間の方にお願いすることになりました。これが大きなカギになりましたね。

中村 民間の資金を活用して、古民家の再生につなげる作戦ですね。

﨑田  行政のお金を使うと、財政的に限界があります。実際に手を挙げてくる人が現れました。古民家活用の事業計画をしっかりと立てて、銀行の融資を受けて、状態のいい建物2棟を一棟貸しの旅館として再生させる計画てす。来春にはオープンする予定です。国の地域活性化ファンドと地元の銀行から半分ずつの協調融資資金調達をしてスタートされました。ほかの建物についても、このモデルで再生をしていきたいと考えています。

中村 次回は、日南市の中心市街地の街づくり戦略について、さらに詳しくおうかがいします。
 

﨑田恭平(さきた・きょうへい) 1979年日南市生まれ。九州大学工学部卒業後、宮崎県庁に入庁。地域振興や医療行政に携わった。2012年退職後、13年4月の日南市長選に無所属で立候補。初当選を果たし、全国で2番目、九州で最年少の首長となった。「できない理由ではなくできる方法を考える市役所」をモットーに市政を運営。市長就任後は民間人の登用や民間企業との連携を積極的に推進し、その行政手腕は全国から注目を集めている。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014 年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015 年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015 年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

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