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[連載]観光立国のフロントランナーたち 日南市 﨑田恭平市長(1)

2017/01/10
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日本のインバウンドビジネスの開拓に奔走するジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長が訪日ビジネスの最前線を進む人々を迎え、「観光立国」実現に向けた道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。2016年最初の対談は、海外からのクルーズ船を誘致し、訪日外国人観光客の取り込みに成功した宮崎県日南市の﨑田恭平市長をお招きしました。

日南市のクルーズ船誘致による観光振興策は、2016年9月に行われた安倍晋三首相の所信表明演説の中でも紹介され、全国的にも大きな注目を集めました。16年に2000万人を突破した訪日外国人観光客数は今後もさらに伸びることが見込まれ、訪日客をいかに地方に呼び込むかは地方創生の大きなカギを握ります。日南市の取り組みから地方に求められる観光戦略を探ります。

クルーズ船誘致で訪日客取り込みに成功

中村 日南市の油津港にはクルーズ船が数多く寄港されています。今年度はさらに伸びることが期待されます。訪日外国人観光客を取り込みたい港湾施設を持つ地方にとってはうらやましいかぎりではないでしょうか。クルーズ船の誘致に向けて、これまでどんな工夫や努力をされていたのでしょうか。

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﨑田 油津港は、以前は6万トンクラスのクルーズ船までしか接岸できない港だったのですが、もともと水深が深くて、水域も広い天然の良港だったんです。少し改良すれば大型船の接岸も可能ということが分かっていたので、一昨年度に宮崎県が16万トンクラスのクルーズ船が寄港できるよう整備しました。

クルーズ船の誘致に関しては、もちろん独自での活動も行いましたが、県や関係機関とタッグを組んで誘致活動をしっかりと行うことができたことが大きかったと思います。クルーズ船の乗客の受け入れに関しても、官民が連携し、地元に受け入れに関する協議会を組織して対応しました。おかげ様で16年は4年前の約3倍にあたる17隻が寄港しました。

中村 大型クルーズ船のような10万トン超の船舶となると、かなりの設備も必要になります。ハード面の整備に加えて、ソフト面での整備も欠かせませんが、具体的にはどういった取り組みも進めたのでしょうか。

﨑田 日南市は小さい市です。私たちだけでなく、多くの自治体と手を組んで、広域的な対応をすることが大事だと考えました。県の応援だけでなく、周辺の市町に呼びかけて、広域観光協議会を組織したんです。呼びかけに対しては日南市のほか周辺9市町の協力を得ることができました。このことで、油津港を拠点とした観光地のバリエーションを増やすことができました。

宮崎県南部広域観光協議会 日南市の油津港にクルーズ船をはじめとする訪日外国人観光客の積極的な受け入れを目指して国や県、日南市をはじめとする10市町が集まり、2015年3月に設立された。会長は﨑田・日南市長。参加している市町は日南市のほか、宮崎、都城、小林、串間、えびのの5市と三股、高原、国富、綾の4町

観光地のバリエーションを増やすのは非常に大切なことです。訪日客が船を降りて観光をするのに観光地が1カ所だけでは、すぐに飽きられてしまいます。国や県、各市町が魅力ある観光地づくりに取り組みました。そういった努力があったからこそ、クルーズ船の誘致でアピールをすることができました。

周辺市町と魅力ある観光地づくり目指す

201701101509_2-300x0-305x0.jpg中村 確かに訪日観光客の皆さんが一度の寄港で、一通り全部見て回ることができるようですと、もう一度、訪日客が来訪したくなるだけの魅力は不足してしまいますね。一度観光しただけでは見て回り切れないほどの魅力づくりとコンテンツ提供の努力が、次の訪日客の来訪につながるんですね。

﨑田 そうなんです。周辺には、まだ魅力ある観光地や素材がたくさんあります。ですので、いろいろな観光ツアーのコースをつくることができます。「あの観光地にいこう」「次は別のコースに行ってみたい」と思ってもらえる企画を提案していかなくてはなりません。

中村 広域観光協議会を組織するのにあたって、苦労した点や課題はありましたか。

﨑田 周辺の市町には黒船ならぬ、クルーズ船という“白船(しろふね)来航”のイメージが当初、あまり湧いていませんでした。日南市は港があるので、早くから研究もしていましたので、ある程度、どういうことが起きるのかという想定はありました。でも、周辺の市町からすると、「本当に来るの?」というものもあります。やって来たとしても、「どれだけの観光客が自分の町に来てくれるのか」という不安も最初はありました。でも、協議を進める中で、理解をしていただきました。

中村 8年ほど前、ドン・キホーテでインバウンドプロジェクトの責任者に就任したばかりのころだったのですが、同じような経験があります。博多港にクルーズ船が来るようになったので、訪日客を福岡市内の店舗に誘致したことがあるんです。最初、店長は「どれだけ効果があるの」「本当にきてくれるのか」と半信半疑だったのですが、実際に店にバスが来て、どっとお客さんが入店すると、商売魂に火がついたように接客をしていました。「百聞は一見に如かず」というところがありますね。

﨑田 2年くらい前にテレビのワイドショーでも「爆買い」のニュースが注目されはじめたころですが、日南市も「地方にクルーズ船が来る」ということで取り上げられるようになりました。全国から注目されるようになり、今では、ほかの市町村からは、「ぜひ連れてきてほしい」という前向きな声が聞かれるようになりました。

201701101736_2.jpg訪日客でにぎわう油津港

中村 実際に、綾町や都城市、串間市など、それぞれにクルーズ船からのバスツアーが到着すると、みなさんの目の色が変わってくるのですね。

﨑田 市から60キロほど北にある綾町は、緑豊かな照葉樹林で知られる町なのですが、そこにバスが入ると、恐縮なことに町長が「昨日はバスツアーをありがとうございました」とわざわざ電話をいただくんです。
どうしてもツアーが組みやすいので、近場の観光地に集中する現状はあるのですが、広域観光協議会として旅行会社を招いて県内の観光地を見て回ってもらう事業や広域パンフレットを作成するなど観光ツアーのレパートリーを増やす事業を展開しています。

中村 宮崎市まで延伸された東九州自動車道を日南市までつなぐ工事が始まっていますね。クルーズ船誘致への効果が期待できるのではないでしょうか。

﨑田 現在、東九州道を延伸する工事の真っ最中です。国も経済効果が見込まれない区間の延伸が難しい中で、着工していただいたことは大変うれしい限りです。国土交通省はストック効果とよく言っていますが、港と高速道路がつながることによって、外国からの観光客をより遠くの観光地に運ぶことができます。さらに大きな経済効果の波及が見込まれるのではないかと思っています。

中村 クルーズ船の寄港は日南市の子供たちにも大きな影響を与えたそうですね。次回は、どんな効果があったのかおうかがいします。

﨑田恭平(さきた・きょうへい) 1979年日南市生まれ。九州大学工学部卒業後、宮崎県庁に入庁。地域振興や医療行政に携わった。2012年退職後、13年4月の日南市長選に無所属で立候補。初当選を果たし、全国で2番目、九州で最年少の首長となった。「できない理由ではなくできる方法を考える市役所」をモットーに市政を運営。市長就任後は民間人の登用や民間企業との連携を積極的に推進し、その行政手腕は全国から注目を集めている。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014 年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015 年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015 年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

 

 

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