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食品サンプルが外国人観光客にバカ受け すし、天ぷら…リアルに再現 もう一つの〝クールジャパン〟

2017/01/06

たこ焼きに天ぷら、すしにパフェ…。本物そっくりの「食品サンプル」が、日本を訪れる外国人観光客の間でちょっとしたブームになっている。キーホルダーなどのグッズを購入するだけでなく、実際に作る体験を楽しむ人が増加。何が外国人たちを引きつけるのだろう。食品サンプルは“大阪発”のクールジャパンになり得るのか。(木村郁子)
 

201701041143_3.jpg「定食」をテーマにした食品サンプルの卒業制作。お好み焼きと焼きそばのセットは大阪らしい

プロ仕様の鍋や包丁などを扱う店が軒を連ねる道具屋筋。その中で、ひときわ外国人が出入りする店がある。店先には、こってり炙られた大きな骨付き肉の塊が-。と思いきや、これこそが食品サンプル。製造販売する「デザインポケット」の店内では、サクサクの天ぷらや、おいしそうに焼き上がったサンマや小さなキーホルダーまでずらりと並ぶ。

体験工房は、店から数分歩いたところにある。この日は、米国の観光客ら8人が集まり、約1時間かけて、すしや弁当などを作っていた。「レストランの食品サンプルは、すべて本物にプラスチックコーティングしていると思っていた」と話すのは、米・ペンシルベニア州の会社員、スコット・ガショウさん。マグロとエビのすしに挑戦し、「とても楽しい」と笑顔を浮かべた。

201701041143_4-300x0.jpg<食品サンプル作りに挑戦する外国人観光客。一番人気のすしは、インクで筋を描いてニスを塗ることでよりリアル感が出るという=大阪市中央区

デザイン・ポケット広報担当の坂本和歌子さんによると、以前は欧米からが多かったが、最近は中国やインドネシアなどアジアの人にも人気が高いという。「サンプル作りの体験は約3割が外国人です」と話す。

食品サンプル大手の「いわさき」(本社・大阪市東住吉区)によると、ろうで作られたサンプルは大正末から昭和初期にはすでに大阪で作られていたという。もともと江戸時代から、料理屋では「本日の料理」として本物を店先に置いて、店じまいになると捨てられていた。食品サンプルは、日本人が持つ「もったいない」という心から生まれたともいえる。

いわさきでは、創業者の岩崎瀧三が昭和7年、妻のアドバイスもあって寒天などで型を取り、ろうで忠実に再現したのが始まり。この年に大阪市内の百貨店の食堂に並べたところ、リアルさが評判となりたちまち全国に広まったという。

「食品サンプルはおもちゃではない」と力を込めるのが、サンプルの魅力を文化として情報発信する食品模型会社経営の志賀竜男さん。「これを食べたい、と視覚から訴えるのは日本独自の感性。たこ焼き、お好み焼きに並ぶような大阪の伝統文化。クールジャパンとしてアピールしたい」と熱く語る。

志賀さんによると、食品サンプルは、印刷技術が発達してカラフルなメニューブックが増えたことなどで、一時は業界自体が存亡の危機に見舞われた。しかし、日本食ブームや訪日外国人の土産としての需要も増え、活性化している。

デザインポケットは、将来を見据えた職人の育成にも力を注ぐ。もともと閉鎖的だったサンプル作りの技術を伝えようと、道具屋筋の店舗近くに教室を開き、約20人の生徒が学ぶ。

通常は流れ作業だが、型取りから成形、着色、焼き上げまで一貫して一人で行い、ノウハウを伝授。卒業制作では、中華料理、お好み焼きとごはんのセットなど、「定食」をテーマにした作品も手掛けている。

教室に通う古山香奈莉さんは「ミニチュアがもともと大好きなので、この職業に進みたいと思った。普段食事に行ったときも、肉の焦げ具合などをじっくり観察します。早く職人としてやっていきたい」と目を輝かせた。

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