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[連載]観光立国のフロントランナーたち 台東区 服部征夫区長(最終回)

2016/12/26
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日本のインバウンドビジネスの開拓に奔走するジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長が、訪日ビジネスの最前線を進む人々を迎え、「観光立国」実現に向けた道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。多くの観光スポットを抱える東京都台東区の服部征夫区長をゲストに迎えています。最終回は2020年東京五輪・パラリンピック開催に向けた台東区の取り組みについて聞いています。

7カ国語の言語で台東区の魅力をSNSで発信

201612261338_1-300x0.jpg中村 最後にこれからの台東区のインバウンド政策の課題とビジョンをお聞きしたいと思います。特に2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、台東区として取り組んでいる戦略についてお聞かせください。

服部 訪日外国人観光客を呼び込むため、タイやインドネシアで人気のブロガーを招待しました。インドネシアのブロガーは女優さんで1500万人のフォロワーがいるようです。浅草や上野など区内の見どころをめぐってSNSで発信してもらいました。これからいろいろな反響が出てくるのではないかと期待しています。

フェイスブックやツイッターといったSNSの影響力については以前から関心を持っており、積極的に活用しています。区では現在7カ国語のフェイスブックなどのSNSを運営しています。ただ、日本語をベースにして、それを訳して発信するのではなく、すべてネイティブの担当者がそれぞれ発信しています。

中村 7カ国それぞれの国の言葉で発信するというのは他の自治体でもそうないのではないでしょうか。

服部 ここまでの取り組みは他の自治体ではそうないと思いますね。ホームページや印刷物だけでなく、これからは積極的にSNSも活用していこうと考えています。

中村 なるほど。確かにSNSは日本にとどまらず、世界中にあっという間に広がっていきますし、インバウンド誘致という点では非常に効果は大きいですね。

服部 台東区はおかげさまで多くの外国人観光客が訪れますが、ここでお金を使っていただける観光客がどれくらいいるのかというところも着目をしています。

浅草を例に挙げると、雷門から仲見世を通って本堂にお参りをする浅草の「ゴールデンルート」がありますが、ほとんどは1~2時間ほどの滞在時間に過ぎません。回遊性をうまく確保できないため、あまりお金を使っていただけない。

201612261338_2-300x0.jpg中村 そこは大きな課題ですね。多くの観光地が抱えている悩みでもあります。その点では、どういった戦略をお考えなのでしょうか。

服部 富裕層を狙ってみようということを考えました。では、富裕層を取り込むにはどうしたらいいのか。富裕層を対象にした旅行会社は数多くありますが、まずはビジネスパーソンが宿泊するような超高級ホテルのコンシェルジュを呼んで、台東区のいろいろなスポットを紹介する取り組みを始めました。

コンシェルジュから顧客であるビジネスパーソンに伝えてもらって、区に来て消費をしてもらうという作戦です。今年からスタートして、すでに2度開催しました。終わった後にコンシェルジュのみなさんと一緒にミーティングをして、どういうところを変えたほうがいいかなどの改善点をリサーチしています。

結構、台東区のファンという方が多くて、できれば、そういう人たちのグループを作りたいと考えています。

中村 浅草の場合、浅草寺の表玄関である雷門から浅草寺まではにぎわっていますが、実は訪日客があまり立ち寄らない一本外れた通りや境内の裏手にいいお店があったりします。訪日客がどういう行動をとっているのかを分析して、そういったところにも足を延ばしてくれるような取り組みが必要だと思います。

全国の自治体では、訪日客の行動分析を行っています。先日、金沢市を訪問した際のことですが、市内の細かいスポットに調査員を配置して調査をしていました。

例えば、兼六園に行く人と帰る人に分けてアンケートを取っていたり、表示板や案内板、交通アクセスなどさまざまなことについて感じていることをヒアリングしたりしているんですね。それを次のステップに向けた改善につなげているんです。

現在、いろいろな手法を使うことで繁栄しているエリアをさらに拡大させることもできます。町の人と協力して取り組むのもいいと思います。そういう取り組みを進めていくうちにビックデーターというか、浅草のディープなデータが得られます。是非検討してみたらいかがでしょうか。

服部 区でもマーケティング調査やっていますが、一般的な内容のアンケートを書いてもらうケースが多くなっているかもしれません。もう一ひねり二ひねりして、区の成長・発展につなげていきたいと思います。

2020年に向けて台東区の産業を世界にアピール

中村 2020年には東京五輪・パラリンピックが開催されます。台東区としての取り組みをお聞かせください。

服部 台東区はものづくり産業が集積した街でもあります。例えば、靴やカバン、ファッション雑貨、ジュエリー、伝統工芸など幅広い産業が集積している区は国内にはほかにないと思っています。

2020年東京大会に向けて、台東区は「日本のショーウィンドウ」としての役割を果たしていくということで、今年7月、東京都中小企業振興公社と連携して区として初めての展示商談会「台東区産業フェア」を開催しました。東南アジアの駐日大使を招いて、台東区のものづくり技術を見ていただきましたが、2020年東京大会を機に台東区の産業を海外に発信して台東ブランドを世界に向けて発信したいと思っています。

また、文化教育プログラムも重点的に取り組んでいきたいです。残念ながら、台東区には五輪の競技場がないのですが、今の予定では、東京マラソンのコースが五輪のマラソンコースになる可能性があります。その通りに決まれば、浅草橋や雷門周辺がコースになります。そうなればいいと期待していますが、決まれば台東区にとっては唯一の競技場として位置付けられます。

五輪の開会式予定日は夏の盛りの7月24日です。台東区の花は夏の花、アサガオです。五輪の参加者をぜひアサガオでおもてなししたいですね。白いアサガオの花言葉は「固い絆」です。国と国との絆や人と人の絆、家族の絆、そういったものを大切にしながら、区民とともにおもてなしをする。そんな事業を区として進めていきたいと考えています。

五輪のコースを花でおもてなしをする。花は無敵です。誰も花を嫌いな人はいません。花は世界の共通語です。世界に通じると思います。五輪が終わっても、レガシーとして続けていきたいですね。

中村 東京五輪・パラリンピックはあくまでも通過点ですが、そのモチベーションを結集していくいいチャンスです。浅草や上野、谷中をはじめ、私も台東区は大好きな街です。ますますの発展を心より祈念申し上げます。どうもありがとうございました。(おわり)
 

服部征夫(はっとり・ゆくお) 1943年生まれ。日大法学部を卒業後、ブリヂストンタイヤ東京販売に勤務。衆院議員秘書を経て、75年台東区議会議員選挙に立候補し、初当選。区議を5期務め、87年には区議会議長に就任した。99年東京都議会議員補欠選挙に立候補し当選。5期16年にわたり都議を務めた後、2015年3月の台東区長選に立候補、初当選した。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014 年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015 年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015 年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

 

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