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[連載]観光立国のフロントランナーたち 台東区 服部征夫区長(3)

2016/12/19
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日本のインバウンドビジネスの開拓に奔走するジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長が、訪日ビジネスの最前線を進む人々を迎え、「観光立国」実現に向けた道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。多くの観光スポットを抱える東京都台東区の服部征夫区長をゲストに迎えた第3回では、東京を訪れる外国人観光客の6割が訪れる台東区の魅力について掘り下げています。

日本を身近に感じられる場所

中村 政府は国立公園など世界レベルの公園を整備するという政策を進めています。上野公園周辺の「上野の森」地域には東京都美術館や国立科学博物館、東京国立博物館など優れた施設が数多くあります。区長として上野地域全体のインバウンド戦略をどうお考えでしょうか。

服部 文化庁や東京芸術大学が中心となって2013年末に「上野『文化の杜』新構想推進会議」を設立して、世界トップレベルにある「上野の杜」の文化・芸術資源を活用し、国際的な文化交流拠点にするための基盤整備に向けた議論が進められています。

また、毎年秋には上野公園エリアにある文化施設の協力を得ながら「上野の山文化ゾーンフェスティバル」を開催しています。上野を舞台に各美術館や博物館、動物園を含めて回遊してもらおうと、各施設に入場できる「ウエルカム・パスポート」もつくられています。これがすごい評判です。

服部 今後は上野だけでなく、浅草や隣接する墨田区も巻き込んで回遊するエリアを広げていきたいと考えています。その前に、まずは上野の山の回遊性をしっかりと高めていきたいですね。先日、上野池之端にある日本画家・横山大観の旧宅と庭園を、国の史跡・名勝に指定すべきという答申が文化庁文化審議会から出されました。来年には、正式に決定すると思います。こうしたスポットも区にとって大きな財産です。

中村 外国人観光客は、日本人以上に日本を勉強している方も多くいます。そういった観光客にはたまらないスポットになりますね。

服部 横山大観画伯は、台東区の名誉区民の第1号です。名誉区民には彫刻家の平櫛田中や彫塑家の朝倉文夫、画家の杉山寧、平山郁夫先生など世界に通じる方々がいます。また、谷中にある「岡倉天心記念公園」は、美術史家の岡倉天心の旧邸宅があった場所であり、日本美術院発祥の地でもあります。区にとっては、誇らしいばかりです。

2年前のデータですが、東京に来た外国人観光客の6割は台東区を訪れています。なぜ、人気があるかというと、海外から成田空港や羽田空港に着いて、身近に日本を感じられる場所が浅草や上野、谷中にあるからだと思います。世界のどこにでもあるようなビル街ではなく、日本を身近に感じられる街が台東区です。

中村 ある意味、江戸時代の将軍家の菩提寺である寛永寺もあり、歴史的な重みも感じられるところなのでしょうね。

商店街も大きな魅力

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服部 そこを中心に国内外の観光客に回遊をしてもらい、さらに、アメヤ横丁など地元の商店街を楽しんでもらう。商店街も外国人観光客にとっては大きな魅力の一つです。

中村 文化財がある街で、しかも庶民の街とも隣接している。それが上野の魅力なんですね。

服部 上野を訪れる外国人観光客をみていると、少し前までは、30年ほど前の日本人のように団体旅行で日本を訪れるケースが多かったように見えます。最近は、団体旅行で日本に来て「今度は家族で行こう」と家族で来られている観光客が多くなっているように感じます。

中村 「観光立国フロントランナー」の第1回のゲストが、谷中にある外国人に人気の旅館「澤の屋」の館主の澤功さんでした。服部区長のお話を聞いて、なぜ外国人観光客に人気なのか、つながるところがありますね。

服部 私も谷中に住んでいるので、澤さんとは、いろいろお話をする機会があります。澤の屋さんに泊まりに来る外国人の宿泊客は、滞在日数が長いそうです。ここを拠点にして、京都や鎌倉などに日帰りで観光して、また、戻ってくる。京都などは宿泊料金が高かったり、予約が取れなかったりしますからね。また、家族連れの宿泊客が多いそうです。しかも、プラチナカードを持っているようなセレブの方も多い。

中村 すごく豊かなんですよね。

服部 また、町内会とも一体となっていて、宿泊客をおもてなししています。町内会で行われる餅つき大会に参加できて、昔ながらの日本の生活を体験することができます。

おススメスポットは「谷中」

201612191259_2-300x0.jpg中村 街の絆が残っているんですね。では、最後に区長おすすめのスポットをうかがおうかと思うのですが。

服部 やはり、谷中ですね。「日本」がある街、台東区の中で、特に谷中はすばらしい。風情のある寺が多く、緑も豊かです。都会から消えつつある路地裏も残っています。

中村 江戸時代の古地図をみると、浅草から上野までずっと寺町ですね。

服部 谷中に住む古老に言わせれば、徳川家康は新参者だそうです。駿府(現静岡県)から江戸に入府したのは1590年。今から400年ほど前ですが、谷中には500年、600年以上前のお寺や神社があります。その時代から代々居を構えている方も多く、過去帳も残っているんですね。また、多くの文人を輩出した街です。さきほどお話した岡倉天心もそうですが、幸田露伴や北原白秋など多くの芸術家が住んでいました。

40年ほど前には、交通の便が悪いと指摘を受けることもありましたが、今や「谷根千」(谷中、根津、千駄木エリアの略称)と呼ばれるようになり、都内の注目スポットになった。これは区が中心に取り組んだわけではなく、地元の商店会や町内会が立ち上げていったものです。

中村 主体性のある街づくりができているんですね。日本の文化に裏打ちされた主体性が台東区を支えているんですね。では、次回は2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、将来の台東区のインバウンドに向けた取り組みについておうかがいします。

服部征夫(はっとり・ゆくお) 1943年生まれ。日大法学部を卒業後、ブリヂストンタイヤ東京販売に勤務。衆院議員秘書を経て、75年台東区議会議員選挙に立候補し、初当選。区議を5期務め、87年には区議会議長に就任した。99年東京都議会議員補欠選挙に立候補し当選。5期16年にわたり都議を務めた後、2015年3月の台東区長選に立候補、初当選した。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014 年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015 年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015 年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

 

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