Logo sec

レンタル着物の年間パスポート 浅草愛和服の挑戦

2016/08/08
201606141700_1.jpg東京・浅草ですっかりおなじみになった訪日客らの和服姿(浅草愛和服提供)

和服姿の女性がそぞろ歩く姿は、東京を代表する観光地、浅草でおなじみの景色になった。近づけば交わされているのが日本語ではないことにも、もう驚かない。大半が訪日観光客である彼女らが身につけているのは、レンタル着物。訪日客の増加ぶりそのままに浅草では、レンタル着物を扱う店が増え続けている。

今回は、そんな中、あえて日本人のリピート客獲得にも目を向けた、アイワフク(本社・東京都台東区)の取り組みを紹介する。

  • 東京・浅草はレンタル着物店が増え続けている
    その前に。浅草エリアにはいくつのレンタル着物店があるのか。
    「わかりませんねえ」
    電話で問い合わせると率直に答えたのは浅草観光連盟。
    「最近じゃ、私たちでさえ『ここ、昨日までレンタル着物店はなかったのに』と思うことがしょっちゅう」と、その勢いを語る。
    雷門の向かいに建つ台東区の観光案内所「浅草文化観光センター」で尋ねたら、すかさず「レンタル着物店」と題したお手製の地図が出てきたのは、さすが観光案内の拠点。
    地図に記載されているレンタル着物店は13店舗。「情報は随時更新して、作り直しています」
    思いあたってインターネット検索もしてみたら、あっさり出てきた。表示結果はざっと数えて17だから、観光センターの地図が作られた時点より、さらに増えている。 検索に引っかからなかった店もあるかもしれないと考えれば、浅草界隈では20店舗近いレンタル着物店がしのぎを削っていそうだ。

「和の時代が来るぞ」 67歳の起業

201606141730_4-300x0.jpg「浅草愛和服の店舗前に集合した訪日客ら(浅草愛和服提供)

「昨年、私が出店したとき、浅草にあったレンタル着物店は10店舗ぐらい。元々呉服屋さんでらしたところが、業態を変えられたりという感じでしたか」

江戸通り沿いの雑居ビル1階にある店舗は、開け放したドアを通って夕暮れの隅田川から心地良い風が吹き込んでくる。

アイワフクの畑和男(はた・かずお)社長(68)が展開するレンタル着物の「浅草愛和服」の2号店だ。同じビルに3号店も入っている。ともに今年4月に開いたばかり。

1号店は2015年4月に同じ江戸通り沿いの、浅草寺東参道脇の雑居ビル2階に開いた。前年14年の訪日客数が、過去最高の1,341万人になったと騒がれたころ。階段は比較的急だが、大勢の訪日客がここを上り、1年後に3号店を出すに至った。

大 手呉服店から経営コンサルタントの会社に転じ、着物店経営の指南経験もある畑社長だが、サラリーマンとして定年を迎えて一旦は北海道の実家に戻っていた。 が、勤務していたコンサル会社の社長の「これから和の時代が来るぞ」という言葉をヒントに、レンタル着物のビジネスに着目。67歳で起業した。

「着付け師の女性は70歳になっても元気に働いていることを呉服店勤務時代に知りました。元気に働き続けている人は若々しい。私も働いていた方が元気でいられると思いましてね」と笑う髪は黒々として、なるほど実際若々しい。

台湾からの訪日客をメーンに対象を絞る

起業前にレンタル着物の研究のため"本場"京都に飛んで、外国人旅行者がレンタルする姿を目の当たりにした。

日本人ではなく訪日客に狙いを絞ることにした。店を出す場所は「縁もゆかりもなかった」が、浅草に決めた。ここなら、京都よりもずっと手軽に和の雰囲気を楽しめる。

そうと決めたら今度は、浅草のレンタル着物店を研究した。月に600人前後が利用する店を観察すると、大半の客が中国語を話していた。

検討を重ねた末に、中国系の訪日客の中でも、台湾からの旅行者をメーンのお客とすることにした。

201606141730_5-600x0.jpg

集客は台湾人目線で

台湾からの訪日客をメーンに据えたことで、集客方法が絞り込めた。畑社長がまず着手したは次の2点。

  1. ワーキングホリデーで日本に来ている台湾の若者にスタッフとして店頭で働いてもらう
  2. 日本に来る前にレンタルを予約してもらうための自社サイト及びPR用のfacebookページを繁体字と英語で作る

畑社長にとって運が良かったのは、着付け師として入社してきた淺田瑞子(みずこ)さん(37)がIT企業からの転職だったこと。「着付け師として長く働きたい」とあえてITの世界から脱してきた淺田さんだったが、着付け師とウェブ担当の二足のわらじをはいてもらった。

そして台湾や香港から日本に来ているスタッフらの"常識"が、淺田さんをおおいに助けた。

例えば日本で着物をレンタルしたい台湾人が、どのようなキーワードでインターネット検索をするかを教わった。それに基づいた施策のおかげで、店のサイトに台湾人を誘導できるのだという。

とはいえ、「1号店の開店初日の予約はゼロでした」と畑社長は笑いながら振り返る。その1号店は、今では月に1,500人の予約が入っている。

利用者拡大へ日本人囲い込みも

しかし、ここへ来て畑社長は方針の大転換を図る。

続々と増えるライバル店。し烈な競争を生き残るため、利用者の層を広げたい。そこで、日本人にもっと利用してもらおうというのだ。できれば、訪日客には期待しづらい、リピーターとして。

実は2015年7月の「隅田川花火大会」以来、日本人の利用者が増え始めた。今年の花火大会も大盛況だった。

「平日は7割が訪日客ですが、土日は日本人客と半々ぐらいになっています」と畑社長。

そこで、広報担当でもある淺田さんが考案したのが、”業界初”と銘打った「着物レンタル年間パスポート」だ。

201608021058_1.jpg1万2,800円。4回利用すれば元が取れる値段設定にしたのは、少なくとも四季を通じて利用してもらえたらという思いから。もちろん「季節にこだわらず、さまざまな色の着物を頻繁に楽しんでいただけたら」と淺田さん。

4月27日(水)の販売開始以来45枚売れている。

「今後も台湾、香港に加えてタイ、ベトナムを含めたアジア圏からのお客さまが軸なのは変わりませんが、日本の女性たちも華やかな着物をレンタルしに足を運ぶようになっています。そんな浅草の、マーケットとしての可能性は無限だと思うのです」

「謝謝」「ありがとう」。夕方の店頭は、着物を返して店を後にする訪日客らの言葉で満たされる。だれもが笑顔だ。

201606141751_1-600x0.jpg「愛と感動をプレゼントしようが、この店のテーマです」と話す畑社長は、必ず店の前で記念撮影した写真をプリントアウトしてお客に渡す。この写真を彼女たちが知人らに見せるのが有効なPRにもなる
  • ポイント

  • 対象を台湾からの訪日客に絞り込んで始めた
  • その結果、いわゆるネイティブ視点を取り入れた集客策が立てられた
  • 台湾の訪日客は店のfacebookへの写真掲載に抵抗がなく店の情報拡散におおいにプラスになった
  • 繰り返し利用を期待した日本人客獲得にも乗り出している
アイワフク株式会社
本拠地 東京都台東区花川戸1-11-4 NWビル1F 03(6231)7554
1号店 東京都台東区花川戸1-13-12 タニヘイビル2F 03(6231)6658
2号店 東京都台東区花川戸1-11-4 NWビル2F 03(6231)7554
3号店 東京都台東区花川戸1-11-4 NWビル3F 03(6231)7554


あわせて読む

「浅草」の記事をもっと見る

伝統文化

もっと見る
「伝統文化」の記事をもっと見る

体験観光

もっと見る
「体験観光」の記事をもっと見る