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審議入りできないカジノ法案 政治は「カジノ=悪」の固定観念から脱却を 高橋昌之

2016/11/28

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)が、審議入りできる状況にありながら審議入りできずにいます。与党が審議入りを求めているのに対し、野党の民進、共産両党が応じていないためです。背景には「カジノという賭博を新たに認めれば社会に悪影響を及ぼす」という固定観念にとらわれている議員が、与野党ともにまだかなりいるということがあります。

しかし、私は2020年の東京五輪後もにらんで、成長戦略のひとつとして日本の観光立国を進めるためには、IRの整備とそれに必要なカジノの合法化が欠かせないと考えています。今回はIRへの理解を深めていただくべく、それをテーマに書きたいと思います。

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※ニューヨークのカジノ施設でスロットマシンに興じる観光客(AP)

まず、IRとはホテル、レストラン、ショッピングゾーン、国際会議場・展示場、劇場、スポーツ施設、遊園地などが一体となった施設で、その内部でのみカジノを認めようというものです。カジノがなぜ必要なのか、一言で言えばカネを賭けてゲームをすることが好きな人が多いからです。現に世界でも米国・ラスベガスや中国・マカオ、シンガポールなどがカジノを含むIRによって成功しています。カジノはIRの魅力を高め、集客に大きく貢献しているわけです。

カジノは現在、約140カ国で合法化されており、多くの国で外国人観光客を誘致するツールとして機能しています。外国人観光客は訪れた国にカネを落としてくれる、すなわちそこから消費、雇用が生まれるわけですから、これ以上の直接的な成長戦略はありません。その国際競争から日本はすでに大きく出遅れているのです。

日本を訪れる外国人観光客の数はここ数年、急増しており、今年はすでに2000万人を突破しました。日本という国の魅力が評価されているからにほかなりませんが、この流れを維持し、政府が掲げる平成32(2020)年に4000万人、42(2030)年に6000万人という目標を達成するには、さらなる魅力としてのIRの整備、すなわちカジノの合法化が必要だと私は考えます。

一方、カジノを合法化することに対しては「ギャンブル依存症になる人が増えるのではないか」「反社会的勢力が関与するのではないか」という懸念があることも十分、承知しています。しかし、これらはカジノの合法化を否定する決定的な理由にはなりません。なぜなら、カジノの合法化に大きなメリットがある以上、そうした懸念を払拭するための対策をとればいいからです。

その対策をとることを明記しているのが、国会に提出されているカジノ法案です。そのことがまだ理解されていないように思いますので、ここで法案の概要を改めて説明したいと思います。

法案はまずIRについて「カジノ施設および会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設」と規定しています。つまり、カジノ施設の建設を単体で認めるものではないということです。

また、IRを建設する地域は「地方公共団体の申請に基づき国の認定を受ける」ことになっています。したがって、カジノはパチンコ店のように全国の至る所に作られるわけではありません。あくまで国が認めた地方公共団体の特定地域に作られるのです。そして、その数は当面2~3カ所、段階的に最大10カ所に限定することが想定されています。

さらに、カジノの運営には民間事業者があたりますが、法案では秩序の維持と安全の確保の観点から、内閣府の外局に設置される「カジノ管理委員会」から厳しい規制を受けることになっています。そのうえで、政府に対しては(1)ゲームの公平性の確保(2)暴力団員その他不適当な者の排除(3)犯罪の発生の予防(4)青少年の保護(5)(ギャンブル依存症など)カジノによる悪影響を受けることの防止-などについて、必要な措置を講ずるよう定めています。

このように、法案は政府がカジノを厳格に管理、規制するとともに、懸念される「ギャンブル依存症になる人の増加」や「反社会的勢力の関与」などに対して対策をとることを義務づけているわけです。

一方、国と地方公共団体はカジノの運営者から「納付金」を徴収することも定めており、これが次なる観光や地域の発展の原資になることも期待されます。

今回の法案はあくまで「推進法案」であり、法案が成立すれば、政府は「実施するための法案」を1年以内をめどに策定し、国会に提出することになります。そこに懸念される問題への具体的な対策などが詳細に盛り込まれ、カジノは初めて実現することになります。

つまり、今回の法案はカジノに対して厳格な管理、規制を行い、懸念される問題への対策をとることを前提として、カジノを含むIRを日本のさらなる観光立国の「起爆剤」として採用するかどうか、について判断を問うているわけです。

「カジノを認めるといろいろな問題が生じる可能性がある」という漠然とした固定観念にとらわれ続けて、何もしないことは簡単です。しかし、カジノを含むIRが日本の観光を飛躍的に発展させる可能性を秘めている以上、懸念される問題をいかに払拭し、より有効な施策を講じるのが「知恵」というものです。

その知恵を生み出すのは、まさに政治の役割です。法案の内容も知らず、あるいは理解せず、固定観念にとらわれて、審議さえもしないというのは責任放棄にほかなりません。

法案は平成25年に議員立法で提出され、26年に衆院で審議入りしたものの、同年の衆院解散で廃案となり、27年に再提出され、今日に至ります。いつまで放置し続けるつもりなのでしょうか。

日本を訪れる外国人観光客の数は恐らく、東京五輪が行われる2020年にピークを迎え、その後も増加を図る決定的な施策は今のところありません。カジノ法案が成立しても、実施法を成立させ、カジノを含むIRの仕組みを構築し、施設を整備することなどを考えると、少なくとも5年はかかります。そう考えると、仮に今国会で法案が成立したとしても遅いぐらいです。

政治はもういい加減に固定観念を捨てて、この法案に真摯に向き合い、本格的な議論を行って結論を出すべきです。

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