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[連載]観光立国のフロントランナーたち 百戦錬磨 上山康博社長(2) 

2016/11/14
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10代から関わりが深かった旅行ビジネス

中村 この会社を創業しようと考えた道のりを聞きたいのですが。

上山 民泊という事業領域をやろうと考えたのは前職の楽天トラベル(以下、楽天)の時です。現在の旅行業界にかなり深く関わるようになったことが大きいですね。その前は、情報通信系の会社にいたんですが、楽天からのお誘いがあり、旅行のビジネスに関わることになりました。でも、もっと以前から観光旅行業との関わりはあったんです。それが原点になるかもしれませんね。

中村 そもそも旅行の分野に興味を持った原点は

上山 高校時代に添乗員のアルバイトをしたことがあったんです。夏休みの時に「人手が足りない」と、声がかかってお手伝いしたんですが、それが原点です。

中村 そうなんですか。そこで感じるものがあって今に至った。

201611112030_1-450x0.jpg上山 その時に旅行業界って何て非合理的なビジネスなんだって、感じてしまったんですね。人海戦術のビジネスで、このままでは儲からなくなる時代が来るかもしれないと思いました。
人が多く関与するビジネスは、「足し算」と「引き算」の計算になってしまう。これでは、スケールが大きくなりにくい。「かけ算」の考え方が足りないと思ったんです。

私個人のビジネスのそのものの原点をいうと、大阪の商店街のど真ん中で育った点ですかね。小学校時代には、親類のたばこ店の手伝いをしたり、親に商店街で歳末セールの露店の店番をさせられたりしましたからね。

中村 ビジネスのノウハウは、もう若いころから身につけられていたんですね。

上山 私が初めて会社を作ったのは18歳の時です。書店で会社設立の本を読みながら会社を作りました。知り合いから出資金を集めて、自分で公証人役場に行きました。その会社では、アイドル歌謡の新曲を聞きたい人たちのために新曲をまとめたカセットテープを作成したのです。

東京に行って、レコード会社を回って、新曲のサンプルを集め、カセットと本をセットにしたものを大手の書店に直接持ち込んで売ってもらっていました。その後もいくつかの事業を手がけましたが、論理や理屈は後からついてきました。

本は結構、読みましたが、あの商売のやり方はこういうことだったのかと体系的な知識はすべて後からです。とりあえず「やってみれば分かるだろう」とチャレンジしてきました。

中村 まさに百戦錬磨ですね。

上山 まあ…(笑い)。でもやってみないと分からないじゃないですか。大きな失敗もするかもしれないですが、めげずにいろいろやっていくことが大事だと思います。
 

インターネットとの出合いが生んだニュービジネス

201611112030_2-450x0.jpg中村 大阪の商人気質や旅行業などの経験が化学反応を起こして、今がある。

上山 でも、一番の化学反応を起こしたのは、結果的にはインターネットですね。インターネットの出現によって、今まで大して儲からなかったことがすごく儲かるビジネスになったという例はいっぱいあります。

私が展開しているシェアリングエコノミーとか、民泊も、別にイノベーションでも何でもない。普通に考えれば、インターネットをベースにした技術が発展し、広がることによって誰でもできるビジネスなんです。

後は、やりきるかどうかという問題とリスクテークできるかどうかの問題です。こういったことをうまくパッケージ化して、マーケティングに変えるのがうまいのが米国の人たちですよね。でも、本質的には昔からある概念を今の技術でやっていることなのではないかな。

中村 すると、楽天に転職される前の情報通信会社での経験も大きかったのですね。

上山 情報通信系の開発会社の役員をしていましたが、IT(情報技術)を学ばせてもらいました。その視点からいうと、確かに既存のオールドビジネスにインターネットというフィルターをかけると、いろいろな掛け算はできると思っていました。そこでたまたま、楽天から声をかけてもらった。

中村 楽天では、どんなお仕事を

上山 5年ほど在籍し、新規サービス・事業を立ち上げるセクションにいました。当初はJRさんや航空会社さんとの提携や新サービスを作るのがメーンでしたが、その後は、地域振興や地方の観光をどう振興させるのかということに取り組みました。

いかに地域に宿泊人数を純増させるるか。それがてっとり早くてわかりやすい地域振興につながります。そう考えて、年間130カ所くらいの地域と方々と「こうやれば人が来るよね」といったネタを考えてきました。そして、部下をスペシャリストに養成しました。

当時、部下に言っていたのは、やっている感だけの運動論ではなく、まず、しっかり目標を作るということです。定性的でなく、定量的な目標を作成して、どういったKPI(業績評価目標)で達成するかを、自治体や観光協会の人たちと協議して決めて、その成果を出すために「こういうことをしましょう」と事業を進めていった。その中で、地域の人とつながるところも増えてきて、その流れが私たちの民泊にもつながったんです。
 

中村 なるほどそうですか。

上山 例えば、地方で花火大会や大きな祭りがあります。青森のねぶた祭りでは300万人が集まり、徳島の阿波踊りで百数十万人が集まるとします。しかし、市内に泊まれるキャパシティは、1万人とか、1万5000人くらいなんです。ということは、数百万人は絶対泊まれない。

すばらしいコンテンツがあって、観光客が集まっても、「宿泊」という経済的果実がとれない。これはもったいない。では、どうするか。そのイベントの期間中は民家に泊まってもいいという形にした方がいいのではないか。それが民泊のメリットの一つです。

中村 では、次回は、最近の民泊解禁の動きについて、お話をおうかがいします。
 

日本のインバウンドビジネスを切り開いてきたひとり、ジャパンインバウンドソリューションズの中村好明代表取締役社長が聞き手となり、訪日ビジネスの最前線を走る人々を迎え、「観光立国」日本に向けて、いま何が大切かを探る対談連載。題して「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。第2回はマンション・古民家などの空き部屋を宿泊施設として活用する民泊支援事業を展開する百戦錬磨(本社・仙台市)の上山康博社長をゲストに迎えました。

「民泊」に対する規制が緩和され、国家戦略特区に指定された東京や大阪での運用がスタートしました。これまで違法な形で行われ、トラブルも少なくなかった民泊はなぜこれからの日本に必要なのか。そして、適正に運営するためにはどうすべきなのか。日本での民泊ビジネスの将来を探ります。今回はその2回目です。1回目はこちら

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