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現地のニーズとらえたインバウンド誘致戦略が不可欠 ベクトル台湾・木下総経理に聞く

2016/11/08

中国を中心にした訪日外国人観光客(インバウンド)による爆買いが今年春以降、急速にしぼんできている。円高の進行や中国当局による海外輸入品への関税引き上げなどが背景にあるが、急激な市場の変化に多くの企業が戸惑いをみせている。総合PR会社、ベクトル(本社・東京都港区)は2007年からアジアでの日本企業のPR活動を支援する事業を展開。現地の訪日需要の動向をウオッチしている。ポスト爆買い後のインバウンド需要の狙い目は何か。同社の台湾現地法人、台湾ベクトル(本社・台北)の木下研生総経理に話を聞いた。

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ポスト爆買い…次のターゲットは台湾

――中国の「爆買い」が一服しましたが、企業のインバウンド需要取り込みの動きはどうですか。

私たちの海外でのビジネス活動は、主に取引先のニーズに応じた現地でのインバウンド需要の調査や誘致、日系企業の台湾でのPRです。日本企業のインバウンド関連の問い合わせが増えてきたのは昨年の夏から秋ごろからです。

ちょうどそのころから円の価値が下がってきて、春節で多くの中国人観光客が日本を訪れ、「爆買い」というキーワードが出てきました。企業や自治体もインバウンド向けの予算を計上するようになりました。

でも、今年4月ごろに爆買いはピークを迎え、企業の動きも今は一段落しているような状況です。このため、実際に取り組んでみて成果が上がらなかった企業の中には撤退したり、様子見に転じたりしています。ただ、今後の安定的に取引は伸びるとみています。

201611081319_1.jpg※木下研生総経理

 ベクトルは現在、中国の北京・上海のほか、香港、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポールの7カ国・地域に拠点を設け、海外事業を展開している。日本国内の少子高齢化を背景に日本企業の海外展開が加速すると予測。現地メディアとのネットワークを構築し、日本企業のマーケティング、PR活動を支援している

――「爆買い」がしぼみ、企業も方向感を失っているようにもみえますが、今後のインバウンド需要をどのようにみていますか?

基本的に中国人は買い物好きですから、まったく売れなくなることはないということはないと思います。「爆買い」の当時は家電製品を中心にとにかく「何でも買う」という感じでしたが、おそらく、家電製品のニーズは一巡したのではないでしょうか。中国には中国人なりの文脈みたいなものがあって、買い物をしていました。その点でいうと、今後は、中国の生活のニーズに合った製品が売れていくと思います。そういったニーズを企業側がうまくくみ取れるかがポイントでしょう。

――爆買いが沈静化した後のインバウンド誘致で押さえておくべきポイントはどこですか

日本企業が注目しているのは台湾ですね。中国の場合、政治的なリスクがあり、日中間に何かが起こった時、ビザが急に下りなくなることもある。でも、台湾は安定してますからね。日本は近いですし、LCC(格安航空会社)も充実していて、とても行きやすい国です。中国のような爆買いはしませんが、何度も日本を観光する人が多く、安定して買い物をしています。日本に関心のある台湾の消費者向けに日本で買い物をしたくなるようなアプローチをすることが大切です。

若者に根付く「文青」カルチャー

201611091220_1-200x0.jpg文青カルチャーの発信源となっている「誠品書店」の店内

――具体的には、どういったところでしょうか?

台湾の消費者の好みやスタイル、流行を押さえつつ、企業や自治体のアピールしたい点を台湾の消費者の文脈に合わせて表現することです。ご存じでしょうか。20~30代の若者の間には、「文青(ぶんちん)」というライフスタイルが確立されています。もう一つ、韓流ブームもあります。「韓流」は、日本の「カワイイ」とは対照的に「セクシー」です。コスメですと、低価格帯の商品が人気です。

――「文青」というのは?

文青というのは、中国語で文芸青年と言う言葉の略語で、文学や芸術が好きな若者という意味です。台湾に誠品書店という書店があるのですが、商業施設になっていて百貨店みたいな感じで、台湾の文青カルチャーの発信源になっています。

201611101102_1-250x0.jpg文青スタイルの青年

カフェにしても、レトロな雰囲気を好みます。日本にも好意を持っていますね。そんな文青の若者が好きな旅の仕方、「韓流」のちょっと今っぽい女の子たちをひきつける商品展開をアピールしていく。どちらの層をターゲットにしていくかでもマーケティングの戦略は変わってきます。

また、関心やニーズは常に変化しますから、そういった点は常に現地にいないとわからない点もあります。

――最近の台湾の消費者は日本のどんなところに関心を持っているのでしょう。

さきほども話ましたが、台湾の方々は、日本に行ったことがある人が多い。浅草や京都といったメーンの観光地にはすでに足を運んでいます。むしろ、もっと地方にってみたい、都会でも日本人の日常生活に近い体験がしたい、そんな欲求が強くなっていますね。

キーワードは「ディープな日本」「体験型」

――ディープな東京、誰も行かない知らない地方をみてみたいということですね。

台湾の方々は冒険心が強い。なので、地方であれば、北海道や東北は狙い目です。文化体験とか、地方での農業体験、そばづくりといった体験型の観光もそうです。キャンプやバーベキューもいいですね。台湾では、一時、ピクニックがブームでした。

そういう意味で、日本はまだまだ台湾のニーズを取り込めていない面があります。地方自治体や企業のPRも、もともと持っているものをそのまま発信するパターンが少なくないです。

ですが、台湾の文脈に合わせてメッセージを合わせていく。そこの視点が忘れてはいけません。

――現地にアピールする上で、ベクトルの強味はどういったところなのでしょう。

日本のPR会社の中では、先かげとなって、台湾をはじめアジア各国に拠点を設けて、常にマーケットをウオッチしています。PR会社なので、雑誌やテレビなど現地のメディアとのリレーションもしっかりしており、現地の消費者のニーズを的確にとらえたPR展開ができます。

木下研生(きのした・けんせい)2006年、名古屋外国語大学卒。リクルートなどを経て、2011年ベクトル入社。ベクトル北京を経て、2015年ベクトル台湾総経理として赴任。台湾や中国を中心に日本企業の現地でのインバウンド戦略や現地でのPR活動の支援を行っている。静岡県出身。

(提供 台湾ベクトル)
 

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