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[連載]観光立国のフロントランナーたち 百戦錬磨 上山康博社長(1) 

2016/11/07
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日本のインバウンドビジネスの開拓に奔走するジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長が訪日ビジネスの最前線を進む人々を迎え、「観光立国」実現に向けた道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。第2回は、マンション・古民家などの空き部屋を宿泊施設として活用する民泊支援事業を展開する百戦錬磨(本社・仙台市)の上山康博社長をゲストに迎えました。

「民泊」に対する規制が緩和され、国家戦略特区に指定された東京や大阪での運用がスタートしました。これまで違法な形で行われ、トラブルも少なくなかった民泊はなぜこれからの日本に必要なのか。そして、適正に運営するためにはどうすべきなのか。日本での民泊ビジネスの将来を探ります。

「百戦にチャレンジ」決意の社名

201611042009_1-300x0.jpg中村 「百戦練磨」という会社名はインパクトがあります。社名にはどんな意味が込められているのですか?

上山 「百戦錬磨の人間がたくさん集まっているの?」なんて勘違いされますが、「百戦する」という決意表明でつけた社名なんです。1戦、2戦やって成功してもそこでとどまることなく、必ず3戦、4戦、10戦、100戦とチャレンジする。そんな意味が込められています。その意味では、練磨されるのですが。まあ、安定であったり、企業に人生をゆだねたりするような人にとっては、あまりいい会社ではないかもしれませんが、「こうしたい」という仮説を持って「それを実証したい」と考えている人にはやりがいのある会社です。

中村 今の主要なビジネスモデルはなんですか。

上山 「STAY JAPAN(ステイジャパン)」という民泊仲介サイトの運営です。インバウンド急増による宿泊不足と空き家問題の解消を目的に合法の民泊物件のみを扱っています。民泊は元来、旅館業法で規制されていますが、国の規制緩和で、国家戦略特区内での実施が認められました。国家戦略特区法や各特区内の条例などで定められた認定基準を満たした物件など合法で運用されている民泊物件のみとなっているところが特徴です。そのほか、地方の古民家や農林漁家体験民宿なども取り扱っており、地方創生への貢献を目指しています。

中村 未来の投資になると思いますが、事業は順調ですか? 

上山 まだまだですね。こういったオンライン上の旅行業を展開する「OTA」ビジネスが成功する重要なポイントは、サイトにある一定の数を超える集積性と網羅性が必要です。それがないと相乗効果が生まれない。その点でいうと、ぼくらはまだ損益分岐点には達していない。目標は見えていますが、これからです。国や自治体の進める公認民泊の拡大により、国内外の利用者が安心安全に利用できるサービスにすること。難しい課題も多いですが、社員一丸で真正面から取り組んでいきます。

「民泊」に商機を見い出す

201611042009_2-300x0.jpg中村 民泊ビジネスを手掛けるようになったのはどうしてですか?

上山 この会社を設立する前に楽天トラベルの執行役員として新規事業の開拓に携わっていました。前半は鉄道会社や航空会社と提携したり、新サービスを開発したり。後半になると、地方の観光振興に取り組みました。その流れの中で地域の人とつながるところも増えてきて、私たちの民泊事業につながったんです。

中村 楽天トラベルでの経験が生きたわけですね。でも、楽天トラベルでやらずに自ら起業されたのはなぜですか?

上山 はい。楽天トラベルは、オンライン上の旅行業(OTA)ですが、働いていてOTAの先を考えるようになりました。そうすると、たくさんの仮説が出てくる。でも、それを楽天の中でやろうとしても、楽天は今のモデルで十分にビジネスが成り立っている。それで自分で会社を立ち上げることにしたんです。

独立して何をするかですが、みんなが絶対に儲からないということは、絶対にやってやろうと考えていました。儲かることはすでに先行でやっている人がたくさんいますからね。誰も掘っていないところ、もしくは、みんなに捨てられたところをやろう。その中で選んだのが民泊分野だったんです。

中村 当時は、日本で民泊という考えは一般的ではなかった。

上山 今でこそ民泊が注目されるようになり、米国の民泊仲介サイトのエアビーアンドビー(Airbnb)が知られるようになりましたが、昔は、田舎の農家や漁師の家にホームステイやホームシェアするようなものが日本でいうところの民泊でした。それで、まずそこから取り組みました。

そういったグリーンツーリズムをオンライン化して、そのグリーンツーリズムを核にして、地域の古民家や文化財などを地域の方々に管理・運営してもらう形で新しい宿泊のスタイル、新しい旅行のスタイルを作ったのが最初です。

一方で、エアビー社がやっていたシェアリング・エコノミー(ネットを通じて、モノやサービスを個人間で貸し借りしたりする生活スタイル)も知っていました。当時は、米国でさえ、「こんなの使う奴がいるのか」と言われていましたけれど、私は使えると思っていました。

急激に拡大するヤミ民泊「ルールづくりが必要」

中村 現在は、そうした農家や漁師の民泊に加えて、都市をベースにした民泊にもスポットライトが当たっていますね。そして、民泊に関する規制緩和に向けて、政府や社会への働きかけにも力を入れています。

上山 はい。当時、グリーンツーリズムから始めたのは、今の日本に関しては、それしかできないというところも理由の一つです。都市型の民泊は現在のルールではできない。ルールを守れば、都市型民泊はありえない。なので、そこでまず、できるところから攻めました。並行して都市型民泊をどうやって実現するか。いろいろ考えましたよ。でも、少なくとも日本の現行の法律ではやっていけないとある。

しかし、世界の中で都市型の民泊は急激に拡大している。3~4年前には、エアビーアンドビーも日本に参入し、違法に宿泊させるヤミ民泊をやる人たちが急激に増えていました。ヤミのビジネスがすごくもうかるところを目のあたりにしていました。

これではいけません。やるならちゃんとルールを作ってやろう。いけないことは「やるな」と国が指導すべきです。その上で、「やるならこういう風にやろう」とルールを作るべきと国に訴えたんです。

中村 わかりました。次回は、上山さんの起業家精神の原点がどこにあったのか、おうかがいします。(つづく 11月14日掲載予定)

 ◇

上山康博(かみやま・やすひろ) 情報通信会社KLab取締役事業本部長を経て、2007年9月楽天トラベル入社。執行役員として新規サービスの立ち上げに従事した。12年6月、百戦錬磨を設立し、代表取締役社長に就任。観光庁の観光産業政策検討会委、OTAガイドライン策定検討委員会委員などを歴任。首都大学東京非常勤講師。大阪府出身。55歳。

 ◇

中村好明(なかむら・よしあき)1963年生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014 年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015 年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015 年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

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