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爆買いやめた中国人観光客のニーズを満たすには 高知工科大・永島正康教授

2016/10/14

「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」。高知県に来る客船としては過去最大の16.8万トンのクルーズ船が今年6月29日、高知新港に寄港した。乗客は乗員を含めると6000人以上。ほとんどが中国籍だった。

爆買いツアーは観光振興につながったのか

こうした中国人観光客による爆買ツアーには、高い購買力に期待がかかる。しかしながら、高知の場合、首都圏などの複数の港に立ち寄り、家電、百貨店、ドラッグストアなどで買い物を済ませたあと寄港するスケジュールになっており、どこまで高知の観光振興につながったのか疑問も残る。
201610131202_1.jpg※中国人観光客を取り込むため、地方ならではの工夫が求められている=大阪市・道頓堀

では、今後、高知として、この中国人観光客による爆買いツアーにどう対応していけばよいのか。大きな視点、未来、適合というマーケティング戦略の3つの枠組みを使って、この問いに対する答えを考えたい。

まず、中国人観光客の動向について、大きな観点から2つのことを見ていこう。

1つ目は、なぜ中国人観光客による爆買いなのかについて考えてみる。

爆買いを支える要因は、「円安による割安感」「日本の商品の高品質・高性能に対する憧れ」「中国の税制による内外価格差(中国で買うより、日本で買って持ち帰った方が安いということ)」の3点である。

しかしながら、昨年まで続いていた円安傾向は、ここに来て円高に振れているし、税制に関しても、中国政府がこの4月に海外購入品に対する関税の引き上げを実施(中国国内での消費促進が目的)している。

このように爆買いを支える要因に大きな変化が起きており、爆買いブームがいつまで続くのか不透明な状況になっている。

「自然、歴史文化に触れたい」…動機が変化

2つ目は、最近の動向を見ていると、爆買いしない中国人個人観光客の存在の多さに気づく。

マクロ統計的には、日本への中国人観光客のうち、これまで爆買いの中心になってきた多数の団体客が、近年、個人客とほぼ同じ割合になってきている。

個人客は、爆買いをせず、日本の自然と歴史文化に触れたいという動機で、中国で人気の口コミサイトなどを通じ、地方を訪問し始めている。

この個人客の中心が、欧米を中心に海外を旅慣れた富裕層である。

自分や家族の楽しみのために独自の体験を求め、例えば、高野山の修行体験などに参加したり、中国で人気を博している故・高倉健主演の北海道映画ロケ地巡りをしている。

未来という観点から、こうした中国人観光客の動向を見ていると、今後、現行方式の中国人観光客による爆買いツアーが、高知においてどこまで観光振興に貢献するのか、不透明な部分が多いと思う。

富裕層に絞ったオリジナルの体験ツアーを

しからば、適合という観点から、中国人観光客のニーズを満たすには、高知として、どのような形の観光振興が望ましいのだろうか。

私は、爆買いツアーは首都圏に譲り、今から富裕層に絞った「南国土佐のオリジナル体験」ツアーを提案したい。

地元が受け入れ可能な人数に限定し、高知の持つ自然と食と歴史の3つの優位性をフルに満喫できる体験ツアーを、ワンランク上のおもてなしを通じて、提供していくことができれば、中国人富裕層の満足を獲得し、高知の高付加価値ブランド構築に大きく貢献していくと思う。

山、川、海にすぐに行ける恵まれた自然環境、県外観光客からも評価の高いカツオなどの魚介類や皿鉢料理、高知と維新の歴史的関わりは、欧米の旅行に慣れた中国人富裕層から高い評価を獲得できると信じている。

201610131205_1.jpg【プロフィル】ながしま・まさやす 昭和34年、東京都生まれ。大手電機メーカーで、約30年間、国際マーケティングに従事。神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、ソルボンヌ大学大学院ビジネススクール博士課程修了、平成26年より高知工科大学マネジメント学部准教授に就任。現在は、同大学経済・マネジメント学群教授。Ph.D.(経営学)。専門は、経営戦略、マーケティング、サプライチェーン。

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