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民間主導で「爆買い」頼み脱却へ アニメ、食、温泉…ソフトパワーを即戦力に訪日客誘致

2016/10/13

訪日旅行客を全国の津々浦々へ-。そんな民間主導の取り組みが相次ぎスタートした。出版大手KADOKAWAや、飲食店検索サイト大手ぐるなびなどが、それぞれ「アニメの聖地巡り」や「食と温泉」をテーマに観光振興を図る団体を旗揚げした。

国内経済を一時潤した中国人客の「爆買い」が陰る中、人気が高い日本のソフトパワーを前面に打ち出すことで、長期的な集客力につなげることが期待される。201610121342_1.jpg
※茨城県大洗町を舞台にしたアニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」のキャラクターをあしらった列車の3号車=大洗駅
 

アニメ「聖地」発信

岐阜県・飛騨市図書館で今年、“事件”が起きた。月平均の来館者数が1万人前後の小さな図書館だが、興行収入100億円を突破したアニメ映画「君の名は。」で重要な舞台のモデルとなったことから、作品のファンが聖地として続々と巡礼するようになったのだ。

同館はこれを歓迎。申請すれば館内撮影も認めるとあって、巡礼者たちからは「公的施設なのに柔軟だ」「神対応」と賛辞が上がっている。

もっとも、こうした例は近年珍しくない。有名なところでは、人気アニメ「らき☆すた」のモデルとなった埼玉県久喜市(旧鷲宮町)や同「ガールズ&パンツァー」の茨城県大洗町のように、アニメや漫画で地元の活性化を図る自治体が増えているのだ。

ただ、PRや土産物作りの際に作品の権利関係が壁となったり、マナーの問題で住民と軋轢(あつれき)が生じたりといった課題もある。その調整役に手を挙げたのが、KADOKAWAやJTBなどが9月16日に設立した「アニメツーリズム協会」だ。
 

「アニメツーリズムは一つの組織で完結できない。総力を挙げて海外の人に魅力を知ってもらいたい」。理事長に就いた「機動戦士ガンダム」監督の富野由悠季氏はそう意気込む。現在、聖地の候補を募っており、88カ所を選んで国内外に発信していくという。
 

【関連記事】聖地巡礼を周遊ルート化へ アニメツーリズム協会設立

アニメ舞台への観光誘致の推進を目的とした一般社団法人アニメツーリズム協会(東京都千代田区)が9月16日(金)設立され、理事長で「機動戦士ガンダム」などで知られるアニメ監督の富野由悠季さんらが同日午後、東京都内で記者会見した。

食と温泉を活用

一方、全国の郷土料理や温泉を活用しようというのは、ぐるなびなどが10月に設立する「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」。首都圏や京阪神などに偏りがちな訪日観光ルートを全国に分散させるのが狙いだ。

ガストロノミーツーリズムとは地域独自の文化や伝統とともに食事を楽しむ旅行スタイルで、同機構は、温泉を拠点にした食事や町歩きコースを自治体から募って認定する計画。参加自治体には毎年のイベント実施を求め、「毎週末、どこかの温泉地で必ず催しがある態勢を5年以内に作りたい」(同機構)という。

同機構の発起人には、ANA総合研究所も名を連ねた。また、アニメツーリズム協会には日本航空が加わっている。
 

訪日需要の追い風によって国際線が好調な全日本空輸と日航も、国内線への恩恵はまだ小さい。両社は国内全路線で一律1万円の訪日客向けプランを発売しているが、さらに両団体の取り組みが実を結び、周遊型の旅行が定着すれば「国内線の搭乗率向上につながるはず」というのが、両社の思惑だ。

「モノよりコトを」

訪日客の増加とセットで語られてきた中国人の「爆買い」現象だが、既に退潮が著しい。時計や宝飾品、家電製品が飛ぶように売れた異常事態は終わり、人気の的は薬やお菓子といった日用品に移っている。

訪日客の総数は増え続けているものの、観光庁が7月発表した4~6月の1人当たり消費額は前年同期比9.9%減の15万9930円で、2四半期連続のマイナス。中国政府による関税引き上げの影響は否めないが、そもそも「訪問回数が多くなるほど、旅行にモノよりコト(体験)を求めるようになる」というのが旅行業界の定説だ。
 

政府は2020年までに年間訪日客4000万人の大目標を掲げており、その達成にはリピーターの獲得も鍵となる。そのためには、観光庁が音頭を取る広域周遊ルートの策定だけでなく、アニメやガストロノミーのような民間主導の取り組みで訪日客の多様なニーズに応えることが欠かせない。

ある旅行業界関係者は、人気が高いドイツの「ロマンチック街道」を挙げ、こう指摘する。「ドイツが150以上設けたテーマ型観光ルートのうち、日本ではロマンチック街道だけが生き残り、20年ほどかけて定着した」。つまり、国によって旅行者の心に届くテーマは異なり、定番としてなじむまでには時間を要するという。

だが、すでに国際的に高い人気を誇るアニメや食文化は「即戦力」となる可能性を秘めている。両団体の挑戦は、日本ならではの体験を求める訪日客のハートをつかめるかどうか。今後の取り組みが注目される。


 

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