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[連載]観光立国のフロントランナーたち 澤の屋旅館 館主 澤功(2) 

2016/10/10
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ロンリープラネットからトリップアドバイザー

澤巧 そのころ、矢島旅館さんが、他の旅館に声をかけて「ジャパニーズ・イン・グループ」というグループを作っていました。私もそこに加わった。彼らは7万部のパンフレットを年2回計14万部、世界1,000カ所に送っていたんですが、その効果か、澤の屋は1982年は年間230人の訪日客があった。次の年には、それが3,000人になった。次の年は4,000人に。パンフレットをもらった外国の人が、それをまるで宝物みたいにしてもって来てくれた。

中村好明 効果は絶大でしたね!

澤 3年目ぐらいから部屋稼働率は90%を超えちゃった。あるとき、米国に住んでいるという若い日本のお嬢さんが来られた。「澤さんところ、こんなに外国のお客さんが入るのは、ガイドブックの『ロンリー・プラネット』に載ったからだよ」と教えてくれた。

中村 有名な旅行案内書ですね

 まだ紙媒体が中心の時代でした。ジャパニーズ・イン・グループのパンフレットと、ロンリー・プラネットに載ったことが大きな宣伝効果を発揮しました。ロンリー・プラネットの日本編は1981年にできた。うちは翌82年から外国のお客さんを受けていますから、2版目からずっと載ったんです。
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検索サイト、そしてトリップアドバイザー

中村 しかし、やがてインターネットの時代になります

 そうです。最初は、検索サイト。ヤフーとかグーグルで「東京の旅館」って検索したときに、いかに上位検索されるかを競っていた。

中村 なるほど

 ところが2008年ぐらいから、旅行の口コミサイト「トリップアドバイザー」が出てきます。ここに書かれるのは、実際に泊まった人による評価なんですね。トリップアドバイザーさんに聞くと「旅をしている世界の10億人の人がサイトを見て、1億5,000万ぐらいの書き込みがある」って。澤の屋に実際に泊まった人が、澤の屋をどう評価しているか。東京に旅行に来る人は、それを見てからくるんだって。

中村 はい

201609301159_2.jpg その結果、うちは98%のお客さまが、トリップアドバイザーなどを通じて直接予約を入れるのです。旅行代理店さんを通しません。そういう個人の方の場合、どういう旅をしているのかという実態が、だれにも分からない。把握されていないんですね。そこで、これまでに3回、いずれも1年分のお客さんに、澤の屋としてアンケートを取ってみたのです。2008年と2013、2014年です。うちに泊まったお客さんが、どんな旅をしているのかを聞いた。結果は、うちのホームページに載せて、誰でも見れるようになっています。

中村 この「アンケートで見るFITの旅の仕方」ですね

澤 そうしたら、どうして澤の屋にお客さんが来るのかが分かった。お客さんは、まず「トリップアドバイザー」を見る。それからガイドブックを見る。息子が作ったうちのホームページを見る。その後がSNS。うちへ泊まった人が帰国して、自分のfacebookに載せたものだったりします。それがどんどん、どんどん広がっていく。最近、米国のお得意さんが「これからは動画じゃないとダメだ」と。で、うちのホームページのトップページには、動画で澤の屋の宣伝が入っているんです。

中村 今や動画の時代ですからね

201609301159_3-200x0.jpg 私は、ことし3月で79歳になりました。がんばって、東京五輪の年(2020年)まで生きて、そのとき、もう1回、1年分のお客さんのアンケートをとってみようと考えています。今のアンケート結果と比べると、澤の屋をどこで見つけたか、という回答も変わっているんじゃないかな。

中村 紙からインターネットやSNSに、情報源が変わったわけですが、2020年には、また違うものになっているかもしれないということですね

 多分、五輪の年にアンケートをとったら変わっているんじゃないかな。お客さんがどんな旅をしているか調べるために始めたアンケートですが、結局は自分のためにやっているのかもしれません。

つづく
第3回「家族旅館だから良いわけじゃない」
10月17日掲載予定

 

日本のインバウンドビジネスを切り開いてきたひとり、ジャパンインバウンドソリューションズの中村好明代表取締役社長が聞き手となり、訪日ビジネスの最前線を走る人々を迎え、「観光立国」日本に向けて、いま何が大切かを探る対談連載。題して「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」を始めます。

第1回は、東京・谷中で訪日客を迎え続けて35年を数える澤の屋旅館の館主、澤功(さわ・いさお)さん。止むに止まれず始めた訪日客対応だったという意外な事実から、訪日客4,000万人時代に向けて日本の旅館はどうするべきかまで4回(毎週月曜日掲載予定)に渡ってお伝えします。今回はその2回目です。
1回目はこちら

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