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国立公園整備で訪日客を地方に誘致 環境省、計画に200億円計上

2016/09/26

環境省が訪日外国人観光客の誘致を目指す国立公園の「ナショナルパーク」化を加速している。

2017年度予算概算要求や16年度補正予算案で全国8カ所を対象にした「国立公園満喫プロジェクト」に計約200億円を計上して受け入れ環境を整えるほか、商業施設を整備できるよう規制緩和も検討。少子高齢化で経済が停滞するなか、観光立国は確実な成長が見込める分野で首相官邸の期待感も強い。だが、地域の魅力を海外に伝えるには外国語対応や観光ガイドの育成など課題も多い。

対象選定は伝統重視

「伊勢神宮の文化伝統、伊勢エビやアワビなど、みなさんが守り育ててきた資源を磨き上げて発信していきたい」。伊勢志摩国立公園に関係する国や地方自治体、観光業者などの地域協議会の設立総会が9月11日(日)、三重県伊勢市内で開かれ、三重県幹部がこうあいさつした。

ブランド観光地として世界に売り込むモデル事業の対象には、伊勢志摩に加え、次のの8国立公園が選ばれている。

  • 阿蘇くじゅう(熊本、大分)
  • 阿寒(北海道)
  • 十和田八幡平(青森、秋田、岩手)
  • 日光(福島、栃木、群馬)
  • 大山隠岐(鳥取、島根、岡山)
  • 霧島錦江湾(宮崎、鹿児島)
  • 慶良間諸島(沖縄)

対象地域では、ビジターセンターの整備や案内標識の多言語化に加え、身体障害者や外国人に配慮したトイレへの改修などに取り組む。温泉や伝統文化と組み合わせたツアー開発やガイド育成、誘客戦略作りに向けた市場調査も想定する。

具体的な取り組みは、国立公園ごとの協議会が年内に策定。成功事例は他の国立公園にも拡大する。環境省の有識者会議は8カ所の選定にあたり、自然公園の価値に加えて、祭りや海女文化といった地域の伝統文化を重視した。

日光は地元に世界文化遺産「日光の社寺」があることが選定理由という。伊勢志摩は伊勢神宮や海女文化、大山隠岐は出雲大社や日本の神話との関連を強調している。十和田八幡平は祭りや伝統芸能、阿寒は無形文化遺産の古式舞踊などアイヌ文化に触れられる点を挙げた。

日本文化である温泉も訪日客の人気が高い。阿寒や十和田八幡平、霧島錦江湾などでは重要な観光資源となっている。

こうした地域の観光資源を訪日外国人に伝えるには、多言語対応など外国人向けに特化したサービスが不可欠だ。阿寒の地元・釧路市は案内表示やホームページの多言語化、無料Wi-Fi(ワイファイ)整備を実施している。多言語対応は阿蘇くじゅうでも取り組みが進んでおり、伊勢志摩はトイレの洋式化に力を入れる。

ガイド育成も課題

ただ、外国人を案内できるガイドは全国的に少なく、各地で人材育成をどう進めるかがモデル事業の成否の鍵を握る。

また、自然豊かな国立公園は事故の危険と隣り合わせでもある。環境省の有識者会議では、委員から「雷は落ちる、落石はおきる、温泉地だとガスは噴射する。危険がたくさんあるところに観光に行くのだから、自己責任を徹底させる必要がある」と指摘が上がった。観光地化が急速に進めば大切に守ってきた自然が荒らされる懸念もあり、保護と利用の両立をどう図るかが課題になりそうだ。

国立公園のブランド化は、2020年時点で訪日外国人客を年間4,000万人とする政府の新たな観光戦略の一環だ。国立公園を訪れた外国人は15年に430万人だったが、政府は 1,000万人に増やす目標を掲げる。

15年の訪日外国人数は前年比47%増の1,973万 7,000人と急増し、45年ぶりに訪日客数と出国日本人数が逆転した。とはいえ、4,000万人の目標は東京五輪の上積み効果を見込んでも簡単な目標ではない。

地方への波及効果が大きい観光は、安倍晋三政権が掲げる「名目国内総生産(GDP)600兆円」の達成や、地方創生の切り札だ。外国人をいままで以上に地方へ引き寄せるため、国立公園のナショナルパーク化は重要な役割を担いそうだ。

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