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[連載]観光立国のフロントランナーたち フードダイバーシティ・守護彰浩社長(1)

2018/02/13

ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長 (一般社団法人日本インバウンド連合会理事長)が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。今回からフードダイバーシティの守護彰浩社長が登場します。

フードダイバーシティは、日本を訪れるムスリム(イスラム教徒)向けにハラール対応のメニューを提供する飲食店(や礼拝ができる場所)を紹介するサイトを運営するのをはじめ、日本での多文化共生社会の実現をめざした事業活動を展開しています。昨年10月、社名を「ハラールメディアジャパン」から「フードダイバーシティ」に変更しました。対談の第1回では、社名変更の背景や「食」に関わるインバウンドの現状についてお聞きします。

さまざまな人に日本食を楽しんでもらいたい

中村 昨年10月に社名を変更した背景・理由をお聞かせ下さい。

守護社長 理由は2つあります。事業のスタート当初はムスリム向けのハラール対応を主として展開してきたのですが、サイトなどを利用する飲食店などの事業者、消費者双方から「ハラール」以外の情報もほしいという要望をいただくようになり、ここからベジタリアン(菜食)、ビーガン(完全菜食)、コーシャ(ユダヤ教の食事規定)、グルテンフリー(小麦などに含まれる成分「グルテン」を除去した食事)などもしっかりと研究する必要があると感じました。日本で「食」に困っているのはムスリムだけではないので、まさにダイバーシティ(多様性)という考えをもとにさまざまな方々に日本の食を楽しんでいただこうと思いました。

もう一つは、変更前の社名は「ハラールメディアジャパン」ですが、「ハラール」という言葉が入ることによって、「特定の宗教」という認識を持たれる行政の方が非常に多かったことも背景にあります。宗教を布教しているわけではなく、食に関してさまざまな考え方を持つ方々にも楽しんでいただく場を作りたいというのがわれわれの理念ですので、あえて「フードダイバーシティ」という名前を変えました。

ハラール イスラム法によって「許されたもの」のことで、「禁止されるもの」はハラームと呼ぶ。イスラム教の教えでは、豚肉を口にしてはいけないほか、アルコールも避けるべきとされている。また、食肉の処理についても決まりがあり、決まりにのっとって処理をされた肉以外は口にすることは避けるべきとされている。宗教上の規定であるため、成文化されておらず、詳細な内容については国や地域によって異なる。

中村 基本的なところから解説していただきたいのですが、守護社長が考える「ダイバーシティ」とはどういうものなのでしょうか?

守護社長 いろいろ定義がある言葉ですが、宗教、性別、言葉などをすべてフラットにした状態が「ダイバーシティ」だと思います。

中村 要するに、価値の多様を互いに認め合って、共存・共生していくという考え方ですね。

守護社長 もちろん共存・共生の前に最も「ダイバーシティ」において重要だと思っているのは、リスペクト(尊敬・敬意)をしっかりと持った状態で相互理解することです。例えば、ビーガンのコミュニティーには動物愛護を意識した方がいらっしゃいますが、そういった人たちの中にはお肉を食べる方々を批判することもあります。お互いにリスペクトがないから言い合ってしまうわけなんです。

「あなた方はそういう理解ですよね。私たちはこういう理解です」という相互理解をちゃんとやっておけば、そういうけんかって起きないと思います。相互理解をベースに価値観を作っていくというのがダイバーシティだと思っています。

■広がりつつある「食」のダイバーシティ

中村 創業されてからの4年間、守護社長が見てこられた中で、目に見える変化はどんなものでしたか?

守護社長 ハラールに対応したレストランの数は圧倒的に増えました。展開しているレストランサイトでは約800店舗を紹介していますが、最初は200店舗から始まりました。この4年間で600店舗増えたので、認識が広がっていることをかなり実感してます。また、ハラール対応されている事業者さんの中には在住者を狙うのか、インバウンド客を狙うのか、住み分けをしているところもあります。旅行者では東南アジア諸国から来られる方が多く、辛いものが好きなので、インバウンドを狙う方はメニューも嗜好に合わせている感じですね。

中村 レストランの数が増えたことに加え、それぞれに細分化され多様なポリシーが生まれているのですね。

守護社長 面白いのは、京都にある日本料理店の「京料理 本家たん熊 本店」さんです。ハラールにとても高いレベルで真剣に取り組まれていますが、たん熊さんは、ムスリムの方々の嗜好に一切合わせていません。「本格京料理をハラールで再現しますよ」ということをアピールしています。一方、東京・西麻布の同じく日本料理店「西麻布くすもと」さんは、全部食べていただくためにいろんなアレンジをしています。私はどちらのニーズも感じるので共に正しい取り組みだと思っています。加えて、最近は、ハラールにも対応し、なおかつグルテンフリーも、というようなハイブリッド型のレストランも現れてきています。

中村 レストラン側からすると、それぞれに対応するためのストックを用意するのではなく、ワンオペレーションでやれるということですね。

守護社長 そうですね。

中村 日本のハラール対応というのが食の安心・安全を求める富裕層に非常に評価されているときいていますが、そんな印象をお持ちですか。

守護社長 基本的に添加物などには豚由来のものやアルコール成分などが多く含まれていたりするので、そういったものを取り除いたハラール対応食品を一部の方は健康食として評価しています。また、2016年のリオデジャネイロ五輪などでも、イスラム教徒ではない方々がトレーサビリティの観点で「ハラールは安全」と信頼して食べていたりもしていました。

中村 リオ五輪では、ムスリムの選手団のために用意されていたハラール食材が足りなくなったそうですね。昨年、中国の西安に行ってきましたが、中国にも数千万人単位のムスリムの人々がいますが、漢民族の人たちは自分たちの文化をかたくなに守っている一方で、リスペクトしているところがすごく新鮮でした。たぶんその延長で安心というところにつながっているのかもしれませんね。(続く)

守護彰浩(しゅご・あきひろ) 1983年石川県生まれ。千葉大学卒業後、2007年楽天株式会社入社。2014年1月に「ハラールメディアジャパン」を創業し、日本国内のハラール情報を6言語で世界に発信するポータルサイトの運営をスタートさせた。また、ハラールにおける国内最大級のトレードショー・「ハラールエキスポジャパン」を4年連続で主催。国内外の事業者やムスリム2万人以上が来場するイベントとなっている。2017年10月に社名を「フードダイバーシティ」に変更。ハラールに加えてベジタリアン、ビーガン、コーシャなどありとあらゆる食の禁忌に対応する講演、及びコンサルティングを行う。)

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長に就任。国際22世紀みらい会議(Mellon 22 Century)議長。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)、『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(日経BP社、2017年)がある。

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