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[連載]観光立国のフロントランナーたち ジェイノベーションズの大森峻太社長(1)

2018/01/08
 

ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長(一般社団法人日本インバウンド連合会理事長)が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。今回から4回にわたって、ジェイノベーションズの大森峻太社長が登場します。

大森社長はジェイノベーションズを創業し、外国人と日本人をつなぐ国際交流プラットフォーム「ジャパン・ローカル・バディ」(JLB)を運営し、訪日外国人観光客に無料のガイドサービスを提供、外国人対応のコンサルティングやリサーチなどを実施しています。大森社長が起業に至った事業展開のきっかけや事業の中で気づかされる現在の日本が抱える外国人観光客対応や観光立国に向けた課題などについてお話をうかがいました。

■当初は苦戦したボランティアガイドのマッチング

中村 まずは大森さんが始められた、“ジャパン・ローカル・バディ”という活動の原点についてお聞かせください。

大森社長 現在は、いろいろな形の国際交流を提供しているのですが、最初のスタートは2014年に外国人観光客と国際交流をしたい日本人をつなぐためのネット上でのマッチングサイトを作成したのが始まりです。国際交流をしたい日本人が「この日のこの時間は空いていますよ」というメッセージを英語でサイトに書いて、外国人の人がそれを見て応募し、お互いにマッチングするサービスです。

中村 プロフェッショナルのガイドではなく、ボランティアでガイドをできる人をサイト上で探して、その人が手をあげたら「この日の何時に待ち合わせしましょう」という形でのマッチングをしたわけですね。

大森社長 最初はそれをやろうとして、マッチングサイトを作ったものの、始めてもすぐに依頼が来るわけではありませんでした。海外へのプロモーションの仕方も全く分かりませんでしたし、日本人へのプロモーションも分からず、とりあえず作ってしまった、という感じで、うまくいきませんでした。

その当時、よく渋谷にいたのですが、外国人に道を聞かれることが多かったんです。サイトも稼働していないし、外国人を道で直接助けた方が面白いのではないかと思ったんです。最初は友人と2人で画用紙を買って手書きの看板を作って、その看板を持って渋谷の街頭に立ってみました。まだ、渋谷のこともあまり詳しくなかったのもありますし、看板も手書きだったので、外国人にも怪しがられてなかなか声をかけてもらえませんでした。1日やっても2、3組ほどしか聞かれなくて。何で聞かれないのかと思って、毎回看板を変えてみたりしていろいろ工夫してみると、徐々に外国人から聞かれることも増えてきたんです。この活動が面白かったので、SNSでページを作って活動を紹介しました。すると、私の友人が参加したいと集まってきて、10人、20人と仲間が増えて、そこからは一般の方からもメッセージをもらうようになりました。

■学生時代の国際交流ネットワークが生きる

中村 初期に友人だけで始めた際、それがなぜ広まっていったんですか。

大森社長 海外に学生時代からよく行っていて、留学やバックパッカーをやっていた経験から、国際交流のサークルを学生時代に立ち上げました。そのネットワークがずっと残っていました。当時のメンバーももともと国際交流をしたいという気持ちがあったので、活動当初は少し紹介しただけで友人が自然と集まってきました。

中村 学生時代に国際交流のサークル活動をしていた時はどんなことをしていたのですか。

大森社長 大学にいる留学生をメーンに、留学生と日本人の大学生の交流のイベントを開いたり、銀行口座を開設したいときにサポートで付いて行ってあげたりなどの生活サポートをやっていました。

中村 大学の中でやってきたことを、社会人になった後、活躍の場をキャンパスの外に移したような形ですね。

大森社長 そうですね。スタートがうまくいったのは、当時の友人が一緒にやりたいと言ってくれたからですね。何か外国人とかかわることをやりたくてうずうずしていた友人に私がそういう活動を始めて、きっかけを与えたことで一気に集ってきました。

中村 その意味では、これまでやってきたことが花開いたという感じですね。

大森社長 最初は問題が起きても困るので、仲間内だけでやってみようというのもありましたが、SNSで発信していく中で、それを見た一般の方からも参加したいと言っていただけるようになってきました。

また、最初は数人でやっていたので、渋谷の雑踏の中では全く目立たなかったのですが、人数が10人くらいに増えてくると、街頭でも存在感が出てきてきました。それで、外国人に声をかけられる回数も増えてきました。すると、日本人からも「何か盛り上がっていて面白そうだから行ってみよう」と注目されるようになり、連絡が来るようになってきました。

中村 行政の主導の公共サービス的なものではなく、まさに、ボランタリー(自発的)な行動の中で、「みんなで楽しんでいる」という印象が受けいれられたんでしょうね。

大森社長 当時は国際交流で何か面白いことをやろうという気持ちで始めたので、そこから一般の方たちにも気軽に参加していただけるようになりました。

■語学ができない人も大歓迎!

中村 しかし、大森社長の友人は語学ができるなど経験値が高い方ばかりだったわけですよね。その中で、何か面白そうだということで、あとからいろいろな一般の方が集まって来たわけですが、そういう方たちは自分たちで大丈夫なのかという不安や心配はなかったのでしょうか。

大森社長 最初は特にプロモーションをしなくても自ら参加したいとメッセージを送ってくれる方々だったので、語学ができてモチベーション(意欲)が高い方が多かったんです。ただ、実は、私自身ももともとは英語がすごく苦手で海外に興味がないというタイプでした。それが高校時代、修学旅行で海外に出るチャンスがあったのがきっかけで、国際的なことをやりたいと思うようになりました。「英語が話せなくても来てください。『ハロー』しか話せなくても大歓迎!」というのを真っ先に言うようにしました。それは、自分自身の経験から語学が苦手で海外にもともと強い興味がないような方たちにも変われるきっかけを作りたいと思っていたからです。

中村 そういうメッセージを入れるようになって、集まる人も変わってきたのですね。

大森社長 最初は、参加者の友人がその友人を連れてきて、という形でした。メンバーに向けても英語が話せなくても海外に興味がある方であれば大歓迎です、ということを言い続けていたので、そのうちメンバーもどんどん集まるようになってきました。それから半年くらい経った2015年7月、あるテレビ番組で紹介をしてもらいました。また、それを見た別のテレビ番組からも問い合わせを受けて、多くのメディアに報道してもらったことで、さらに参加者が激増しました。

当時はインバウンドがよく言われるようになってきたころで、テレビのプロデューサーもインバウンドのネタを探していた時期で、ボランティアガイド、インバウンドというのが取り上げやすかったのかもしれません。

中村 活動の切り口が今までのものと違っていたんでしょうね。

大森社長 そうですね。一般にガイドをやっているような方はもともと英語が得意で、ボランティアガイドを紹介する団体もたくさんあるのですが、最初にテストがあったり英語が話せない方はお断りだったりといった団体がほとんどのようです。私たちの団体は海外に興味がある方であればどなたでも歓迎としているので、一気にハードルが下がり、規模も大きくなって目立つようになりました。

この事業の大きなポイントは2つあります。一つは無料というところ。もう一つは外国人を向いてサービスを行っている団体が多い中で、外国人だけでなく、むしろ、参加する日本人にもどれだけ楽しんでもらえるか、ということを目標にして取り組んでいることです。(続く)

大森峻太(おおもり・しゅんた) 1989年神奈川県生まれ。大学在学中、カナダ留学、韓国留学、オーストラリア留学を経験。大学卒業後はカナダに拠点を移し、1年半かけて海外を周る。帰国後、外国人旅行者向けボランティアガイド団体を立ち上げ、約5000人のボランティアガイドを全国で集める。2016年12月インバウンド事業をメーンに手掛ける株式会社「ジェイノベーションズ」を設立。外国人と日本人をつなぐ国際交流プラットフォーム「Japan Local Buddy(ジャパン・ローカル・バディ)」をリリースし、全国でガイド育成に取り組んでいる。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長に就任。国際22世紀みらい会議(Mellon 22 Century)議長。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)、『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(日経BP社、2017年)がある。
 

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