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運行わずか8年…幻のモノレール“昭和の鉄道遺産”に脚光

2017/12/19

 兵庫県姫路市で昭和41(1966)年5月に運行を始めたものの、わずか8年で休業し、54年に正式に廃止となった市営モノレール。廃止から38年たった今、貴重な産業遺産として再び脚光を浴びている。市が実施した廃線跡ツアーには定員を大きく上回る鉄道ファンが殺到。旧駅ビル解体を受けて販売が始まった記念レールも在庫があとわずかという人気だ。当時としては最新鋭の技術が駆使された姫路市営モノレールは、熟年層には高度経済成長時代を思い起こさせ、若いファンからは斬新な「昭和の乗り物」として関心を集めている。(香西広豊)

ツアーに定員の3倍超の応募

手柄山交流ステーションに常設展示されている姫路市営モノレールの車両

 「姫路市内だけでなく、神戸や大阪、遠くでは岡山からの参加もあった」

 姫路市公園緑地課の青木正典さん(47)は、市が11月5日に実施した、市営モノレール廃線跡ツアーの様子をこう振り返る。

 モノレールは昭和41年に姫路市で開催された「姫路大博覧会」の輸送手段として開通。自治体が運営する初めてのモノレールとして姫路-大将軍-手柄山の3駅約1・8キロを約5分で結んだ。青木さんは「未来の乗り物として、博覧会の展示品との位置づけもあったようだ」と解説する。

 41年5月17日に開業したモノレールは当初、大勢の乗客でにぎわったが、6月5日に博覧会が終了すると客足は一気に減少。年間126万人の乗客を想定していたものの、41年度の乗客は3分の1の約40万人にとどまった。その後も乗客は年々減少し、赤字が当たり前の状況に陥った。

 中間にある大将軍駅はモノレールの軌道がビルを貫くユニークな外観だったが、姫路駅からの距離が近すぎたため駅の利用者やビル内の店舗の客足が伸びずに、駅自体が43年1月に閉鎖となった。

 その後も姫路-手柄山駅間で運行を続けたが、客足が上向くことはなく49年4月に休業に追い込まれ、54年1月には正式に廃止が決まった。軌道や橋脚の一部は今も当時の姿のまま残っている。

 今回の廃線跡ツアーは地域のイベント「手柄山オータムフェスティバル」の一環として実施されたが、その人気は高く、市が募集した30人の定員に対して100人以上が応募。30人1グループで行う予定だったが、2グループの計60人の参加者で実施した。

 出発地点のJR姫路駅前には子供から年配者までさまざまな世代の鉄道ファンが集結。産業遺産の記録活動を行うNPO法人「J-heritage(ジェイヘリテージ)」のスタッフらがガイドを務め、市内のモノレールの橋脚跡などを巡り、手柄山駅のあった手柄山交流ステーションまでの約4時間のツアーを楽しんだ。途中、解体され更地となった大将軍駅ビル跡も訪れた。

 同NPO代表で今回のツアーに同行した前畑洋平さん(39)は、廃線跡の産業遺産としての価値について「姫路市営モノレールは戦後復興の象徴的な存在。当時の社会の勢いを感じさせるものとして注目を集めているのではないか」と話している。

桐箱入りの切断レール、残りわずか

 市は昨年夏、中間駅だった大将軍駅が入るビルが解体されるのを前に内部の一般公開を実施したところ、400人の定員に対して全国から約9千人の応募があった。市はこの人気を受け、大将軍駅に敷設されていたレールを短く切って加工した「記念レール」を今年8月に発売した。

 記念レールは2種類で、いずれも高さ15・7センチ、幅13・5センチ。「Aタイプ」(1万円)は2センチの厚さに切断したうえで表面にメッキ処理を施しているのが特徴で、桐箱におさめられている。一方、「Bタイプ」(5500円)は厚さ3センチに切断して表面をアクリル塗装のうえ紙箱に入れられている。

 両タイプともに大将軍駅の駅銘板を再現したステンレス銘板と、モノレールの概要や歴史、運行当時の写真を掲載した記念冊子が付いており、Aタイプは450個、Bタイプは1550個をインターネットなどで販売した。

 市の思惑通りに販売は好調に推移。これまでにBタイプは約750個を販売し、価格の高いAタイプについてはあとわずかしか残っていないという。市の関係者は「Aタイプはメッキ処理や桐の箱に入っているという高級感が人気を集めているのでは」と分析している。

 市は引き続き、イベントなどで記念レールの販売ブースを設け、レールをPRしていく方針。

車両は常設展示

 姫路市営モノレールは車両も当時としては最新鋭の「未来の乗り物」だった。米航空機大手ロッキード社製で、航空機の製造技術を活用。車体にアルミニウム合金を使用することで軽量化と高強度を両立させていた。

 その車両は現在、手柄山駅跡の施設「手柄山交流ステーション」内に常設展示(入場無料)されている。展示室の入り口部分は、モノレール運行時に車両の進入口となっていた場所で、展示室に入ると巨大な車体が目に飛び込んでくる。

 展示室内部はホームだった場所を改装しており、2両が展示されている。このうち1両は車内も開放しており、当時の座席に座ったり運転席を見たりすることができる。車内には車掌の車内放送も流されている。

 また、車窓からは当時の広告看板などが見えるようになっており、車両だけでなく、モノレールが運行していた街の雰囲気も味わうことができる。展示室にはこのほか、部品やパネル写真、姫路大博覧会の会場を再現した巨大なジオラマなども並んでいる。

 モノレールが再び脚光を浴びていることについて、手柄山交流ステーションの石田博秀さん(53)は「姫路のモノレールだけでなく、全国各地にある昭和の産業遺産がブームになっていることが大きい。その一つとして昭和の終わりとともに消えたこのモノレールが印象深いものになっているのではないか」と分析。「姫路城だけではない『姫路の魅力』として、外国人観光客にもPRしていきたい」と意気込んでいる。

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