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[連載] 観光立国のフロントランナーたち 日本観光振興協会の久保成人理事長(2)

2017/12/11

ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長(日本インバウンド連合会理事長)が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。日本観光振興協会の久保理事長との対談の第2回では、久保理事長の観光立国やインバウンドへの取り組みについて振り返ります。

観光庁長官時代に訪日客1000万人を突破した際の行政官としての取り組みとそのやりがい、その後の日本観光振興協会での取り組みで感じていること、直面している課題などについてお話いただきました。

観光庁長官時代に訪日客1000万人を達成

中村 久保理事長のこれまでのキャリアについて、観光庁長官時代など、観光立国やインバウンドという視点から振り返ってお話しいただければと思います。

久保理事長 2013~2015年にかけて観光庁の長官を務めていたのですが、最大の思い出は、2013年の12月20日です。その日、訪日外国人旅行者の数が初めて1000万人を超えました。

翌年1月の通常国会における安倍晋三首相の施政方針演説では、日本を訪れた外国人が1000万人を超え、長年の目標を達成したこと、1000万人目としてタイから来日されたパパンさんの言葉、「日本人のサービスは世界一」が取り上げられました。1000万人を達成したことが総理の施政方針演説の中にも入り、また総理が誇らしげにそのことを演説されたということも私にとっては思い出深いものです。

2013年の秋頃に全国の企業、自治体など800を超える組織に「1000万人を超えるよう協力していただきたい」とお願いしました。結果として多くの観光関係者や自治体、企業に対応していただきました。例えば、「特別に割引をした結果、これだけの人数が増えました」、といった具体的に数字につながる取り組みのお話もいただきました。多くの組織にご協力をいただいた結果であったこともまたうれしかったですね。

中村 そうやって、だんだんオールジャパンで盛り上がって1000万人という目標を結果として乗り越えたわけですね。

久保理事長 結果として、今のように盛り上がる雰囲気ができたと思います。私は長く行政官をしていましたが、政府というのは最初に重い石を動かして環境を整えるのが政策目標に対する役割で、主力はあくまで民間、ビジネスの世界で頑張っていただくというのが筋なのだなと、1000万人を超えた後の動きを見ていて痛感しました。

もう1つ思い出深いことがあります。1000万人を目指して800を超える組織に文書を出したのと同時に、私自身が訪問して協力をお願いしました際、エイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長(現社長兼会長)にもお会いしました。澤田さんにご協力をお願いすると、彼は「もちろん協力します」と言うだけではなくて、「1000万人は絶対にいきますよ」と断言しました。その時点で断言したのは澤田さんだけでした。さらに、「近いうちに2000万人もいきますよ」とまた断定されたのです。1000万人でこれだけ苦労しているのに2000万人と言われたことには驚きました。

澤田さんは海外でもビジネスを展開されていたので、根拠があって1000万人は達成するし、2000万人もいけるというお考えがあったのではないかと思います。当時2000万人なんて誰も考えていなかった数字を初めて言ったのは澤田さんです。だからとても印象深いですね。

その後、日本観光振興協会の理事長となり、いろいろな地域に行くと、地域の組織団体が観光に対して熱心になっているということと、どの地域にも磨けばより一層良くなる観光資源があることが分かりました。観光資源が何もないという地域は、実際にはないと感じています。大事なのは既にある観光資源を磨くにはどうすれば良いかということです。

中村 まさに2013年の1000万人突破というところから、日本の観光立国が黎明(れいめい)期から発展期に転換しましたね。その初動というのは行政の力でしたが、そこから先は民間の力というのを主にして訪日客が増えていったと私自身も感じています。

インバウンドの急増とその課題へ一つ一つ取り組む

久保理事長 最初に重い石を動かすことも行政の大切な役目ですが、今後は個別の団体、企業、地域だけでは解決が難しい課題に対して、行政や公的セクターが対処していかないといけないと思っています。インバウンドが急増することによって、需要が多すぎて問題が起きているところもあります。

あるいは、最近ニュースにもなっていますが、病気や怪我で病院に行って治療を受けても、保険に入っていなくて費用の工面が難しいとか、レンタカーでの事故が増えているとかいったさまざまな課題が、大きいものから小さいもの、複雑なものまでたくさん出てきています。こうした課題については、行政や公的セクターも一緒になって一つ一つ解決していくしかないと感じています。

中村 先日、自動車の免許の更新だったのですが、安全教習本の最初に今年の7月に施行された交通標識の英語対応というのが出てきました。これは非常に象徴的なことだと思いました。

久保理事長 レンタカーを利用する外国人は増えていますが、事故も起こっています。交通標識問題については早い対応がされたということですね。

インバウンドの増加が急激だったこともあり、いろいろな分野で課題が出てきています。全てを同時に解決することはできないので、一つずつ解決していくしかないですね。解決の方法も主体もさまざまですが、着実に取り組んでいくしかないと考えています。(続く)

久保成人(くぼ・しげと) 1954年大阪市生まれ。1977年京都大学法学部卒業後、運輸省に入省。2010年国土交通省鉄道局長、12年国土交通省大臣官房長を経て、13年8月から15年9月まで観光庁長官。16年6月から現職。日本ナショナルトラスト理事、日本自動車連盟経営諮問委員会委員、ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構副会長、北前船交流拡大機構副会長などの役職も務めている。

中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長に就任。国際22世紀みらい会議(Mellon 22 Century)議長。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)、『儲かるインバウンドビジネス10の鉄則』(日経BP社、2017年)がある。

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