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「日本遺産」3年目、成果は… これまで54件認定、注目の遺産を訪ねてみた

2017/11/27

 地域の文化や伝統を観光に生かそうと始まった「日本遺産」は今年で3年目となり、これまで54件が認定された。文化庁は東京五輪が開かれる2020年までに100件まで増やす予定だが、これまでの成果はどうか。注目される遺産を訪ねた。

石川・小松の石文化

今も使われているアーチ形の石橋=9月19日、石川県小松市

 「ここが石の町とは聞いたことがないでしょう。ふるさと自慢を探す中で石を使った建物が多いことに気付き、そのルーツも含め売り出そうと決めました」。石川県小松市の和田慎司市長が胸を張る。

 16年4月に日本遺産となった「『珠玉と歩む物語』小松」の構成文化財などは計31。2300年前、弥生時代の碧玉アクセサリーづくりから、現在まで続く凝灰岩の切り出し加工までを「時の流れで磨き上げた石の文化」というストーリーにまとめた。

 市内の粟津温泉近くにある滝ケ原地区。江戸時代の後期から切り出しが始まった。車で走ると、山の中腹に石切り場の跡が見える。今も稼働する現場に行くと、巨大神殿のような空間が山をくりぬくように奥まで延び、壁には大型電動のこぎりの跡が年輪のように刻まれている。中の空気は少しひんやりとしていた。

 地区には5つのアーチ形の石橋も残る。「石材業で栄えた明治後期から昭和初期までの間に、地元出身の実業家が寄付しました」と市観光交流課の園田一さん。この日も貸し切りバスで観光客が訪れ、地元のガイドが説明するなど少しずつ浸透している。

 「宇都宮市にある大谷石の地下採掘場跡の規模には及びませんが、安全を確保しながら公開できるか検討中です。粟津温泉に泊まり楽しめるツアーづくりができれば」と期待を寄せる。

 小松はこれまで歌舞伎「勧進帳」の舞台である「安宅の関」、建設機械メーカー「コマツ」の創業の地として知られてきたが、石文化の観光はゼロからのスタート。公共交通機関で回ることは難しく駐車場の整備など課題は山積している。

会津の三十三観音

日本遺産にもなって観光客でにぎわう重要文化財「さざえ堂」=10月24日、福島県会津若松市

 約150年前に起きた戊辰戦争の激戦地として知られる福島県の会津若松市は、鶴ケ城や白虎隊といった武家文化のイメージが強い。16年に「会津の三十三観音めぐり」が日本遺産に仲間入りした。

 「15年は平安初期からの仏像、寺院が多く残る『仏都会津』で申請しましたが、京都や奈良に比べ希少性が乏しく落選。そこで切り口を変え、江戸時代、農閑期に女性の観音巡礼が流行し今も伝統が続いている話にまとめました」と市観光課の大竹正之さん。

 年間約300万人が訪れる観光地としての基礎があるだけに、早くも観音巡りのバスツアーが始まるなど人気も出てきた。「戊辰150周年となる18年にはもっと盛り上げたい」

 遺産の一つ、重要文化財「さざえ堂」がある飯盛山に登った。塔内にある二重のらせんスロープを上り下りすることで観音巡りと同じ御利益があるとされる。白虎隊自刃の地も近くにあり、観光客は絶えない。車で約1時間の所にある大内宿もにぎわっていた。

 登録や観光の取り組みは、文化財を管轄する教育委員会ではなく、会津17市町村に交通事業者や観光協会などで05年に組織した「極上の会津プロジェクト協議会」が担当する。事務局も務める大竹さんは「観光の引き出しが一つ増えました」と手応えを口にした。

登録契機に再注目

 宮城県では「政宗が育んだ“伊達”な文化」が16年に認定された。関係地は仙台市を中心に4市町。構成遺産をすべて回るような公共交通機関はなく、まだまだPRの段階だ。このように複数の市町村にまたがる「シリアル型」は、アクセスや連携の問題から効果が見えにくく苦戦している。

 一方、同じ遺産でも広島県尾道市や島根県津和野町のように、1970年代にアンノン族が訪れるなどかつて人気のあった観光地が登録を契機に注目された例もある。

 現在、日本遺産がないのは東京、山梨など7都県。その一つ宮崎県からは、「城下町飫肥(おび)」のある日南市などがトライしてきたが落選続きだ。県の担当者は「文化庁と事前相談しているが、斬新さや希少性などが求められハードルは高い。文化財を地域活性化に生かすのは難しい」と話している。

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