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[連載] 観光立国のフロントランナーたち (3) 国際医療福祉大学大学院 岡村世里奈准教授

2017/11/20

ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長(日本インバウンド連合会理事長)が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロントランナーたち」。国際医療福祉大学大学院の岡村世里奈准教授との対談の第3回では、医療情報に関して、地域での成功事例の情報共有の重要性や外国人向けの医療情報の提供の仕方などについてお話をいただきました。

成功事例の共有が問題解決のカギ

岡村准教授 鹿児島県のある地域のことなのですが、この地域では、クルーズ船の入港が増えたことにより、クルーズ船内で体調を崩した訪日客の緊急医療対応が問題となっていました。そこで先日、船舶代理店や医療機関、英語や中国語の医療通訳者、航空会社、行政機関の各担当者が集まって、それぞれの抱える課題や連携のあり方について話し合う情報交換会を開催されたそうです。

このように訪日客の緊急医療に携わる地域のキーパーソンの方々が一堂に会して話し合う場を設けることは非常に重要なことだと思います。

互いの状況がよく理解できれば、効果的な協力・連携関係を構築するためにどうすればよいのか具体的に検討できますから。また、こうした情報交換会の内容やそこで検討された対応策などは他の地域でも参考になる部分が多いと思います。

中村 訪日観光や医療に関連するプレーヤーの皆さんが一堂に会する場があるのは素晴らしいですね。また、他の地域がゼロベースで右往左往してしまうよりは、そういう成功事例をモデルとして緊急時にどう対応すべきなのか、どういった解、ベストアンサーがあるのかということを共有することは非常に有効ですね。

解決に向けたプロセスそのものを何らかの形で共有したり、一つのセンターのようなところに問い合わせをすれば、総合的にいろいろな事例を照会してアドバイスしたりしてくれる仕組みがあるとなおいいですね。

岡村准教授 そのような仕組みが日本国内にできたら素晴らしいと思います。訪日客の緊急医療対応についてはどの地域でも同じような課題や悩みを抱えているにも関わらず、情報共有の場がないためにそれぞれの地域で一から考えて独自に解決策をみつけなければなりません。

中村 訪日医療の問題に限らず、インバウンドのいろいろな場面では、さまざまなトラブルが起きます。そういう対応を、結局、全て個別で対応しているんですね。プロモーションやマーケティングの仕方など、既に解があるのに探し回っているような非効率極まりない状態となっています。

岡村准教授 確かに。訪日客の緊急医療対応に関しても、都市部の方であれば、関連するセミナーや勉強会が最近よく開かれるようになってきていますから、必要な知識や情報を入手することは比較的容易です。しかし、地方になるとそういうわけにはいきません。ですから、何らかの情報の共有化の仕組みを作って地方の方でも簡単に必要な知識や情報を入手できるようなことになれば、日本全体の訪日客の緊急医療対応力は今よりも格段に向上すると思います。

外国との医療文化の違いを大学で学ぶ時代に

中村 外国人患者の医療に対する考え方を、例えば、医学部のカリキュラムに入れたり、大学教育に標準化したりするような時代がこれから来るのではないでしょうか。

岡村准教授 そのような時代もいずれ来ると思います。というか、来ていただきたいと思います。現在、私が教えている大学院の医療通訳・国際医療マネジメント分野でも「国際医療文化・システム比較論」という講義を設けて、大学院生の方にはアジア地域を中心とした世界各国の医療文化や医療システムについて学んでもらっています。そして、そのような医療文化・医療習慣の違いを踏まえた上で、外国人医療をどのように提供していけばよいのか大学院生の方には考えてもらうようにしています。

例えば、先日は、アジア地域の中には医療費が前払いの国が少なくないなど、医療機関の受診方法が国によって異なるということを学んだ上で、「外国人の方に日本の医療機関の受診方法を理解してもらうためにはどうすればよいか」ということを皆で検討しました。

そうしたところ、大学院生からは、なかには外国籍の方もいたのですが、「日本に入国する在留外国人だったら、入国管理事務所で必ず最初に手続きをするので、その時に生活ガイドで日本の医療受診の流れなどを記した説明が一枚でもあったらいいのではないか。普通の病院に置いてあったとしても気付かないけれど、入管の時は必ずチェックする」「訪日客でも、観光庁や各都道府県でパンフレットをたくさん作っているから、それにちょっと医療受診のノウハウの資料を入れたらどうか」「専用のアプリを作ったらいいのではないか」などさまざまなアイデアが出てきました。

やはり、何でもそうだと思いますが、基本的な知識があってはじめて求める「解」は生み出せるのだと思います。その意味では、外国人医療に関する教育が日本でも積極的に行われることは素晴らしいことだと思います。

訪日客向けの医療情報サイトの整備が必要

中村 海外では、日本に比べて非常に優秀な外国人観光客用の医療情報サイトが作られているようですね。

岡村准教授 例えば、韓国ソウルの観光情報サイト「KONEST(コネスト)」の「韓国基本情報」の中にある「病気・事故にあったら‥」のページなどは非常に参考になると思います。このページでは、日本語で受診できる医療機関がいくつか紹介されているのですが、受診方法が写真付きで詳しく紹介されるなど、非常に分かりやすいものになっています。日本にも、訪日外国人旅行者受入れ可能医療機関を紹介するウェブサイトがあります。

これ自体は素晴らしい取り組みですが、地域検索が県別になっていたり、診療科で検索をかけると検索一覧に大学病院とクリニックが混在して掲載されていたりするなど、訪日客にとっては必ずしも使い勝手のよいものとはいえないような気が致します。

また、先日ある医療機関の方から聞いた話によると、中国人の訪日客の方が子供が腹痛を訴えたので、このウェブサイトを見て中国語で診療可能な医療機関を見つけたのは良かったが、場所を確認しようと思って掲載されている電話番号に電話したところ、交換手が日本語しか話せなくて困ったということがあったそうです。

誤解しないでいただきたいのですが、このウェブサイト自体は本当に素晴らしい日本の取り組みだと思います。ただ、実際に役立つものにするためにはもう少し工夫していく必要があると思います。

中村 必要なエッセンスがちゃんと含まれているものにする必要があるということでしょうか。

岡村准教授 そうですね。例えば、コネストでは「薬を買う」というタブをクリックすると、韓国の薬局に売っている医薬品で、「これは日本のオロナインと同じ効能です」といったアドバイスが日本語で紹介されています。韓国の薬局に行ったら韓国語しか表示がありませんから、これは便利ですね。また、写真があるのとないのとだけでも全く違うと思います。(続く)

岡村世里奈(おかむら・せりな) 1970年福岡県生まれ。上智大学大学院法学研究科博士前期課程修了。1999年国際医療福祉大学入職後、講師、米ロヨラ大学ロースクール・ビーズリー保健法律・政策研究所の客員研究員などを経て、2012年から国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野、2017年からは同大学院医療通訳・国際医療マネジメント分野の准教授を兼務。

 中村好明(なかむら・よしあき) 1963年佐賀県生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長に就任。国際22世紀みらい会議(Mellon 22 Century)議長。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。

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