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【万博を大阪に(上)】茶道の心で人をつなぐ 千玄室さん・裏千家前家元 誘致特使に聞く

2017/11/15
お茶が人をつなぐ力で万博誘致に全力を尽くすと語る千玄室さん(寺口純平撮影)

 政府が大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま=大阪市此花区)に誘致を目指す2025年国際博覧会(万博)。11月15日には開催地が決定する1年後をにらみ、立候補国の第2回プレゼンテーションがパリの博覧会国際事務局(BIE)総会で行われる。外務省は「万博誘致特使」に国際的に活躍する3人の著名人を起用。その一人、裏千家前家元の千玄室さん(94)に、大阪万博への思いや誘致成功への秘策を聞いた。(牛島要平)

 日本のお茶は相手の目の前で点(た)てて「どうぞ」と差し上げることで、人の心をぐっと引きつける。国や慣習、環境の違いはあっても、人間の心は一緒。私はそういう気持ちで、一碗のお茶で世界中に入り込んでいる。特使に選ばれたのも、お茶が人をつなぐ力に期待されたからだろう。

 正直、誘致は決して容易ではないとみている。良好に見える国際関係の底流には想像以上に厳しい現実がある。私はそうした危機感を肌で感じている。

 9月下旬に中国を訪れた際、政府幹部に会って「日本に1票入れてほしい」と依頼したところ、「よく考えます」との返答だった。中国や韓国にはまだ歴史認識で感情のしこりがある。

 大票田のアフリカでは中国が各国へのインフラ資金供与を通じて影響力を強め、現地では「中国が山奥まで道路や橋をつくってくれた」と喜んでいる。日本が進めてきた経済援助をまるで忘れたかのようだ。

 1970(昭和45)年の大阪万博は大成功だった。私も会場に設営した茶室で入場者に茶を振る舞い、外国人らの反響は大きかった。あのときは、敗戦から立ち直った日本に世界が同情してくれたからうまくいった。

 今回は相当な覚悟を持たなければ誘致は難しい。ところが、大阪の市民レベルでは盛り上がりに欠け、政財界の誘致方針だけが独り歩きしている。政府と地元自治体、関西財界と経団連が必ずしも一体感を持って活動しているともいえないようだ。

 そんな状況の中、94歳で万博特使を受けたことで、知人からは「大変な役目をよく引き受けましたね」と気遣う言葉をもらった。

 私は先の戦争で特攻隊に志願して生き残った。10月4日には例年、靖国神社でお献茶をする。特攻で散った仲間が「おーい、千」と呼びかけてくる。その声は重い。一度捨てた命。死んだ彼らのためにも日本のために役立てないといけない。そんな思いで特使を引き受けた。

 「一●(わん)からピースフルネス(平和)を」が私の願い。たとえ命を張ってでも万博誘致に力を尽くそうと考えている。

 ●=「宛」のうかんむりを取り、下に「皿」

 せん・げんしつ 昭和18年、学徒出陣して海軍に入り、特別攻撃隊に志願。復員後の21年、同志社大卒。39年、第15代裏千家家元となり千宗室を襲名。平成14年に家元を退き、千玄室(大宗匠)に改名。これまで世界60カ国以上を歴訪し、茶道文化の発展と世界平和の実現に向けた活動を展開している。京都府出身。

【関連サイト】[連載] 【万博を大阪に(中)】コシノジュンコさん・デザイナー 誘致特使に聞く

【関連サイト】[連載] 【万博を大阪に(下)】岡村善文さん・外務省政府代表 誘致特使に聞く

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