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サイクリングで観光振興、関西も本腰 滋賀vs奈良vs和歌山3県の誘致バトル白熱

2017/11/10

 自転車での人気スポット巡りや、本格ツーリングなど、サイクリングを核とする観光誘致に関西地方の自治体が本腰を入れている。滋賀県は琵琶湖を巡るサイクリングを「ビワイチ」と銘打って全国にアピール。奈良県は古都や史跡を結ぶサイクリングルート「ならクル」を制定・整備している。和歌山県も、日本最大スケールの800キロを誇るサイクリングコースの整備が完成間近だ。自転車観光には訪日外国人客(インバウンド)も関心を寄せており、3県の誘客バトルは関西の観光振興の新たな起爆剤となりそうだ。

開放感と達成感が魅力「ビワイチ」

 琵琶湖1周サイクリング「ビワイチ」は、その呼称を滋賀県が公認し、県がサイクリングマップも発行している。湖畔1周は約200キロ。上級者は1日で走り切るが、通常は2日以上かけて巡ることが多い。

琵琶湖周辺をサイクリングしたモデルでダンサーの田中セシルさん。このポーズが「琵琶湖サイクリストの聖地碑」のモチーフになった =撮影・産経デジタル「Cyclist」澤野健太 ※安全な場所で撮影しています

 湖岸の景観は美しく開放的。コースは全体に平坦で、適度な距離を設定すれば初心者や子供も楽しみやすい。また1周を完走すれば達成感が大きく、認定証も与えられる。

 琵琶湖周辺には国宝の彦根城(彦根市)、日本最古の駅舎・旧長浜駅舎(長浜市)などの名所が点在。サイクリングの疲労を考慮し、湖畔を走るJRの琵琶湖線や湖西線での鉄道旅行と組み合わせることもできる。途中で湖を渡る船に乗ってショートカットするルートもあり、楽しみ方はさまざまだ。

 滋賀県を訪れるには、東海道新幹線の米原駅や、隣接の京都駅を利用できるメリットが大きい。東は東海・関東地方、西は中国・四国地方や九州地方からのアクセスも便利だ。

 ビワイチの盛り上がりを受けて、県内では守山市などが自転車観光誘致を本格化。市内には台湾のジャイアント、アメリカのトレックという著名ブランドの自転車ショップが相次いでオープンした。サイクリングシーズンには自転車をそのまま載せられる「ビワイチアクセスバス」も運行され、今年は11月5日までサイクリストたちを運んだ。

歴史巡りを楽しめる「ならクル」

 奈良県は平成22年に策定した「県自転車利用促進計画」をきっかけに、自転車での周遊観光を本格化。サイクリングルートの愛称は公募され、「奈良まほろばサイク∞リング」(略称・ならクル)に決まった。

 ならクルは県内に網の目のように張り巡らせた30以上のルートから成り、その総延長は約600キロに及ぶ。「法隆寺ルート」「室生寺ルート」「竜田川ルート」「吉野川ルート」という名称から分かるように、著名な史跡や観光スポットを結んでいることが最大の魅力だ。

和歌山市の和歌浦周辺のサイクリングロードを走る県サイクリング協会員や市職員たち =2015年11月22日、和歌山市西浜
県が公式サイトなどで公開・頒布している「ならクルマップ」には、ルート周辺の見どころをはじめ、距離や標高差、自転車や手荷物の配送サービス、サイクリスト向けの宿泊施設などが紹介され、初めて訪れても安心してサイクリングを楽しめる。

 ならクルのコースには、道に迷いにくいよう随所に標識が整備されている。奈良盆地は基本的に平坦な道が多いが、周辺の山地を通るコースには多少のアップダウンも含まれ、走りがいがある。

 何より、奈良市周辺や明日香村、吉野など全国的に著名な観光名所を自分の足で巡る旅は、奈良県ならではの楽しみといえる。

 また県内では、レジャー施設に併設された自転車休憩所「奈良バイクステーション」が天理市に開設されるなど、民間の取り組みも広がりつつある。

 さらに、奈良県は27年度から、県内を南北に縦断する全長75キロのサイクリングロード整備も進めている。既存の道路に自転車が走りやすいような舗装を施すなどし、奈良市から大和高田市、五條市など県内10市町をつなぐルートで、平成32(2020)年の東京五輪までの完成を目指す。将来的には奈良と京都、和歌山を結ぶ全長180kmの「京奈和自転車道」(仮称)として完成させる構想もある。

海岸線が魅力、「サイクリング王国わかやま」を宣言

 後発の和歌山県は「サイクリング王国わかやま」のブランド化を目指し、大規模なキャンペーンを展開中。ビワイチのように知名度を浸透させようと、あの手この手で売り出している。県内には「日本最大スケール」を謳う約800kmのサイクリングルート「WAKAYAMA800」が今年度中に整備される予定だ。

 滋賀、奈良にはない和歌山最大の魅力は、海岸線のルートだ。関西有数の海水浴場として知られる白浜や、本州最南端の潮岬など、風光明媚な海の観光スポットは数多い。

 また、南紀白浜空港を利用できることも大きなメリットだ。陸路の利便性は滋賀・奈良両県に劣るが、空路なら東京など遠方からでもアクセスしやすい。

 海岸線のほかにも、熊野や高野山といった世界遺産を巡る山間部、平坦な紀の川サイクリングロードを軸にしたコースなど、各地に張り巡らされたコースでサイクリングと観光を楽しめる。

 和歌山県は今夏、サイクリング王国わかやまのプロモーション映像を制作し、10月には阪急梅田駅の大型ビジョンで放映。東京でもPRイベントを開催するなど、全国各地からの誘客に取り組んでいる。

 またJR西日本和歌山支社は、自転車を折りたたまずにそのまま電車に乗せることができる「きのかわサイクルトレイン」の実証運行を今月4日にJR和歌山線で始めた。11月中は毎週土曜日に上下1本ずつ試験的に運行される。

全国の自治体が競争

 国内の自転車観光を振り返ると、1960~70年代には宿泊を伴う長距離ツーリングが広まり、北海道や九州の大自然を訪ねたり、日本一周を目指したりする冒険のような旅が羨望を集めた。80~90年代には山野を駆けるマウンテンバイクが全盛で、高原や山岳、夏のスキー場などがスポーツ自転車の舞台となった。

 2000年代以降は、細いタイヤで舗装路を軽快に走ることができるクロスバイクやロードバイクが人気となり、サイクリング人口はさらに増加。広島県と愛媛県を結ぶ「しまなみ海道」の風光明媚なサイクリングロードが世界中の自転車愛好家の注目を集めるなど、自転車観光の顕著な成功例が現れた。

 近年は栃木県、埼玉県が国際自転車ロードレースの開催などをテコに盛り上げを図っているほか、北海道、沖縄、大分、山梨、千葉、静岡など多くの都道府県が自転車観光の振興に注力している。

 関西やその周辺においても、兵庫県では淡路島1周ルート「アワイチ」が人気を集め、豊岡市も独自にレンタサイクルを導入して市内の観光に活用。京都府では里山風景が広がる南丹市美山町に、民間の自転車観光拠点「サイクルシーズ」が誕生した。また三重県のサイクリング大会に向けて近鉄電車がサイクルトレインを運行するなど、取り組みは着実に拡大している。

 自治体や公的機関が仕掛ける「官製ブーム」の追い風も受け、サイクリングは身近で健康的なレジャーとしてさらに発展する可能性を広げている。

 

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