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中国人観光客、マナーに不安も熱烈歓迎 SNSオピニオンリーダーが「海の京都」PRに協力

2017/11/07

 国内外から訪れた観光客にSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を通じて魅力を発信してもらう-。どこの観光地でも昨今、こうした戦略が不可欠になっている。京都府は今秋、観光客の人気が高い京都市に埋没している京都北部を海外にPRするため、SNSで強い影響力を持つ中国人を集め、天橋立など北部の観光地をめぐってもらう試みを民間企業と実施した。一方で、文化やマナーの違いによるトラブルに悩まされる観光地も少なくない。観光客の急増に対応できる態勢づくりが課題だ。(桑村大)

瞬時にリツイート

SNSに投稿する写真を撮る中国人KOLたち。彼女たちの投稿は中国で大きな影響力を持つ=10月4日、京都市右京区の東映太秦映画村

 「京都北部という新しいトレンドを中国に発信していただきたい」

 10月上旬、城福健陽・京都府副知事は、京都市右京区の東映太秦映画村に集まった18人の中国人の若者に呼びかけた。

 彼らは中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で10万人以上のフォロワーを抱える。SNS上で大きな影響力を持つKOL(キー・オピニオン・リーダー)と呼ばれる人たちの中でも大物だ。

 今回、18人のKOLは太秦映画村を出発して京都北部を巡るプロモーションツアーに招待された。ツアーは、北部を走る第三セクター・京都丹後鉄道の運営会社ウィラーと、訪日外国人向けのWi-Fi(ワイファイ)ルーターのレンタル会社、スマートフォン向けゲームアプリを手がける中国の法人の3社が共同で主催。訪れた先々の写真や感想を投稿してもらうことで観光資源をPRし、中国からのインバウンド(訪日旅行)のさらなる増加につなげるのが狙いだ。

 太秦映画村で行われた式典には、京都府のゆるキャラ「まゆまろ」や北部各市のゆるキャラら7体が駆けつけた。KOLたちは一眼レフカメラや自撮り棒を手に映画村内を散策。SNSに投稿する写真を撮り、3泊4日のツアーへ旅立った。

 天橋立(宮津市)や舟屋群(伊根町)など、京都北部を代表する観光地の数々を背景に、次々と撮られては投稿される自撮り写真。多くが瞬時にリツイートされるなど、大きな反響があったという。

北部宿泊わずか1万人

 民間企業による一イベントに、なぜ副知事やゆるキャラが駆けつけるほど自治体が応援するのか。背景には、府内の観光地を訪れる観光客数の大きな偏りがある。

 京都府によると、昨年の府内の外国人宿泊客数は約326万人。4年連続で過去最高を更新している。そのうち約76万人が中国人観光客で、全体の約4分の1を占める。

 しかし、市町村ごとの分布を見ると、約318万人が京都市内にとどまり、市外で宿泊するのはわずか7万人あまり。中国人に限ると、舞鶴市や福知山市、宮津市、京丹後市など北部に宿泊するのは1万人しかいない。

 そんな京都北部を外国人観光客にもっと認知してもらおうと、府は日本海に面している北部を「海の京都」と位置づけ、地域活性化と観光振興を目指してきた。

 そのためには、中国人観光客に京都北部について知ってもらうことから始める必要があったのだ。

 ただ、異なる文化を持つ訪日外国人が急増することで、生活習慣の違いから生じるさまざまなトラブルが多発する例もある。

 「なにわの台所」として知られる大阪市中央区の商店街「黒門市場」では近年、東アジアを中心に観光客が急増。客足が遠のいて経営が苦しくなりつつあった商店街に「にぎわいが戻った」と喜ぶ声がある一方、必ずしも良いことばかりではなかった。

 生鮮食品を何度も触ったり、食べ歩きをした後のごみを路上に捨てたり…。マナーの悪い中国人観光客に頭を悩ませる店主も続出した。

トイレ・浴室マナーはその都度

 京都北部の観光地はどのように対応していくつもりなのか。

 伊根町観光協会の吉田晃彦事務局長(39)は「マナーの良い外国人もいれば、悪い日本人もいる」と、中国人観光客の受け入れに不安はないと言い切る。「肝心なのは、この町の魅力と過ごし方をきちんと理解してもらい、楽しんで帰っていただくこと」

 以前は宿泊施設のトイレで紙を流さずにごみ箱に捨てたり、浴室のドアを開けたまま入浴したりする観光客が多かったという。その都度、理由を示しながら理解を求め、改善を図ってきた。

 また、同観光協会には中国人の職員が勤務し、同胞の観光客を相手に文化の違いなどを分かりやすく説明しているという強みもある。宿泊施設を中心に案内板を多言語化するなど、少しずつ受け入れの準備を進めている。

 吉田さんは「住民と観光客が互いに不便なく過ごせるよう、協会が先頭に立ってフォローしていく必要がある」と使命感をもって取り組む。

台湾の人気ブロガーを雇用

マスコットと写真を撮る中国人KOLたち。この後、京都府北部をめぐるツアーに出発した=10月4日、京都市右京区の東映太秦映画村

 宮津市の天橋立観光協会の中島明事務局長(67)も「より多くの方に来ていただけるのは喜ばしい」と前向きに受け止める。同観光協会によると、今年4月以降、市内の案内所を訪れる外国人は前年同期と比べて5割ほど増えているという。そのうち約7割が台湾や香港からの観光客で、中国からの観光客はまだまだ少ない。

 「『海の京都』の魅力が伝わってくれたら、中国人観光客はもっと増える」と、今回のプロモーションツアーの効果に期待を寄せる。

 天橋立観光協会はすでに人気ブロガーでもある台湾人の職員を雇い、PR活動を行っている。関西の観光地を中心に投稿しているブログは人気が高く、この職員に会うのを目的に宮津へ足を運ぶ観光客もいる。

 中島さんは「SNSやブログの方が情報が届く範囲が広いし効果も大きい」とKOLの力を実感しており、「こうしたツールで日本の習慣やマナーについても発信することで、海外に浸透させることができるのでは」と自信を見せる。

 とはいえ、KOLの発信により京都北部で観光客が本格的に増えていくのはまさにこれから。〝おもてなし〟の精神で、トラブルの芽をつむ地道な取り組みも求められそうだ。

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