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技能実習生、介護業界で争奪戦 来月から制度対象 受け入れ態勢整備

2017/10/30
ミャンマー人の技能実習生を送り出す機関が実施したセミナー。介護事業者の担当者ら約20人が参加した=23日、東京都中央区

 外国人が働きながら技術を身に付ける技能実習制度に、11月から介護職種が追加される。入国は年明けになる見通しだが、深刻な人手不足を背景に実習生の採用を内定した介護事業者もあり、争奪戦は既に始まっている。人権侵害に対する罰則が設けられたが、実効性を不安視する声もある。

 ◆費用は1人75万円

 「人手不足はもっと深刻になる。早く手を打ちましょう」。10月中旬、東京都内で開かれたミャンマー人実習生の送り出し機関「ミャンマーユニティ」のセミナー。責任者の北中彰さんの説明に、関東や静岡の介護事業者の担当者ら約20人が真剣に聞き入った。

 この送り出し機関は、日本での実習を希望するミャンマー人向けに、現地に学校を開設。介護と日本語を14カ月学んだ人を日本の介護事業者に紹介する。既に約190人が入校、うち約90人が栃木県や九州などの16事業者で採用が内定した。来年5月の来日を目指す。

 学費や渡航費など受け入れ側が負担する初期費用は1人当たり約75万円。参加した介護施設長は「日本人の応募はなく、やっと採用してもすぐ辞めて求人広告費や紹介料が無駄になる。実習生に投資するほうがいい」。

 待遇の低さや仕事の過酷さから、介護の人手不足は深刻な状態が続く。拍車を掛けるように、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年には要介護認定を受ける人が604万人(15年は450万人)に増え、約38万人の介護職が不足すると政府は推計する。

 介護大手ニチイ学館(東京)は1月、受け入れ専門の部署を発足させた。現地研修の充実や渡航後の生活相談にも対応し、来夏にはフィリピンから第1陣が来日予定。初回の規模は未定だが、将来的には中国などにも対象を広げ「数百人規模に拡大したい」(広報)。

 SOMPOケアグループ(東京)は来夏、中国とベトナムから受け入れを予定。「慎重に進めたい」とし、経済連携協定(EPA)による人材を含め計10人程度の受け入れからスタートする考えだ。同じ出身国で既に日本で働くスタッフを相談相手とし、言葉や介護技術の習得を手助けする。

 中小の事業者も躍起だ。ベトナムから受け入れ予定の北海道の社会福祉法人は約8000万円をかけて寮を建設、給与も地域の相場より高くした。「奪い合いは始まっている。条件の良さで勝負したい」と担当者は力説する。

 ◆人権侵害の監督強化

 一方、業界内では制度に疑問の声も出ている。ある事業者は「帰国後に介護で働く先がなければ実習生には意味がない。人手不足の日本側にしかメリットがないのではないか」と話す。

 制度をめぐっては、農業や建設などで実習生を酷使するなどの例が相次ぎ、国連から「強制労働」と批判された。政府は人権侵害に罰則を設け、立ち入り調査する監督機関も新設した。

 しかし、外国人労働に詳しい「アジア・太平洋人権情報センター」(大阪市)の藤本伸樹研究員は「新機関の人員態勢一つとっても、本当にチェックできるか疑問だ」と指摘。「介護の仕事はきつく、だからこそ日本人の離職率が高い。相手の貧しさにつけ込むような形で補う制度自体に問題が残る」と話す。

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