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訪日客増で注目の地方航空路線 プロペラ機人気復活のワケ

2017/10/27

 国内の地方路線で活躍する100席未満の小型機に“新顔”が登場している。ジェット排気でプロペラを回す「ターボプロップ(新型プロペラ)」旅客機だ。九州拠点の地域航空会社2社が仏ATRの「ATR42-600」を導入した。政府が平成32年に訪日外国人数を4000万人に引き上げる目標を掲げる中、地方観光の“足”となる小型旅客機は更新期を迎えている。海外では、地域を結ぶ小型旅客機はリージョナルジェット(RJ)が市場を席巻したが、新型プロペラ機が盛り返しつつあるという。現地に飛んでその真相を探った-。

日本エアコミューターのATR42-600。鹿児島空港からのフライトを終え、乗客が降りるとすぐに離陸の準備が始まった=10月11日、鹿児島県・沖永良部島「えらぶゆりの島空港」(日野稚子撮影)

 ATRは10月中旬、ATR42-600を2機導入した日本エアコミューター(JAC)鹿児島-沖永良部便の一部座席を使い、マスコミや航空会社関係者向けの搭乗会を開催。JACは沖永良部島や屋久島、種子島など離島と鹿児島の間で7路線を運航しており、ATR9機(オプションを含む)の導入を決めている。

 記者が鹿児島空港の展望デッキから滑走路を見ると、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)の大型ジェット機やRJが止まっていた。プロペラ機では、スウェーデンのサーブ「SAAB340B」やカナダのボンバルディア「DHC8-Q400(Q400)」の姿も。

 その向こうにATR42-600が駐機していた。全長22.7メートル、全幅24.6メートル、全高7.6メートル。スマートさが目立つQ400と比べてどっしりとした印象。白い機体の後方には大小9輪の赤いハイビスカスの花があしらわれていた。

 搭乗ゲートを抜けてバスに乗り、後方ドアから乗り込んだ。通路を挟んで左右2席ずつに分かれた座席は計48席。機内はかなりコンパクトだが、白いLED照明が明るく、乗客が狭く感じないよう工夫されている。

 座席はJALのジェット機と同じ黒のシートだ。記者は身長165センチのガッチリ体形だが、足元には若干のゆとりがある。JALの「エコノミークラス」のクッションより薄っぺらい感じだが、座り心地はそれほど悪くない。

 いよいよ出発。滑走中の加速に身構えていたが、拍子抜けするほど静かな離陸だった。

 ATR42-600は、機体中央の上部からプロペラ付きの主翼が左右に張り出している。記者が座った窓側席は左翼の真下に当たり、プロペラが目に入ったが、飛んでいる最中、その音は気にならなかった。

 離陸後は“ゆっくり”と上昇する印象で、静かに巡航高度の5500メートル超に達した。RJの平均巡航高度(約1万メートル)の半分ほどの高さのため、窓から島々がよく見えるのだ。鹿児島-沖永良部便の旅客機は大小さまざまな島の上空を飛ぶが、「どの島の上空にいるか」を認識でき、景色を楽しむには申し分なかった。

 また、RJ客室内の平均の気圧は標高約2200メートルレベルなのに対し、ATR機内は同約1160メートルレベルのため、気圧が低くなりすぎないという。記者も通常のジェット機ではよく耳鳴りに悩まされるが、今回の搭乗会では気圧変化に伴う耳鳴りが起きずに済んだ。

 さらに、この日の鹿児島空港の気温は25度を超えていたため記者は薄着だったが、ATRの巡航高度はジェット機より低いためか、機内でも寒さは感じなかった。

 客室乗務員(CA)の山田瑞恵さんは「(ATRの)通路幅は従来のプロペラ機より広いので、サービスがしやすい」と話していた。

 ボンバルディアQ400(72席)では通路に乗客の腕や足が飛び出ていると、ドリンクサービス用のかごがぶつかってしまうが、ATR機は多少乗客の腕や足が通路へはみ出しても、支障はないという。

 途中、ドリンクサービスや記念絵はがきの配布まであり、1時間22分のフライトはあっという間に終わった。ただ、CAは1人のみで忙しそうだ。短距離路線のため「ドリンクは不要では」と思う半面、サービスされればうれしくなってしまう。

 到着した沖永良部島の「えらぶゆりの島空港」ロビーでは、同機で鹿児島へ折り返す便の搭乗案内がもう始まっており、着陸から1時間後には離陸する慌ただしさだ。小さなバッグ1つを持った女性客もみられ、「生活路線」の印象が強い。

 ATRのクリスチャン・シェーラー最高経営責任者(CEO)は10月10日に東京で開いた事業説明会で、日本を「重要市場」と位置づけた。その理由に挙げたのが、離島便を含めた地域間路線だ。同社は欧州航空機大手エアバスと伊レオナルドの合弁会社で、50~90席のプロペラ機の世界シェア首位。燃料コストがジェット機より8割も安いのがうたい文句で、100カ国200社以上で採用されているという。

 ATRによると、37年までの日本の地域間航空機の潜在需要は100機。シェーラーCEOは「全部取れる可能性? 150%」と意気込んだ。内訳は、老朽化プロペラ機の更新50機▽RJからの切り替え30機▽新規ルート開設や政府専用機など20機-で、「これは控えめな数字」と野望を隠さない。

 搭乗会に参加し、パイロットとしてATR42-600を操縦したこともあるフジドリームエアラインズの米原慎一副社長は「ジェット機に比べて静か」と評価。その上で、「『近くのスーパー』にフェラーリで行く必要はないでしょう」と持論を展開した。

 ATRによると、かつて世界の地域間航空機の主役はRJだったが、短距離で乗客数の少ない路線では「オーバースペック(過剰品質)」になりがちだった。近年は燃費に優れ、音も静かな新型プロペラ機が徐々に盛り返しつつある。

 ATR42-600の課題はスピードの遅さだ。巡航速度はQ400の時速600キロ台に対し、500キロ台にとどまる。

 地域間航空機をめぐっては、国産ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の開発も進んでいる。各社の顧客争奪戦が活発化しそうだ。(経済本部 日野稚子)

                   ◇

 ATR  欧州航空機大手エアバスと伊レオナルドが50%ずつ出資し、1981年に設立。仏トゥールーズに本社を置く。座席数50~90クラスの市場で世界シェア約3割を占め、これまでに約1200機の納入実績がある。

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