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どうなる「遺伝子組み換えでない」表示 混入していても「でない」現行ルール見直しの要望出る

2017/10/23
米国でも「遺伝子組み換えでない」表示は多い。ポテトチップスのパッケージ右下にある蝶のマークが「遺伝子組み換えでない」の表示(平沢裕子撮影)

 「遺伝子組み換えでない」の表示は消費者を誤認させ問題であるとして科学者団体と消費者団体が、消費者庁の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」に対して見直しを求める要望書を出した。両団体、遺伝子組み換え作物をめぐる基本的な立場は対立している。ところが、見直すべきという意見は一致。果たして検討会は「でない」表示に、どう決着をつけるのか。注目が集まっている。

混入率5%以内なら「遺伝子組み換えでない」

 消費者庁の検討会は、食品などにおける遺伝子組み換え表示の対象商品や現行ルールの見直しを4月から行っている。9月末に第5回が終わった。両団体が問題視する「遺伝子組み換えでない」という表示ルールについて、いよいよ検討が始まる見込みだ。

 この「でない」表示。「でない」とあるが遺伝子組み換え作物の使用が「ゼロ」だという意味ではない。「農場段階から分別管理している非遺伝子組み換え作物」に生産や流通の過程で「意図せずに遺伝子組み換え作物が混入」することがあるが、その混入率が5%までなら「遺伝子組み換えでない」と表示しても構わない。これが現行ルールだ。

両極の団体が変更を要望

 この「遺伝子組み換えでない」表示に関して6月、日本消費者連盟(東京・西早稲田)が検討会に要望書を出した。

 同連盟は1974年設立。合成洗剤や化粧品、農薬、食品添加物、電磁波などを「いのちを脅かす危険なもの」とし、消費者が「買わない・使わない」ことで社会を変えようと訴えるNPO法人だ。

 遺伝子組み換え作物については「多国籍企業による農業・食料支配の最大の武器」と問題視している。遺伝子組み換え作物によって「農家や消費者の健康が破壊されている」という立場だ。

 9月には日本農学アカデミー(東京・赤坂)が検討会に要望書を出した。

 こちらは、農学系の大学や国立研究機関の長や経験者を会員とする日本の農学研究者のトップ集団だ。

 遺伝子組み換え作物を活用することが「日本の農業のイノベーションと食料の安定供給に貢献する」とし、公開セミナーなどで遺伝子組み換え作物の意義を消費者に提示している。

 遺伝子組み換え作物をめぐっていわば対立する立場の団体が、現行の「遺伝子組み換えでない」表示は「消費者を誤認させ、選択の自由を阻害している」との点で口をそろえ、現行ルールの変更を求めたのだ。

 ただ、最終的に求めるところは若干異なる。

 連盟の要望は「『意図せざる混入率』をEU並みの0・9%未満に引き下げること」。

 アカデミーの要望は「『でない』表示は遺伝子組み換え成分がゼロの食品に限定すること」。アカデミーは、そもそも「でない」表示は遺伝子組み換え作物が安全ではないという誤解を消費者に与えるものだと憂慮している。また、「表示は正確であるべき」との原則から「混入率ゼロ」であるべきという厳密なルールを求めているわけだ。

表示の現行ルール

 そもそも遺伝子組み換え表示とは何か。これは安全性が確認された遺伝子組み換え食品について、消費者の「知る権利」「選択の権利」を担保するための制度だ。

 現在、遺伝子組み換え表示が義務づけられているのは、大豆やトウモロコシ、パパイアなど8作物と、それらを現材料とした豆腐や納豆、ポテトスナック菓子など33加工食品。

 例えば、分別管理をした遺伝子組み換えの大豆を使った豆腐なら、その外装に「大豆(遺伝子組み換え)」と表示しなければならない。

 あるいは分別管理をしていない大豆を使ったなら、「遺伝子組み換え不分別」と表示する義務がある。

 現在の遺伝子組み換え表示についてまとめると次の通り。

 ・分別管理をした遺伝子組み換え作物なら「遺伝子組み換え」と表示義務

 ・分別管理をしない、あるいは分別管理をしても5%超の混入がある場合、「遺伝子組み換え不分別」と表示義務

 ・分別管理をした非遺伝子組み換え作物に「意図せず」遺伝子組み換え作物が混入し、その混入率が5%までなら「遺伝子組み換えでない」と任意で表示できる

 現行ルールで遺伝子組み換え作物が混入しているのに「遺伝子組み換えでない」と表示できるのは、遺伝子組み換え作物と非遺伝子組み換え作物の両方を作っている米国などから農作物を輸入する際、分別管理をしても、同じ穀物タンカーを使うなど大量物流システムの中での混入が避けがたい事情を考慮したからだ。

 当時の事情を元農林水産省職員で、遺伝子組み換え表示の仕組みづくりにかかわった公益財団法人「食の安全・安心財団」の中村啓一事務局長が説明する。

 「分別管理して輸入した非遺伝子組み換え作物は、流通過程で遺伝子組み換え作物が混入する可能性が高いので、微量の混入を認めないと、すべて『遺伝子組み換え不分別』との表示義務を負うことになりますが、事業者の多くはこの表示を嫌がった。当時、遺伝子組み換え作物は消費者に非常に嫌われていたからです」

 つまり“5%ルール”は事業者の要望をくんだものだが、輸入大豆を使うから値頃感のある豆腐や納豆を提供できる。遺伝子組み換えが混入していても「遺伝子組み換え不分別」の表示義務がないので、消費者も抵抗なく購入している。そういう構図を考えると「消費者にも大きなメリットになっている」と中村事務局長はいう。

消費者が誤認しない表示を

 こうした現行ルールなどについて今後どうするか。消費者庁の検討会は来年3月までに報告書をまとめる予定だ。

 消費者庁は9月に加工食品に「原料原産地表示」を義務付けた際、原産国が複数にわたり国名を明示できない場合などは「国産または輸入」といった例外的な表記を認めた。これが、消費者の誤認を招くのではないかと指摘されている。

 せめて遺伝子組み換え表示では、消費者が誤認しない正確で分かりやすいものとなることを期待したい。(文化部 平沢裕子)

                   ◇

 ●遺伝子組み換え作物 商業栽培が始まって21年になるが、摂取によってヒトに健康被害が起きた、とする事例はいまのところ医学論文などでは報告されていない。また、米国科学アカデミーは2016年5月、遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全で環境を破壊することはなく、がんや自閉症、アレルギー、遺伝的疾患などの増加を引き起こす証拠はない、とする報告書をまとめている。GM(Genetically Modified)作物との略称も。

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