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体験型観光 爆買いの次はコレ こんなプランが花盛り

2016/08/01
201608011518_1.jpg楽天グループの一員として訪日客向け体験ツアーを提供するボヤジンのプランで、芸者の踊りを見た後、記念撮影する外国人女性

東京・新宿のロボットレストラン、フクロウカフェ、相撲の朝稽古、芸者体験、懐石料理-。

いずれも訪日外国人観光客に人気のスポットだ。かつては観光地を訪れることを目的としていたが、最近は観光地に行って体験できることを重視する傾向が強まっている。

こうした変化を捉え、インターネット旅行会社は訪日客に喜ばれる体験型プランづくりに積極的に取り組んでいる。

団体ツアーの定番コースに飽き足らず、自分だけのオリジナルツアーを組みたい訪日客から「英語で案内してくれて、楽しめるものが少ない」と不満の声を聞くからだ。

自然環境や伝統文化など観光資源が豊富な日本は体験型ツツアーを楽しみたい訪日客にとって魅力的。それだけに旅行会社のプラン探しも熱気を帯びている。

アルゼンチン母子が訪れる墨絵教室

東京・神保町のギャラリー「豊國アトリエ」にアルゼンチン人母子が訪れた。訪日客向けに開催している「Sumi-e Class Experience(墨絵おえかき)」( 1人2,000円、1時間)を体験するためだ。

201608011527_1.jpg墨絵画家の本多豊國氏が始めた墨絵教室を、息子の優太店長が「難しいことを考えずに、描くことの楽しさを体験してもらいたい」とエンタテインメント性を重視してアレンジした。

母子は、優太店長の英語による説明に耳を傾けながら、見よう見まねで筆を動かしていた。墨で和紙に絵を描く楽しさを知った母親は「大満足。内容も分かりやすく、先生の説明でいろいろと知ることができた。帰りに和紙を買いたい」と喜んだ。と同時に「このほかに英語で説明してくれる体験プランがないので、どこにも行けない」と嘆いた。

こうした声に応えているのがネット旅行会社で、墨絵体験は体験型ツアーの予約販売サイトを運営するベルトラ(東京都中央区)が今年4月から取り扱いを始めた。

1年前から「墨絵ワークショップ」として開催していた優太氏にツアーへの参加を呼びかけたのは、同社国内事業本部商品企画部で働くイタリア生まれのテルスオロ・キアラさん。英語で対応できる体験型プランを探していたとき、日本人顧客から紹介されたという。「墨絵で日本文化を体験できる。しかも先生は英語も上手で丁寧に教えてくれると聞いた」のが誘った理由だ。

同社が集めた体験型ツアーは英語サイトで約3,000種類、中国語サイトは簡体字、繁体字でそれぞれ約1,000種類という。

倉上智晴副社長は「訪日客のうち個人がターゲット。何を体験できるかを重視するので、『一歩先の体験』をミッションに体験型プランを用意している」と品ぞろえに自信を見せる。

最近では東南アジア向けビザ緩和の影響で増加しているイスラム系の訪日客に対しイスラム教の戒律に沿ったハラル料理を提供するプランづくりにも力を入れている。

こうして英語サイトでの取り扱件数は2014年の133から 15年には 266と倍増、 16年には 3,000まで膨れ上がった。団体で定番の観光地を訪れる訪日客ばかりでなく、観光地で何をして楽しむかを重視する旅慣れた個人旅行者が増えてきたからだ。

「都内観光で人気なのは築地、相撲部屋、寿司づくり」。楽天グループの一員として訪日客向け体験ツアーを提供するボヤジン(東京都渋谷区)の高橋理志最高経営責任者(CEO)はこう語る。

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同社はガイドブックだけでは満足できない訪日客向けにユニークな現地体験を探せるサイトを運営。忍者になりきったり、芸者に変身したりして日本の伝統文化を体験できるツアーをそろえる。

地方創生につながる 自治体連携型プラン

最近は地方にも注目。地方創生につながると考える自治体と連携して体験型プランの開発に取り組む。「(東京、富士山、京都、大阪をめぐる)ゴールデンルートは引き続き人気だが、訪日客の誘致に熱心な自治体は少なくない」という。

金沢市もその一つで、楽天トラベルが金沢経済の活性化を目的に結んだ連携協定に基づき企画した6つの体験型プランを扱う。いずれもボヤジンによる現地視察などで選び抜いた金沢ならではの伝統文化や修行体験などを盛り込んだ。

中部運輸局からは、政府が訪日客を地方に分散させるため設定した広域観光周遊ルートのひとつで、中部9県の観光資源を紹介する「昇竜道(ドラゴンルート)」の体験型プランづくりを依頼された。

このうち岐阜県恵那市のサイクリングツアーは、サイトにアップしてから1カ月ほどでシンガポールの家族らが購入した。江戸時代の面影を残した中山道の宿場町や、風光明媚な恵那峡などの魅力をアピールしたことが受け入れられたようだ。

アジアの関心は東京から地方へ

電通が今春に20カ国・地域で実施した調査でも、相変わらず東京が行きたい都道府県のナンバーワンだが、アジアの関心は地方にシフトしていることが明らかになった。体験したいことも温泉、自然、桜、ローカルフードなど多様化している。電通は地方ブームの背景として「個人観光客のリピーターが増えている」と説明する。

ボヤジンの高橋氏は「日本に来なければ体験できないことを紹介していきたい。体験すれば日本への理解も深まり、日本に来たかいがあったとなるはず」と指摘。その上で「ディスカバー、アメージング、ユニーク」をキーワードに魅力的なプラン探しに東奔西走。

ベルトラの倉上氏は「日本中にアンテナを張って、われわれにしか紹介できないものを集めていく」と強調、リピーター向けにユニークで深みのあるプランを提供していく。

ただ「国・地域によって体験したいことが違う」とベルトラの武部光子経営サポート本部広報室長は指摘する。欧米は日本の伝統に興味をもち、東南アジアと台湾は流行体験、シンガポールや香港は四季を楽しむという。しかも旅のスタイルは各人各様なので、興味をそそる体験プラン探しはつきない。

政府は20年時点で訪日客を4,000万人に増やし、消費額を8兆円に引き上げる目標を決めた。達成には英語で体験できるプランの拡充が求められる。

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