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ムスリム女性を美しく 化粧品大手、東南アジア市場に参入相次ぐ

2017/10/10

世界の化粧品大手が東南アジア地域の市場に熱い視線を注いでいる。イスラム教徒(ムスリム)も大勢住む“人種と文化のるつぼ”である同市場は右肩上がりの成長が期待されるためだ。このため、韓国最大手のアモーレパシフィックをはじめ、仏ロレアル、米エスティローダーなど参入企業は後を絶たない。各社、東南アジアの女性のニーズに合わせた製品を投入し、あの手この手で市場の掘り起こしを狙う。

年間消費支出8兆円

シンガポールにあるアモーレの直営店で商品をチェックする女性(ブルームバーグ)

シンガポールの消費者調査機関、アジアコンシューマーインサイト研究所によると、2019年までにムスリム消費者の年間の支出は730億ドル(約8兆2200億円)に達するという。また、調査会社ユーロモニター・インターナショナルは、東南アジア地域の化粧品市場とスキンケア市場の売上高が20年までに96億ドルに達すると試算している。

高成長が見込まれる東南アジア市場の開拓に躍起になっているのがアモーレだ。北朝鮮のミサイル攻撃に備えて、米国の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を配備した韓国に対して中国が反発し、同市場での韓国製品の不買運動が続いているためだ。ユーロモニターの調査アナリスト、サニー・ウム氏は「中国と韓国の政治的衝突は、韓国の理美容品の輸出業者にとって深刻な脅威となっている」と分析している。

しかも、アモーレの16年の売上高のうち韓国と中国で約9割を占める。このため、両国間の政治的緊張は同社の経営を揺るがしかねない。同社は中国に代わる新たな市場として東南アジア地域のムスリム市場に白羽の矢を立てたというわけだ。

アモーレの東南アジア市場への力の入れようは同市場向けの商品で垣間見られる。東南アジア地域は、中国と韓国とは気候や消費者の肌の色も違う。インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムのムスリム社会では、祈りの前に1日に5回顔を洗うため、化粧を簡単に落として、すぐにつけ直しができる商品を求めている。

また、アモーレの東南アジア事業責任者、ロビン・ナー氏は「ヒジャブ(スカーフ)を着用するムスリム女性は、顔の露出されている部分をできるだけ強調したいため、鮮やかな色の口紅やアイシャドーを好む傾向がある」としており、こうしたニーズを満たした商品開発に余念がない。

こうした商品戦略が奏功し、アジア太平洋地域の化粧品市場で存在感を見せつつある。ユーロモニターによると、11年に3%だった同地域のシェアは、16年には6%に倍増。競合のエスティローダーを上回ったという。

ただ、東南アジア地域におけるアモーレの16年の売上高は1500億ウォン(約147億円)。全社売上高に占める割合は3%を下回っており、同社のさらなる飛躍には同市場の深耕が喫緊の課題となる。

販売網拡大が鍵

東南アジア市場攻略のための策として位置付けているのが販売網の拡大だ。現在、同地域での直営店は250店舗だが、20年までに新たに150店舗を出店する計画だ。販売力の強化だけでなく、研究開発・生産拠点の整備も同時に進める。

17年にシンガポールに研究拠点を開設したほか、20年にはマレーシアのジョホール州に1100億ウォンを投じて生産拠点を建設する。こうした取り組みで、20年までに同地域の年間売上高を昨年比3倍に増やしたい考えだ。

ハラール市場を虎視眈々(たんたん)と狙うのはアモーレだけではない。有望市場をにらみロレアルも東南アジア地域のムスリム化粧品の販売を強化している。

同社はイスラム教の戒律に従った商品であることを示す「ハラール認証」を受けた工場をインドネシアで運営、拡販を目指す。

調査会社アマナ・キャピタル・グループのアバス・ハリル最高経営責任者(CEO)は「東南アジア地域のムスリムの人口は約3億人。同地域は化粧品を含むムスリムの消費財の流行の仕掛け人といえる」と指摘した。

さらに、同氏は「東南アジアのムスリム女性は購買力を拡大させているだけではなく、経済活動のあらゆる面で一段と重要な役割を担う」とみている。(ブルームバーグ Sterling Wong、Lisa Du)

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