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関西空港で「中国人白タク」横行 同胞の訪日客目当て…その実態は

2017/09/28

“爆買い”という社会現象を日本で起こし、いまなお訪日の多さが目立つ中国人。ニーズが膨らめば新たなビジネスが生まれるのは世の常だが、それが非合法とあっては事は穏やかではない。関西国際空港では近年、中国の業者に登録した在日中国人が、自家用車を使って有料で中国人観光客を運ぶ「白タク」が横行していると聞いた。予約や支払いをスマホなどで行うため、取り締まりが難しいという。日本を走る「中国式白タク」は一体どのようなものか、中国に6年間留学経験のある記者が実態を取材した。(神田啓晴)

日本円の現金支払いも

関空の停車レーンにはワゴン車が多く、電話をしているドライバーからは中国語も多く聞かれた=関西国際空港

平日の午後、関空の周辺道路にずらりと並ぶ大型の国産車。ナンバーはいずれも白、つまり一般の自家用車だ。どうやら、「客待ち」中の中国人らしいが、待っているだけでは白タクかどうか判断できない。様子をうかがっていると、到着した1台のワゴン車から大きなスーツケースとともに降りた中年の夫婦が、運転手らしい男に日本円の現金を手渡していた。

夫婦の会話は中国語。これは、中国人観光客を運んできた白タクに違いない。そう思って中国語で夫婦に話しかけてみた。「中国人の観光について調べているのですが、どの配車アプリを使って関空まで来たのですか」

驚いた表情の夫婦は記者から目をそらすと、「友達の車だよ」と連呼し、逃げるように空港へ入っていった。それなら、なんで日本の札でお金を払ってたのか。そう心の中で突っ込んだが、「友達」と釈明されれば、違法な白タク行為と立証するのは確かに難しい。こうして中国式白タクは白昼堂々、ずらり並んでいるようだ。

中国は世界最大の“合法白タク国”

関空の停車レーンにはワゴン車が多く、電話をしているドライバーからは中国語も多く聞かれた=関西国際空港

そもそも「白タク」とは、タクシーなどの事業用車両が緑のナンバーなのに対し、自家用車が白ナンバーであることから付けられた名称だ。営業許可を受けていないので、国内ではもちろん違法だが、実は中国では昨年11月、ルールを定めた上で「配車サービス」として自家用車をタクシーのように使うことが合法化されている。

5年前に設立された「滴滴出行(ディーディーチューシン)」という企業は現在、中国最大手の配車サービス業だ。「微信支付(Wechatpay)」「支付宝(アリペイ)」といったモバイル決済が可能で、現金のやり取りが不要という手軽さに加え、ドライバーの身元を事前確認し、金額を事前提示してもらうことができ、さらにラッシュ時でも捕まえやすい-など、そのサービスは日本のタクシーと比較しても相当充実している。アプリを使うなどするため利用者は登録されることになるが、現在、登録ユーザーは3億人以上ともいわれる。

確かに記者が留学した上海でも、「足」はもっぱらタクシーだった。地下鉄整備がまだ途上で、バスは渋滞に巻き込まれて使えないうえ、なんと言っても安い。上海のタクシーの初乗り料金は14元(約240円)で、観光客の足として手軽に利用されていた。

有名アプリでは大阪に1300人超のドライバーが

そんな中国の「白タク」は、日本でどのように運行されているのか。中国ではスマホアプリでの予約が主流なので、ネットで日本で運営している配車サービスを調べてみた。

まず、目についたのは「皇包車」というスマホアプリ。公式サイトをのぞいてみると、9月12日時点の在日中国人ドライバー数は、東京が最多の1895人。2番目に多いのは大阪の1311人で、北海道も284人、沖縄にも164人いるという。

「中国語ガイドによるドライブコース」の案内も。大阪は「USJ→梅田空中庭園→道頓堀グルメ街 中国語1日ガイド」(出発は空港やホテルなどから)が1人331元(約5600円)から。京都なら「和服体験 哲学の道→醍醐寺→伏見稲荷大社」が428元(約7200円)だ。

神戸は「神戸空港→三宮センター街→北野異人館→六甲山展望台→有馬温泉」が同428元、奈良~京都は大阪への帰路も含めて「東大寺→奈良公園→平等院→嵐山」で同505元(約8500円)から。関西の観光地はほぼ網羅され、充実のコース設定になっている。

ほかには「1日チャーター」「空港送迎」「片道送り迎え」なども。大阪で5時間チャーターしても829元(約1万4000円)で、日本の大手タクシー会社の料金(2万4200円)より1万円も安く設定されていた。

ネットで予約、ドライバーも選択

ほかにも、日本でサービスを展開しているという「Ding Taxi」というサイトを発見。全世界50以上の都市でサービス展開をしているとうたっており、空港送迎のほか中国人ガイドによる観光ドライブ、ビジネス・ゴルフ用のチャーター、マイクロバスによるスキー場(軽井沢や富良野など)への送迎のサービスなどを展開しているという。

サイトから予約が可能で、成田や羽田、関空など主要国際空港のほか、新千歳や富山など、地方空港を含む8つが「出発地点」になっている。関空-難波駅を選んでみると、プリウスやアルファードの写真とともに、利用料が表示。予約時(8月末)の最安値は1万3000円で、日本の正規タクシーとあまり変わらない値段だった。

このサイトでは、ドライバーも選択できる。各ドライバーへの評価も掲載されており、「日本に詳しく、運転は安全。礼儀正しい。また日本にくれば必ず再利用する」「時間通りに来てくれた」「場所を間違えても迅速に連絡、迎えに来てくれた」など、100以上もの評価が掲載されているドライバーも。

支払い方法はネット決済のほか、現地での現金払いも可能。ただし、予約段階で予約金2000円と手数料650円をネット上でカード決済する必要がある。

大阪府内の白ナンバー

「中国式白タク」らしき車両。日本の小型タクシーでは載せられないほど多くのスーツケースを載せていた=関西国際空港

取材によると、関空では、一般ドライバーが送迎に使う場所が待ち合わせに使われるようだ。在日中国人のある男性ドライバーは、大阪府内の白ナンバーのトヨタのミニバンを使用。客がくると、さっと「荷物を」とスーツケースもトランクへ入れるなど、細やかなサービスもこなれた感じだ。

聞けば、男性は40歳で、中国東北地方の遼寧省出身。日本語を学ぼうと大阪の大学へ留学以来、15年間日本に住んでいるという。普段は貿易関係の仕事をしているといい、「よほどの用事がないと中国に帰らない」「今は『中国と比べて』ではなく『日本と比べて』を基準にしている」と、日本語を交えながら話した。

運賃の8割がドライバーに

中国では合法なシステムでも、日本で営業するには日本政府の許可を得なければ、道路運送法違反にあたる。男性に聞くと「非正規だよね」と認識はしている様子。男性が従事しているのは「本業ではないから、月15回ぐらい」といい、「家族もいるので、あまり冒険はしたくない」と、摘発を避けるため空港送迎のみを行っていると明かした。

ところで、運賃のうち男性が受け取れるのはいくらなのか。聞いてみると「8割くらいかなあ。関空-難波間だと1万3000円だから、100元(約1700円)は手数料として差し引かれるね」。運営会社は結構な利益を得ているのだった。

摘発難しい

スマホで予約・決済が完結する「中国式白タク」システムは証拠をつかみにくく、当局による取り締まりが難しい。今年6月、白タク行為をしていた中国籍の男2人が道路運送法違反容疑で沖縄県警に再逮捕されたが、別件で逮捕された両容疑者の口座などを調べる中で証拠を確保できた珍しいケースだったという。

日本の正規タクシードライバーは「中国式白タク」をどう思っているのか。関空で客待ち中の男性運転手(68)は「そもそも現金のやり取りがないと取り締まりできへんのやから、手の打ちようがない」とあきらめ顔。別の男性(70)は「ここ1年で白タクは特に増えたと思う。だいたいがワゴン車で来とるようやね」とし、「白タクなのか、ほんまに友達の送迎なのかは分からんのが正直なところ。金のやり取りも見たことないし…」と話した。

奈良市の大手タクシー会社の男性取締役(68)は「中国式白タク」について「中国人は何でもアリですわ」と苦笑い。「こちらは国の許可を得て、責任を持って仕事している。でも、白タクは事故に遭っても保障もない。外国に来たとき、母国語が通じるのが安心なのは分かるけれど…」と話していた。

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