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中国人観光客「ブラックリスト」で実名公表から2年半…罰則ほぼゼロで効果はあったのか

2017/09/25

世界中で評判がよくない中国人観光客のマナーを改善しようと、旅先で悪質な行為をした中国人を「ブラックリスト」に掲載し、ホームページ上で実名を公表している中国当局の取り組みについて「効果が上がっていない」などと否定的な声が出ている。その理由について、実名などが公表されること以外は、罰金や出国禁止などのペナルティーがほとんどないことが指摘されている。ただ、ブラックリストの存在については「中国人旅行者のマナーアップにつながっている」と評価する声もあり、10月1日の「国慶節」にからむ大型連休を控え、取り組みの是非が話題になりそうだ。

リスト入り約2年半で29人

201709221908_1.jpg今年8月、ギリシャ・アテネの国立考古学博物館を訪れた中国人観光客たち。「ブラックリスト」の存在が悪質な行為の歯止めになっているかどうかは意見が割れている(ロイター)

中国当局が「遊客不文明行為記録管理暫行弁法(観光客による非文明的行為の記録を管理する暫定法)」という法律を施行し、「ブラックリスト」の制度を設けたのは2015年4月。観光地で文化財を破壊するなど悪質な行為が頻発し、問題になったのを受けてスタートした。

一部の行為を見せしめにして公表し、他の旅行客への啓発になって全体のマナー向上につなげるというのが狙いだった。公表されるのは氏名や問題行動の概要などで、期間は悪質度などに応じて3~10年とされている。

これまでに

・飛行機内でトラブルになり客室乗務員にカップ麺の中身をかけた

・出発前に飛行機の非常出口を開けた

・鍾乳洞に三脚を立てて傷をつけた

といった行為についてリストに掲載。2年数カ月間で計29人がリスト入りした。29人のうち28人は旅行客で、残る1人は、客に暴言を浴びせるなどしたガイドだ。

日本で問題行動を起こした上海の男もリストに入った。この男は15(平成27)年9月、札幌市内のコンビニで、会計の前にアイスクリームを食べ始めた妻が男性店員に注意されたことに腹を立て、この店員の顔を殴ってけがをさせ、北海道警に傷害容疑で現行犯逮捕された。

中国人の旅行先での問題行動については中国国民の間でも問題視する傾向が強かったことから、この取り組みは当初からおおむね支持され、インターネット上では「掲載期間を無限にすべきだ」「国外追放処分にしろ」などと罰則強化を求める声も多かった。

名前公表のみは甘い?

今年6月、中国メディアの澎湃新聞がブラックリストについて「効果が上がっていない」「形ばかりだ」などと批判的に伝えた。ブラックリストに入ったという人物が「生活に何の影響もない」と話しているのを紹介し、問題点を指摘している。

報道によれば、ブラックリストに入っても名前が公表されること以外は特に罰則がない。航空券や列車の切符購入が制限されることもなく、海外や観光地の訪問について特に規制がないという。このため、リストに入っても再び問題を起こした場所を訪れることが可能。リスト入りしたという男性は中国メディアの取材に「リスト入りしたあとも生活に影響がない。海外を何度も旅行して楽しんでいる」と話している。

ただ、ブラックリストの効果を疑問視する声は前々からあった。昨年10月の中国の大型連休の際に一部の中国メディアが取り上げ、「観光地での非文明的な行為は続いている」などと伝えた。記事は、ブラックリストは旅行会社や航空会社などの観光関連企業などにも伝えられているものの、団体旅行参加や航空機搭乗を拒否されるケースはほとんどなく、当局による罰金などの処罰もないと指摘。米紙ニューヨーク・タイムズも同時期に取り上げ「罰金などの処罰がなければ、予防の効果は見込めない」などと伝えていた。

「悪質行為に歯止め効果」の声も

一方、今年7月に人民網が「中国人観光客の海外での評価が向上した」とする中国社会科学院新聞伝播研究所などの報告書について取り上げた記事の中で、中国の旅行サイトの関係者が「ブラックリストが導入されたことがマナー改善の背景にある」と、ブラックリストの効果があるとした証言を紹介。中国のネット上でもブラックリストについて「厳しい罰則はなくても、名前が公表されたら恥ずかしい」との書き込みもある。

こうしたことから、ブラックリストが悪質行為に対する一定の歯止めになっているのは事実のようだ。

とはいえ、「リストに載ったって何も影響はない」との意識を持つ人が多ければ、やはり効果は見込めそうにない。多くのメディアが指摘しているように、制度改善が必要かもしれない。

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