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VRにウルトラマンシリーズ2作品 新技術普及のキラーコンテンツになるか 頭上で怪獣が戦う?

2017/09/23

専用ディスプレーを通して現実空間でウルトラセブンや怪獣が大暴れしているかのような映像を楽しめる“VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)特撮”作品が10月に登場する。VRは、ゲームを含む映像コンテンツの今後の命運を握るともいわれている。ウルトラシリーズの円谷プロダクション(東京都渋谷区)も初めての試みで、今回は「実験」との位置づけだが、当然将来的な可能性を見込んでの挑戦だ。

「自前でもVR特撮を作りたかった」田口清隆監督

201709221707_1-300x0.jpgVR作品の「ウルトラマンゼロVR」「ウルトラファイトVR」の発表会で写真に収まる(左から)ウルトラセブン、辻本貴則監督、田口清隆監督、ウルトラマンゼロ(兼松康撮影)

VR技術は、人間の感覚器に働きかける。その結果、実際には存在しない映像を、現実であるかのように知覚させる。専用のディスプレーを装着すれば、360度ぐるりと映像に取り囲まれる。

2016年がVR元年と呼ばれた。ことしはゲームメーカーから専用ディスプレーが発売されたり、東京都内にVR視聴に対応した施設が開業したりするなど普及に向けた動きが見られる。

>円谷プロが作った映像は「ウルトラマンゼロVR」と「ウルトラファイトVR」の2作品。10月1日から、VR視聴に対応した施設で上映される。

テレビシリーズ「ウルトラマンX」や「ウルトラマンオーブ」の田口清隆さん(37)が監督した。

「VRに興味があった。自主映画でもいいから、VRの特撮モノを作ろうと考えていたところだった」

渡りに船だったと明かす。

VR撮影の課題

201709221707_2-300x0.jpg「ウルトラマンゼロVR」のワンシーン。エレキングの尻尾をつかむウルトラマンゼロ。建物などの瓦礫が臨場感さながらに落ちてくる。(c)円谷プロ(c)ウルトラマンゼロVR製作委員会

「CG合成はほとんど使用していない、伝統的な特撮の手法にこだわった。試行錯誤を繰り返した結果、VR映像としても特撮作品としても楽しめる作品ができた」

円谷プロは、そう自負する。

>田口監督も「皆さんを問答無用にあの“憧れの空間”へたたきこむ」と、出来映えには自信満々だ。

2作品を鑑賞した辻本貴則監督は「臨場感が半端ない。没入できる。VR技術により、怪獣らの巨大感が出ている」と激賞する。辻本監督は、人気アニメ「機動警察パトレイバー」の実写化映画などを手掛け、「ウルトラマンX」にも監督として参加している。

一方、田口監督によると、「VRは技術的にはまだ過渡期にある」と痛感させられた現場でもあった。たとえば、撮影機材。発熱しやすいと指摘する。「今回の作品をテストケースに、(VR撮影用の)カメラが改造されるかもしれない」と期待する。

映像についてもいくつかの課題を発見した。例えば、今回の2作品では“光線技”を使わなかった。

「360度がグルッとつながった映像で、直線である光線技を合成するのは難しかった」からだ。

そもそも四方すべてが映るのは、撮影条件を難しいものにした。

「普通の特撮は映るところしか作らないが、全部撮らなきゃいけない。そうすると、スタジオ撮影は天井が映るから無理」

ふだんカメラの後ろ側に隠れているスタッフは居場所を失った。田口監督自身もテーブルの下に身を隠しながらスタッフに合図を出す苦労を味わった。

VR映像につきものとされる「映像酔い」の問題にも直面。今回で言えば、会議室からエレベーターまで狭い廊下を走って人々が逃げるシーンなどだ。その手の映像は極力短くする編集で回避するしかなかった。

<特撮こそVR普及のキラーコンテンツ

この2作品が鑑賞できるのは、全国の「VRシアター」。VRシアターは、複合カフェ(インターネットカフェや漫画喫茶)、カラオケ施設、ゲームセンターなどで希望者に専用のディスプレーを貸し出すサービスの名称。

VRソフトやスマートフォン向けアプリケーションを制作するエジェ(東京都港区)という企業が運営。DiCE池袋店(東京都豊島区)、サイバック西心斎橋店(大阪市中央区)など全国に180カ所(2月現在)で実施している。鑑賞料金は両作品ともそれぞれ600円。

今回円谷プロが2作品を作ったのは、今後のVR市場を「非常に可能性のある分野」ととらえているからだ。ただし、あくまで今回はトライアル。「ここで得た知見をもとに、今後につなげていければ」という位置づけだ。

しかし、「ウルトラマンとVRは親和性が高い」と辻本監督は断言するように、“VR特撮”はVR普及のキラーコンテンツになる可能性を秘めている。(文化部 兼松康)

ウルトラマンゼロVR 東京都港区に怪獣エレキングとウルトラマンゼロが出現。会議室から逃げ出す人々が非常口の扉を開けると、そこで壮絶なバトルが繰り広げられていた…。視聴者は、会議室で驚く人々を見てから後ろを振り返ると、窓ごしに巨大なエレキングとウルトラマンゼロの顔を見ることになるなど現実感たっぷりだ。

ウルトラファイトVR 1970年に人気を博し、第2次ウルトラブームの先鞭(せんべん)をつけた「ウルトラファイト」の雰囲気をそのままに、ウルトラセブン、ウルトラマンゼロの親子と、ガッツ星人、イカルス星人のタッグ戦が繰り広げられる。セブンとガッツ星人の激闘の反対側でゼロとイカルス星人が大乱闘している。まさに360度の視界全てで、ウルトラの世界が繰り広げられている。なお、本放送当時にプロレス実況風のナレーションで人気を博した山田二郎アナウンサーが、今回もナレーションをつけている。山田アナは、VRの元となる映像を見ながら、当時さながら台本なしのナレーションをつけた。

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